コフレ

(ほけがそこかしこにうかんだ)

ほけがそこかしこに浮かんだ。

(にねんぶりのこうけいだそんなにか)

二年ぶりの光景だ。そんなにか。

(もうそんなにたつんだなぁ)

もうそんなに経つんだなぁ。

(あったかーいってもじだけで)

「あったか～い」って文字だけで

(なんかかいたくなるはなし)

なんか買いたくなる話。

(なんかわかるよ)

なんか、わかるよ。

(ぼくらなんかばっかりだ)

僕ら、「なんか」ばっかりだ。

(こふれがかざったてんとう)

コフレが飾った店頭。

(よけいにはいいろにみえるせんろ)

余計に灰色に見える線路。

(おぼえようとしなくてもおぼわるよ)

覚えようとしなくても、おぼわるよ。

(ふゆがさむくてよかったなんて)

冬が寒くてよかった、なんて

(おもったこともないけどきみがうたうんだ)

思ったこともないけど君が歌うんだ。

(あやふやなかしにさそいわらいがとまらないや)

あやふやな歌詞に誘い笑いが止まらないや。

(だからさむくていいんだまちがいないや)

だから、寒くていいんだ。まちがいないや。

(あぁそのひはしゅくじつだっけ)

あぁ、その日は祝日だっけ。

(おっけーあけておくよ)

おっけー。空けておくよ。

(むとうとびとうのあいだのあじがほしいなんて)

無糖と微糖の間の味がほしいなんて、

(よくもまあつぎからつぎへそんな)

よくもまあ、次から次へそんな。

(なんかうらやましいよ)

なんか、羨ましいよ。

(あったかーいってもじだけで)

「あったか～い」って文字だけで

(なんかかいたくなるはなしのつづきのつづきを)

なんか買いたくなる話の続きの続きを。

(ううんたのしいよ)

ううん、楽しいよ。

(でこるてのういたけっかん)

デコルテの浮いた血管。

(おきにいりだねみんといろまふらー)

お気に入りだね、ミント色マフラー。

(おぼえようとしなくてもおぼわるよ)

覚えようとしなくても、おぼわるよ。

(ふゆにうまれてよかったなんて)

「冬に生まれてよかった」なんて

(うまれてもいないくせにきみがわらうんだ)

生まれてもいないくせに君が笑うんだ。

(そのあとのまがおにたえられないんだずるいんだ)

そのあとの真顔に耐えられないんだ。ずるいんだ。

(もうさなんでもいいや)

もうさ、なんでもいいや。

(たんすいかぶつをぬいたり)

炭水化物を抜いたり、

(たんさんすいでやさいをにたり)

炭酸水で野菜を煮たり、

(つづいたためしがないこころみ)

続いた試しがない試み。

(ひきこもごものじんせい)

悲喜交々の人生。

(ぼくがもってるものはぜんぶあげるから)

僕がもってるものは全部あげるから。

(てのうちをみせあってしのうぜ)

手の内を見せあって死のうぜ。

(ふれるほどじゃないほうげん)

触れるほどじゃない方言。

(ふきげんなときだけつくくとうてん)

不機嫌な時だけつく句読点。

(つけすぎのりっぷますく)

つけすぎのリップマスク。

(あさにはとれているないときゃっぷ)

朝にはとれているナイトキャップ。

(こふれがはいったしょっぱー)

コフレが入ったショッパー。

(さむかぜになびくついるのまふらー)

寒風に靡くツイルのマフラー。

(おぼえようとしなくてもおぼわるよ)

覚えようとしなくても、おぼわるよ。

(そういうひとになりたいんだ)

そういう人になりたいんだ。

(ふゆがさむくてよかったなんて)

冬が寒くてよかった、なんて

(おもったことはないけどかかとがうくんだ)

思ったことはないけど踵が浮くんだ。

(このうたもそうなっていけばいいんだ)

この歌もそうなっていけばいいんだ。

(きみにとってさ)

君にとってさ。

(さむくていいやわるくないよ)

寒くていいや。悪くないよ。

(なんかしあわせだって)

なんか幸せだって。

(ぼくらなんかばっかりだ)

僕ら、「なんか」ばっかりだ。

(うんそのひはしゅくじつだよね)

うん、その日は祝日だよね。

(うんあけてあるよ)

うん、空けてあるよ。