モダニズム

(ちまたさわがすかいきたんはいからさんでもほねぬきだって)

巷騒がす怪奇譚ハイカラさんでも骨抜きだって

(ひとひとりよりどりみどりににんばやしでおどろう)

人ひとりより取り見取り二人囃子で踊ろう

(ぶんめいかいかのあるびのこよいよいよいよいにまかせ)

文明開化のアルビノ今宵よいよい酔いに任せ

(さんざんさかせたさざんかししてるいるい)

散々咲かせた山茶花死屍て累々

(まやかしあまやかしてからんからんとげたがなる)

まやかし甘やかしてカランカランと下駄が鳴る

(いふうどうどうとここがどこぞのほそみちだってもどれはしない)

威風堂々とここがどこぞの細道だって戻れはしない

(ちんとんしゃんほらひがおちる)

ちんとんしゃんほら日が落ちる

(いのちみじかしおとめのじゅんじょうがとびらをのっくのっく)

命短し乙女の純情が扉をノックノック

(ふかいりはようちゅういひのようじんごようじん)

深入りは要注意火の用心ご用心

(ゆめみがちなおじょうさんおいでおいでてのなるほうへ)

夢見がちなお嬢さんおいでおいで手の鳴る方へ

(はいからさんはいつだってきけんがおすきなの)

ハイカラさんはいつだって危険がお好きなの

(とくだねひろうしんぶんけんぶんかいぶんかいぶんうそまみれ)

特ダネ披露新聞見聞回文怪文嘘まみれ

(ぶんめいかいかごようごようなおもひろう)

文明開化御用誤用尚も披露

(あやかしあまざらしでひょうひょうわらってぬえがなく)

あやかし雨ざらしで飄々笑って鵺が鳴く

(いいだくだくでしょうみぎにならってはいどうぞって)

唯々諾々でしょう右に倣ってはいどうぞって

(くちのなかにはなにものこってやしないさ)

口の中には何も残ってやしないさ

(ほらねでんきぶらんでほろよいの)

ほらね電氣ブランでほろ酔いの

(おじょうさんおてつきちょんちょん)

お嬢さんお手付きチョンチョン

(こうきしんはばけものがだいこうぶつめしあがれ)

好奇心は化け物が大好物召し上がれ

(ひとしれずさとられずさいしょさいごさんしょうがぴりり)

人知れず悟られず最初最後山椒がピリリ

(はいからさんはだれだってらんらんとくだをまく)

ハイカラさんは誰だってランランと管を巻く

(ようこそここはここはようかいさんちょうめ)

ようこそここはここは妖怪三丁目

(でぐちはどこにもありませんわ)

出口は何処にもありませんわ

(ごうがいとくだねのまよいびともうろくろくはなしですら)

號外特ダネの迷い人もう碌々話ですら

(できぬななしのほそみちでかえしはしない)

出来ぬ名無しの細道で帰しはしない

(わんつーさんしあんよがあらまじょうずねおじょうさま)

ワンツーサンシあんよがあらま上手ねお嬢様

(かれきのにぎわいちったおちばごうとかぜがふきとばす)

枯れ木の賑わい散った落ち葉ゴウと風が吹き飛ばす

(とんでとんできえていくちらせちらせおとめのいのち)

飛んで飛んで消えていく散らせ散らせ乙女の命

(さいごにはほらいちめんのさかせさかせはないちもんめ)

最後にはほら一面の割かせ裂かせ華一匁

(はいからさんはわたし)

ハイカラさんは私

(なぞめききょうきをはらんだかいきたん)

謎めき狂気を孕んだ怪奇譚