大正ロマンチック

(あみあげぶーつのくつひもむすんで)

編み上げブーツの靴ひも結んで

(ふろしきのなかにみるくちょこれーと)

風呂敷の中にミルクチョコレート

(あなたにかりてた「ふらんすものがたり」)

あなたに借りてた「ふらんす物語」

(だいじにかかえていまからあいにゆくわ)

大事に抱えて 今から会いにゆくわ

(にほんばしはきょうも)

日本橋は今日も

(おしゃれさんばかりで)

お洒落さんばかりで

(はいからなふくをわたしもきたいな)

ハイカラな服を私も着たいな

(ぎんざのかふぇーはいんてりばかりで)

銀座のカフェーはインテリばかりで

(こどものわたしはすこしはやすぎるかな)

子供の私は少し早すぎるかな

(らじおというきかいちいさなはこのなか)

ラジオという機械 小さな箱の中

(とおくのひとのこえがきこえてる)

遠くの人の声が聞こえてる

(ならばあなたのこえ)

ならば, あなたの声

(わたしのみみもとまでとどけて)

私の耳元まで届けて

(ばすにゆられながら)

バスに揺られながら

(あなたにあいにゆくわ)

あなたに会いにゆくわ

(たいしょうろまんのまちをかけぬけて)

大正ロマンの街を駆け抜けて

(めにうつるすべてがかがやいてみえるひび)

目に映るすべてが輝いて見える日々

(いつまでもつづくといいな)

いつまでも続くといいな

(あなたとふたりで)

あなたと二人で

(しんぶんはいつもせいじのわだいで)

新聞はいつも政治の話題で

(おおきなみだしの「ふつうせんきょほう」)

大きな見出しの「普通選挙法」

(じょせいのわたしもいつかはせんきょに)

女性の私もいつかは選挙に

(さんかできるかな)

参加できるかな？

(そんなひがくるのかな)

そんな日がくるのかな？

(２ねんまえにおきたおおきなあのじしん)

２年前に起きた大きなあの地震

(すこしずつうまれかわるこのまちで)

少しずつ生まれ変わるこの街で

(ふたりはであいそして)

二人は出会い そして,

(いつしかこいにおちてしまったの)

いつしか恋に落ちてしまったの

(ばすにゆられながら)

バスに揺られながら

(あなたにあいにゆくわ)

あなたに会いにゆくわ

(たいしょうろまんのまちをかけぬけて)

大正ロマンの街を駆け抜けて

(めがまわるくらいに)

目が回るくらいに

(よのなかがかわるひび)

世の中が変わる日々

(いつまでもみつめてたいな)

いつまでも見つめてたいな

(あなたのとなりで)

あなたの隣で

(らいすかれーのみせをとおりすぎるころにあなたのいえのやねがみえてきたら)

ライスカレーの店を通り過ぎるころにあなたの家の屋根が見えてきたら

(たかなるむねをおさえかみかざりつけなおしばすをおりる)

高鳴る胸をおさえ 髪飾り付け直し　バスを降りる

(はかまをゆらしながらあなたにあいにゆくわ)

袴を揺らしながらあなたに会いにゆくわ

(ふらんすものがたりだいじにかかえてきゃらめるをひとつだけ)

「ふらんす物語」大事に抱えてキャラメルをひとつだけ

(くちにふくませながら)

口に含ませながら

(あしばやにあるきつづけるあなたのいえまで)

足早に歩き続ける あなたの家まで

(あくたがわせんせいもしがなおやせんせいもどんなめいさくもかなわないほどの)

芥川先生も志賀直哉先生もどんな名作も敵わないほどの

(あなたとのものがたりあわいこいものがたりいつまでもつづくといいな)

あなたとの物語 淡い恋物語いつまでも続くといいな

(あなたとふたりで)

あなたと二人で