芥川龍之介 「クリスマス」 その2

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投稿者カノン プレイ回数309 順位3869位
難易度(4.0) 2851打 長文 かな タグ小説 芥川龍之介 クリスマス
芥川の自伝「保吉もの」シリーズの中の『少年』という小篇集より抜粋
芥川龍之介 「クリスマス」その1
https://typing.twi1.me/game/95228
順位名前スコア称号打鍵/秒正誤率時間(秒)打鍵数ミス問題日付
1 りんご 7519 7.7 97.1% 364.5 2823 82 60 2019/12/11
2 はるけん 6564 S+ 6.7 96.9% 414.5 2810 89 60 2019/12/11
3 Haku 6417 S 6.6 96.5% 428.5 2851 101 60 2019/12/14
4 subaru 6391 S 6.8 94.2% 416.5 2834 172 60 2019/12/11
5 deko 5775 A+ 5.9 96.8% 474.6 2833 92 60 2019/12/10

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問題文

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(ええ、それはしっているわ。)

「ええ、それは知っているわ。」

(ではきょうはなんのひですか?ごぞんじならばいってごらんなさい。)

「ではきょうは何の日ですか? 御存知ならば言って御覧なさい。」

(しょうじょはやっとせんきょうしのかおへ)

少女はやっと宣教師の顔へ

(みずみずしいくろめがちのめをそそいだ。)

みずみずしい黒目がちの眼を注いだ。

(きょうはあたしのおたんじょうび。)

「きょうはあたしのお誕生日。」

(やすきちはおもわずしょうじょをみつめた。)

保吉は思わず少女を見つめた。

(しょうじょはもうおおまじめにあみぼうのさきへめをやっていた。)

少女はもう大真面目に編み棒の先へ目をやっていた。

(しかしそのかおはどういうわけか、)

しかしその顔はどういうわけか、

(まえにおもったほどなまいきではない。)

前に思ったほど生意気ではない。

(いや、むしろかわいいなかにもちえのひかりのへんしょうした、)

いや、むしろ可愛い中にも智慧の光りの遍照した、

(おさないまりあにもおとらぬかおである。)

幼いマリアにも劣らぬ顔である。

(やすきちはいつかかれじしんのびしょうしているのをはっけんした。)

保吉はいつか彼自身の微笑しているのを発見した。

(きょうはあなたのおたんじょうび!)

「きょうはあなたのお誕生日!」

(せんきょうしはとつぜんわらいだした。このふらんすじんのわらうようすは)

宣教師は突然笑い出した。このフランス人の笑う様子は

(ちょうどひとのいいおとぎばなしのなかのおおおとこかなにかのわらうようである。)

ちょうど人のいいお伽話の中の大男か何かの笑うようである。

(しょうじょはこんどはけげんそうにせんきょうしのかおへめをあげた。)

少女は今度はけげんそうに宣教師の顔へ目を挙げた。

(これはしょうじょばかりではない。はなのさきにいるやすきちをはじめ、)

これは少女ばかりではない。鼻の先にいる保吉を始め、

(りょうがわのだんじょのじょうきゃくはたいていせんきょうしへめをあつめた。)

両側の男女の乗客はたいてい宣教師へ目をあつめた。

(ただかれらのめにあるものはぎわくでもなければこうきしんでもない。)

ただ彼等の目にあるものは疑惑でもなければ好奇心でもない。

(いずれもせんきょうしのこうしょうのいみをはっきりりかいしたほほえみである。)

いずれも宣教師の哄笑の意味をはっきり理解した頬笑みである。

など

(おじょうさん。あなたはよいひにおうまれなさいましたね。)

「お嬢さん。あなたは良い日にお生まれなさいましたね。

(きょうはこのうえもないおたんじょうびです。せかいじゅうのおいわいするおたんじょうびです。)

きょうはこの上もないお誕生日です。世界中のお祝いするお誕生日です。

(あなたはいまに、、あなたのおとなになったときにはですね、あなたはきっと、、、)

あなたは今に、、あなたの大人になった時にはですね、あなたはきっと、、、」

(せんきょうしはことばにつかえたままばすのなかをみまわした。)

宣教師は言葉につかえたままバスの中を見廻した。

(どうじにやすきちとめをあわせた。)

同時に保吉と眼を合わせた。

(せんきょうしのめはぱんすねえのおくにわらいなみだをかがやかせている。)

宣教師の眼はパンス・ネエの奥に笑い涙を輝かせている。

(やすきちはそのこうふくにみちたねずみいろのめのなかに)

保吉はその幸福に満ちた鼠色の眼の中に

(あらゆるくりすますのうつくしさをかんじた。)

