流刑地

(ことばにもならない)

言葉にもならない

(あなたへのざんきも)

あなたへの慚愧も

(とどまっていない)

留まっていない

(おもいがけもしない)

思い掛けもしない

(しらせはまだたえがたい)

報せはまだ耐え難い

(はせるかんじょうだってやるせない)

馳せる感情だって遣る瀬ない

(ぐずなあしはこおってよるべない)

愚図な足は凍って寄る辺ない

(とうにあんていなんてあいいれない)

とうに安定なんて相容れない

(まだつみぶかき)

まだ罪深き

(きょううれいをはらい)

今日 憂いを払い

(もういのりもしない)

もう祈りもしない

(あいはじゅなんのみちへ)

愛は受難の道へ

(えっとうのはなびのおと)

越冬の花火の音

(ほうむったふとうのあらなみによくにていた)

葬った埠頭の荒波によく似ていた

(げっこうのじゅわきごしに)

月光の受話器越しに

(つながらぬおもいをはく)

繋がらぬ思いを吐く

(たとえあなたのまえでしたたるみらいが)

たとえあなたの前で滴る未来が

(ぜつぼうのひにまみれていたって)

絶望の日に塗れていたって

(あなたのはいであなたのきおくで)

あなたの灰で あなたの記憶で

(いまもわたしはいかされている)

今も私は生かされている

(るけいちにて)

流刑地にて

(なみだはながれない)

涙は流れない

(ありふれたれいうは)

ありふれた冷雨は

(しずまっていない)

鎮まっていない

(いまだにはなれない)

未だに離れない

(ゆめにもみるとうひこう)

夢にも見る逃避行

(とおきあいずをまってたちどまり)

遠き合図を待って立ち止まり

(まちはかねをならすがくやみはない)

町は鐘を鳴らすが悔やみはない

(あなたのこといがいはなにもない)

あなたのこと以外は何もない

(もろくあえなし)

脆く敢え無し

(といにかちはない)

問いに価値はない

(もうふさぎはしない)

もう塞ぎはしない

(あいとるてんのみちへ)

愛と流転の道へ

(しんしょうとよつゆのおと)

心象と夜露の音

(あらがったひびはいくばくのりをえたのか)

抗った日々は幾許の利を得たのか

(ゆうぜんともゆほのおに)

悠然と燃ゆ炎に

(あなたへのおもいをはく)

あなたへの思いを吐く

(たとえあなたのまえでしたたるみらいが)

たとえあなたの前で滴る未来が

(ぜつぼうのひにまみれていたって)

絶望の日に塗れていたって

(あなたのはいであなたのきおくで)

あなたの灰で あなたの記憶で

(いまもわたしはいかされている)

今も私は生かされている

(はんおちのてまえに)

半落ちの手前に

(またたくひらいしん)

瞬く避雷針

(わたしのみらいにあなたはいない)

私の未来にあなたはいない

(ひっせきはきれいで)

筆跡は綺麗で

(ちぎれそうになる)

千切れそうになる

(それでもたぐりよせるいとにすがる)

それでも手繰り寄せる糸に縋る

(たとえあなたのまえでしたたるみらいが)

たとえあなたの前で滴る未来が

(ぜつぼうのひにまみれていたって)

絶望の日に塗れていたって

(あなたのはいであなたのきおくで)

あなたの灰で あなたの記憶で

(いまもわたしはいかされている)

今も私は生かされている

(るけいちにて)

流刑地にて

(いまもわたしはいかされている)

今も私は生かされている

(るけいちにて)

流刑地にて