蓮華花火

(やまにしずんだそらあかねいろ)

山に沈んだ空　茜色

(いっとなせみのこえもとどかないくらいとおくて)

一途な蝉の声も　届かない位　遠くて

(そでをとおしたおろしたてのゆかた)

袖を通した　おろしたての浴衣

(まちあわせのばしょでかえるがなく)

待ち合わせの場所で　蛙が鳴く

(からからげたがおとをたてる)

カラカラ　下駄が音を立てる

(りんとすずがなるいちどきりのなつは)

リンと鈴が鳴る　一度きりの夏は

(しずかにきえていくかげろうで)

静かに消えていく陽炎で

(しゅいゆうぐれどきおじぎをするゆうがおのはな)

朱い夕暮れ時　お辞儀をする　夕顔の花

(みちのみずたまりにとけてきえたすいせいとりょう)

道の水たまりに溶けて消えた　水性塗料

(とびこえたさきにほこらしげなあじさいには)

飛び越えた先に　誇らしげな紫陽花には

(くりかえしたひとのきぼうがいのちをつなぐ)

繰り返した人の希望が　命を繋ぐ

(ひとのなみにもまれてをつないだあとから)

人の波にもまれ　手を繋いだ後から

(まつりばやしどんどんおおきくなってく)

祭囃子　ドンドン大きくなってく

(とくとうせきはじんじゃのうらあのころからずっと)

特等席は神社の裏　あの頃からずっと

(かわっていないから)

変わっていないから

(かなかなせみがなくころにはかぜがほおをなぐ)

カナカナ　蝉が鳴く頃には　風が頬を凪ぐ

(にどとあえないなつをもうけっしてわすれないでいるから)

二度と会えない夏を　もう決して忘れないでいるから

(そらにおちたはなはいろとりどりさいてちりゆく)

空に落ちた花は色とりどり　咲いて散りゆく

(みちのおじぞうさまみまもってるこどもたちには)

道のお地蔵様見守ってる　子供たちには

(ゆかたにえがかれたつつましげないちりんざし)

浴衣に描かれた　つつましげな一輪挿し

(つめこまれたひとのきぼうはそらのまんげきょう)

詰め込まれた人の希望は　空の万華鏡

(あおいきんぎょばちにおどろいてるにひきのきんぎょ)

青い金魚鉢に　驚いてる二匹の金魚

(すけたみずあめごしほほえんでるあかりんご)

透けた水飴ごし　微笑んでる赤林檎

(まだつぼみだけどいつかいつかはなをさきかす)

まだ蕾だけど　いつかいつか花を咲かす

(ねがうならばあのころのひを)

願うならば　あの頃の日を

(ひとのみちははかなくてなつのひのながさにあこがれる)

人の道は　儚くて　夏の日の長さに憧れる

(ほほをそめるとうろうがなつかしいきもちにさせるの)

頬を染める灯篭が　懐かしい気持ちにさせるの

(そんなわたしがいてみながいてだれもがわらう)

そんな　私がいて　皆がいて　誰もが笑う

(だれもかれもそらみあげ)

【誰も彼も　空見上げ】

(みなでつけたよねちょっとしっけたせんこうはなび)

皆でつけたよね　ちょっと湿気た線香花火

(ほらみんなみんなてをつないでわになろう)

ほら　みんなみんな　手を繋いで輪になろう

(そらにさかすはすのはな)

【空に咲かす　蓮の花】

(このいっしゅんすらえいえんになるはなびよあがれ)

この一瞬すら永遠になる　　花火よ上がれ