太宰治
問題文
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(あさ、めをさますときのきもちは、おもしろい。)
あさ、眼をさますときの気持は、面白い。
(かくれんぼのとき、おしいれのまっくらいなかに、)
かくれんぼのとき、押入れの真っ暗い中に、
(じっと、しゃがんでかくれていて、)
じっと、しゃがんで隠れていて、
(とつぜん、でこちゃんに、がらっとふすまをあけられ、)
突然、でこちゃんに、がらっと襖をあけられ、
(ひのひかりがどっときて、でこちゃんに、)
日の光がどっと来て、でこちゃんに、
(「みつけた!」とおおごえでいわれて、)
「見つけた!」と大声で言われて、
(まぶしさ、それから、へんなまのわるさ、)
まぶしさ、それから、へんな間の悪さ、
(それから、むねがどきどきして、)
それから、胸がどきどきして、
(きもののまえをあわせたりして、)
着物のまえを合せたりして、
(ちょっと、てれくさく、おしいれからでてきて、)
ちょっと、てれくさく、押入れから出て来て、
(きゅうにむかむかはらだたしく、あのかんじ、)
急にむかむか腹立たしく、あの感じ、
(いや、ちがう、あのかんじでもない、)
いや、ちがう、あの感じでもない、
(なんだか、もっとやりきれない。)
なんだか、もっとやりきれない。
(はこをあけると、そのなかに、またちいさいはこがあって、)
箱をあけると、その中に、また小さい箱があって、
(そのちいさいはこをあけると、またそのなかに、)
その小さい箱をあけると、またその中に、
(もっとちいさいはこがあって、そいつをあけると、)
もっと小さい箱があって、そいつをあけると、
(また、また、ちいさいはこがあって、)
また、また、小さい箱があって、
(そのちいさいはこをあけると、またはこがあって、)
その小さい箱をあけると、また箱があって、
(そうして、ななつも、やっつも、あけていって、)
そうして、七つも、八つも、あけていって、
(とうとうおしまいに、)
とうとうおしまいに、
など
(さいころくらいのちいさいはこがでてきて、)
さいころくらいの小さい箱が出て来て、
(そいつをそっとあけてみて、)
そいつをそっとあけてみて、
(なにもない、からっぽ、あのかんじ、すこしちかい。)
何もない、からっぽ、あの感じ、少し近い。
(ぱちっとめがさめるなんて、あれはうそだ。)
パチッと眼がさめるなんて、あれは嘘だ。
(にごってにごって、そのうちに、)
濁って濁って、そのうちに、
(だんだんでんぷんがしたにしずみ、)
だんだん澱粉が下に沈み、
(すこしずつうわずみができて、)
少しずつ上澄が出来て、
(やっとつかれてめがさめる。)
やっと疲れて眼がさめる。
(あさは、なんだか、しらじらしい。)
朝は、なんだか、しらじらしい。