この胸の中だけ

(ゆうべとつぜんなつかしいきもちになって)

夕べ突然懐かしい気持ちになって

(しょうがっこうのこうていにしのびこんだ)

小学校の校庭に忍び込んだ

(あのころあんなにおおきくみえてたてつぼうが)

あの頃あんなに大きく見えてた鉄棒が

(いまみてもやっぱり)

今見てもやっぱり

(おおきかった)

大きかった

(いまのこってみんなはついくがいいのか？)

今の子ってみんな発育がいいのか？

(それともじぶんがのびてないのか？)

それとも自分が伸びてないのか？

(もちろんりょうほうだわかってるんだぜ)

もちろん両方だ分かってるんだぜ

(よぞらをみあげてすこしわらった)

夜空を見上げて少し笑った

(こうていのすみにかなあみのおりをはっけん)

校庭の隅に金網の檻を発見

(そうそうむかしはうさぎをかってたな)

そうそう昔はウサギを飼ってたな

(のぞいてみるとうさぎはいっぴきもいない)

覗いてみるとウサギは一匹もいない

(にわとりがいちわかたくなってた)

ニワトリが一羽硬くなってた

(さびついたべんちすてられたうんどうぐつ)

錆びついたベンチ捨てられた運動靴

(すなのにおいとすりへったほーむべーす)

砂の匂いとすり減ったホームベース

(ぼんやりとみてたらうしろにひとのけはい)

ぼんやりと見てたら後ろに人の気配

(しょうねんがひとりたっていた)

少年が一人立っていた

(おい、おっさんそこでいったいなにやっているんだい。)

おい、おっさんそこで一体何やっているんだい。

(うん、ちょっとなつかしくなっちゃってね。)

うん、ちょっと懐かしくなっちゃってね。

(ところできみはいったいだれだい。)

ところで君は一体誰だい。

(ぼく？)

僕？

(ぼくはきみだよ。)

僕は君だよ。

(３０ねんまえの。)

30年前の。

(おいおい、おとなをからかうもんじゃないだろ。)

おいおい、大人をからかうもんじゃないだろ。

(まあ、しんじるしんじないはきみのかってなんだけどさ。)

まあ、信じる信じないは君の勝手なんだけどさ。

(としとるとすなおじゃなくなるね。おとなってたのしいかい？)

年とると素直じゃなくなるね。大人って楽しいかい？

(うん、まあ、むかしとかわらないよ。)

うん、まあ、昔と変わらないよ。

(ただむかしとちがうのは)

ただ昔と違うのは

(むかしはうれしいときになみだなんてながれなかったかもなあ。)

昔はうれしいときに涙なんて流れなかったかもなあ。

(ぼくのゆめはかなえられてる？)

ぼくの夢はかなえられてる？

(こめでぃあんになりたいってゆめだっけ。まあ、にたようなことしてるよ。)

コメディアンになりたいって夢だっけ。まあ、似たようなことしてるよ。

(そっか。じゃあしあわせなんだね。)

そっか。じゃあ幸せなんだね。

(どうだろ？しあわせなのかな？そもそもしあわせっていったいなんだろうね？)

どうだろ？幸せなのかな？そもそも幸せって一体なんだろうね？

(むちゅうになれるものもってるってことだろ？)

夢中になれるもの持ってるってことだろ？

(そっか、じゃあぼくはしあわせだ。)

そっか、じゃあ僕は幸せだ。

(しっかりしてくれよ。おっさん！さあ、そろそろぼくはいかなくちゃ。)

しっかりしてくれよ。おっさん！さあ、そろそろ僕は行かなくちゃ。

(もういくのかい？またあえるかな？)

もう行くのかい？また会えるかな？

(きみがあいたいっておもえばいつだってあえるさ。)

君が会いたいって思えばいつだって会えるさ。

(ぼくはきみのこころのなかにすんでるんだから。)

ぼくは君の心の中に住んでるんだから。

(しょうねんのすがたはいつのまにやらきえて)

少年の姿はいつの間にやら消えて

(あたりにまっくらなやみだけのこった)

あたりに真っ暗な闇だけ残った

(おもいではいつもこのむねのなかだけ)

思い出はいつもこの胸の中だけ

(かえるのはいつもこのむねのなかだけ)

帰るのはいつもこの胸の中だけ

(ふるさとはいつもこのむねのなかだけ)

ふるさとはいつもこの胸の中だけ

(じょうねつはいつもこのむねのなかだけ)

情熱はいつもこの胸の中だけ

(ともだちはいつもこのむねのなかだけ)

友達はいつもこの胸の中だけ

(なみだはいつもこのむねのなかだけ)

涙はいつもこの胸の中だけ

(よろこびはいつもこのむねのなかだけ)

喜びはいつもこの胸の中だけ

(さびしさはいつもこのむねのなかだけ)

寂しさはいつもこの胸の中だけ

(せかいはいつもこのむねのなかだけ)

世界はいつもこの胸の中だけ

(あらそいはいつもこのむねのなかだけ)

争いはいつもこの胸の中だけ

(ゆめはいつもこのむねのなかだけ)

夢はいつもこの胸の中だけ

(あいはいつもこのむねのなかだけ)

愛はいつもこの胸の中だけ

(うたはいつもこのむねのなかだけ)

歌はいつもこの胸の中だけ

(うたうのはいつもこのむねのなかだけ)

歌うのはいつもこの胸の中だけ