心霊写真 -56-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(「いきていないものは、しなない。このてーぶるがしなないように」) 「生きていないものは、死なない。このテーブルが死なないように」 (こつこつとなかゆびのだいいちかんせつでたたく。) コツコツと中指の第一関節で叩く。 (「わたしのけつろんとしては、ねんしゃだ。こいつは、ここにいるなかまたちの) 「わたしの結論としては、念者だ。こいつは、ここにいる仲間たちの (しねんによってうつしこまれた、いのちなきそんざいなんだ」) 思念によって写し込まれた、命なき存在なんだ」 (ね・ん・しゃ。) ね・ん・しゃ。 (まつうらはばかにするでもなく、なんのせんにゅうかんもないように) 松浦は馬鹿にするでもなく、なんの先入観もないように (そのことばをぎんみしているようにみえた。) その言葉を吟味しているように見えた。 (「だが、ただのせいこうなにんぎょうがここにおかれていただけなのかもしれない。) 「だが、ただの精巧な人形がここに置かれていただけなのかも知れない。 (あるいは、ただのしんれいしゃしんなのかもしれない」) あるいは、ただの心霊写真なのかも知れない」 (ししょうはただの、をきょうちょうしていった。) 師匠はただの、を強調して言った。 (「でもそれもたいしたもんだいじゃない。なぜならこれはぎぞうしゃしんだからだ。) 「でもそれも大した問題じゃない。なぜならこれは偽造写真だからだ。 (しんじつがどうあれ、さいしょからそうきめられている。) 真実がどうあれ、最初からそう決められている。 (すなみいちぞくにだめーじをあたえるちしてきなどくにはなりえない」) 角南一族にダメージを与える致死的な毒にはなりえない」 (そうだろう?ししょうはまつうらのめをましょうめんからみる。まつうらはなにもこたえない。) そうだろう?師匠は松浦の目を真正面から見る。松浦はなにも答えない。 (「あんたのしんいはべつにあった。ほんとうのいらいはこっちさ!」) 「あんたの真意は別にあった。本当の依頼はこっちさ!」 (ししょうはてーぶるをたたいた。いや、そのうえにならべられているほかのよんまいのしゃしんをだ。) 師匠はテーブルを叩いた。いや、その上に並べられている他の四枚の写真をだ。 (「うみべのかぞくづれ、おとこのこのりょうひざからさきがないのは、) 「海辺の家族連れ、男の子の両膝から先がないのは、 (ただのしゃったーそくどのもんだいだ」) ただのシャッター速度の問題だ」 (しゃしんはぴん、とひかれてーぶるのそとにおとされた。) 写真はピン、と弾かれテーブルの外に落とされた。 (「あいすをたべているかっぷる。このかたのてはよくあるいたずらだ」) 「アイスを食べているカップル。この肩の手はよくあるイタズラだ」
など
(ぴん、とひかれる。) ピン、と弾かれる。 (「のみかいのしゃしん。たばこのけむりがすとろぼにてらされ、) 「飲み会の写真。煙草の煙がストロボに照らされ、 (ぐうぜんかおのようにみえただけだ」) 偶然顔のように見えただけだ」 (「ははおやとおとこのこのしゃしん」) 「母親と男の子の写真」 (ししょうはそういってしゃしんをてにとった。) 師匠はそう言って写真を手に取った。 (「このおとこのこは、あんただ」) 「この男の子は、あんただ」 (おどろいてめをうたがった。なぜそうなるんだ?) 驚いて目を疑った。なぜそうなるんだ? (まつうらもおどろいているかとおもったが、) 松浦も驚いているかと思ったが、 (そのひょうじょうはぎゃくにひえきったようにきんちょうかんをたたえている。) その表情は逆に冷え切ったように緊張感を湛えている。 (「そしてははおやは、りっこうかいのせんだいのあいじんだったおんな。) 「そして母親は、立光会の先代の愛人だった女。 (あんたをうみ、ちゅうがっこうそつぎょうまでしせいじとしてそだてていたおんなだ」) あんたを産み、中学校卒業まで私生児として育てていた女だ」 (ししょうのほおにもきんちょうがあり、こわばっているようにみえた。) 師匠の頬にも緊張があり、こわばっているように見えた。 (てーぶるをまんなかにしてむかいあい、おたがいしばしおしだまった。) テーブルを真ん中にして向かい合い、お互いしばし押し黙った。 (くちをあいたのはまつうらだった。) 口を開いたのは松浦だった。 (「なぜわかった」) 「なぜ分かった」 (そのことばには、おどしというよりもじゅんすいなきょうみがまざっているようだった。) その言葉には、脅しというよりも純粋な興味が混ざっているようだった。 (「わたしは、れいをみることができる。それはひとのしねん、おんねん、しゅうねんを、) 「わたしは、霊を見ることが出来る。それは人の思念、怨念、執念を、 (ごかんではないなにかべつのちかくでとらえることができるからだ。) 五感ではないなにか別の知覚で捉えることが出来るからだ。 (しんれいしゃしんにはほとんどそれがない。) 心霊写真にはほとんどそれがない。 (たしかにさつえいされるまではそういうしねんがえいきょうしている。) 確かに撮影されるまではそういう思念が影響している。 (だけどねがからぷりんとされるのはやくひんによるかがくはんのうだ。) だけどネガからプリントされるのは薬品による化学反応だ。 (しゃしんとしててもとにきたじてんで、ざんねんながらわたしにかんちできるような) 写真として手元に来た時点で、残念ながらわたしに感知できるような (れいではなくなっている。ただのしかくてきなものにすぎない」) 霊ではなくなっている。ただの視覚的なものに過ぎない」 (しんれいしゃしんはにがてだ。てらにむかうくるまのなかで、ぼくにしてくれたようなせつめいを) 心霊写真は苦手だ。寺に向かう車の中で、僕にしてくれたような説明を (ししょうはくりかえした。) 師匠は繰り返した。 (まつうらはじっときいている。) 松浦はじっと聞いている。 (「しかしこのぼしのしゃしんはちがった。) 「しかしこの母子の写真は違った。 (みたしゅんかんからびんびんきたよ。ねんだ。ねん。きょうれつなしねん、おんねん、しゅうねん。) 見た瞬間からビンビン来たよ。念だ。念。強烈な思念、怨念、執念。 (わたしにもかんじることができるやつだ。それがこびりついてはなれない。) わたしにも感じることが出来るやつだ。それがこびり付いて離れない。 (あんたのだよ。そのしゃしんをほかのしゃしんにまぜてもってきた、あんたのねんだ」) あんたのだよ。その写真を他の写真に混ぜて持って来た、あんたの念だ」 (まつうらはなにもいわない。) 松浦はなにも言わない。 (「この、まどのところにうっすらとうつっているおとこ。) 「この、窓のところに薄っすらと写っている男。 (あんたは、このおとこのことをしりたかったんだ。) あんたは、この男のことを知りたかったんだ。 (いえのまえでしゃしんをとるぼし。かめらをかまえているのは、きんじょのひとか?) 家の前で写真を撮る母子。カメラを構えているのは、近所の人か? (そしてまどべでうすらわらいとうかべてそれをみているおとこ・・・・・) そして窓辺で薄ら笑いと浮かべてそれを見ている男・・・・・ (めもとなんかはよくみえないのに、そのくちもとはわかる。うすらわらい。) 目元なんかはよく見えないのに、その口元は分かる。薄ら笑い。 (それがそのおとこのほんしつであるかのように、だ。あんたはこのおとこがこのとき、) それがその男の本質であるかのように、だ。あんたはこの男がこの時、 (いえのなかにいたのか、それともれいからだとしてうつっているのか、) 家の中にいたのか、それとも霊体として写っているのか、 (それをしりたかったんだ。) それを知りたかったんだ。
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