あらゆるクリスマスの美しさを感じた。

(しょうじょは、、、しょうじょもやっとせんきょうしのわらいだしたりゆうにきのついたのであろう、)

少女は、、、少女もやっと宣教師の笑い出した理由に気のついたのであろう、

(いまはたしょうすねたようにわざとあしなどをぶらつかせている。)

今は多少拗ねたようにわざと足などをぶらつかせている。

(あなたはきっとかしこいおくさんに、、、やさしいおかあさんにおなりなさるでしょう。)

「あなたはきっと賢い奥さんに、、、優しいお母さんにおなりなさるでしょう。

(ではおじょうさん、さようなら。わたしのおりるところへきましたから。では、、、)

ではお嬢さん、さようなら。わたしの降りる所へ来ましたから。では、、、」

(せんきょうしはまたまえのようにいちどうのかおをみわたした。)

宣教師はまた前のように一同の顔を見渡した。

(ばすはちょうどひとどおりのはげしいおわりちょうのつじにとまっている。)

バスはちょうど人通りの烈しい尾張町の辻に止まっている。

(ではみなさん、さようなら。)

「では皆さん、さようなら。」

(すうじかんののち、やすきちはやはりおわりちょうのあるばらっくのかふぇのすみに)

数時間の後、保吉はやはり尾張町の或るバラックのカフェの隅に

(このしょうじけんをおもいだした。)

この小事件を思い出した。

(あのふとったせんきょうしはもうでんとうもともりだしたいまごろ、)

あの肥った宣教師はもう電燈も灯り出した今頃、

(なにをしていることであろう?)

何をしていることであろう?

(くりすととたんじょうびをともにしたしょうじょは)

クリストと誕生日を共にした少女は

(ゆうはんのぜんについたちちやははにけさのできごとをはなしているかもしれない。)

夕飯の膳についた父や母に今朝の出来事を話しているかも知れない。

(やすきちもまたにじゅうねんぜんにはしゃばくをしらぬしょうじょのように、)

保吉もまた二十年前(ぜん)には娑婆苦を知らぬ少女のように、

(あるいはつみのないもんどうのまえにしゃばくをぼうきゃくしたせんきょうしのように)

あるいは罪のない問答の前に娑婆苦を忘却した宣教師のように

(ちいさいこうふくをしょゆうしていた。)

小さい幸福を所有していた。

(だいとくいんのえんにちにぶどうもちをかったのもそのころである。)

大徳院の縁日に葡萄餅(ぶどうもち)を買ったのもその頃である。

(にしゅうろうのおおひろまにかつどうしゃしんをみたのもそのころである。)

二州楼(にしゅうろう)の大広間に活動写真を見たのもその頃である。

(ほんじょふかがわはまだはいのやまですな。)

「本所深川(ほんじょふかがわ)はまだ灰の山ですな。」

(へええ、そうですかねえ。ときによしわらはどうしたんでしょう?)

「へええ、そうですかねえ。時に吉原はどうしたんでしょう?」

(よしわらはどうしましたかねえ、、、あさくさにはこのごろ)

「吉原はどうしましたかねえ、、、浅草にはこの頃

(おひめさまのいんばいがでるということですな。)

お姫様の婬売(いんばい)が出るということですな。」

(となりのてえぶるにはしょうにんがふたり、こういうかいわをつづけている。)

隣りのテエブルには商人が二人、こういう会話をつづけている。

(が、そんなことはどうでもよい。)

が、そんなことはどうでもよい。

(かふぇのちゅうおうのくりすますのきは、)

カフェの中央のクリスマスの木は、

(わたをかけたしんようのえだに)

綿をかけた針葉の枝に

(おもちゃのさんたくろおすだのぎんのほしだのをぶらさげている。)

玩具(おもちゃ)のサンタ・クロオスだの銀の星だのをぶら下げている。

(がすだんろのほのおもあかあかとそのきのみきをてらしているらしい。)

ガス煖炉の炎も赤々とその木の幹を照らしているらしい。

(きょうはおめでたいくりすますである。)

今日はおめでたいクリスマスである。

(せかいじゅうのおいわいするおたんじょうびである。)

「世界中のお祝するお誕生日」である。

(やすきちはしょくごのこうちゃをまえに、ぼんやりまきたばこをふかしながら、)

保吉は食後の紅茶を前に、ぼんやり巻煙草をふかしながら、

(おおかわのむこうにひととなったにじゅうねんぜんのこうふくをゆめみつづけた、、、)

大川の向うに人となった二十年前の幸福を夢みつづけた、、、(終)

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