夜桜非行

(ひるをはんではよるがおちて)

昼を食んでは 夜が落ちて

(いつものうしろすがたさがす)

いつもの後ろ姿探す

(きょういきるだけのかてなんかいらない)

今日生きるだけの 糧なんかいらない

(ねおんとけんそうつくろったげんそう)

ネオンと喧騒 繕った幻想

(すこしさきまわってぐうぜんのふりまでしてとおせんぼ)

少し先回って 偶然のふりまでしてとおせんぼ

(そのほほえみのいみはなに)

その微笑みの意味は何？

(つぶれるほどめをこらしたってこころはかくれんぼ)

潰れるほど目を 凝らしたって心はかくれんぼ

(かなうならばただしりたくて)

叶うならば ただ知りたくて

(あなたのめにはどううつっているの)

あなたの目にはどう映っているの？

(やこうせいはあなたのせい)

夜行性は あなたのせい

(おなじことばもないから)

同じ言葉も無いから

(みおろすめに)

見下ろす目に

(とどかないきょりをしったの)

届かない距離を知ったの

(よるにあいてはあさがおきて)

夜に飽いては 朝が起きて

(またたいくつがもどかしいの)

また退屈がもどかしいの

(あのうすべによりきれいにさきたくて)

あの薄紅より 綺麗に咲きたくて

(よどんだけしきがないまぜにゆれる)

淀んだ景色が 綯い交ぜに揺れる

(だれかがえがおなんてよんだものをまねしてみたけれど)

誰かが笑顔なんて 呼んだものを真似してみたけれど

(もうみなもはぼやけたまま)

もう水面はぼやけたまま

(ひょうじょうとやらもきっとあなたにはつたわらないの)

表情とやらも きっとあなたには伝わらないの

(わかりきってるれいこくなほど)

わかりきってる 冷酷なほど

(あなたのめにはどううつっているの)

あなたの目にはどう映っているの？

(このこえがうらめしいわ)

この声が恨めしいわ

(おなじことばをください)

同じ言葉をください

(すりつぶそうとひともじもつたえられない)

擦り潰そうと 一文字も伝えられない

(いちもくりょうぜんこっけいなまちがいさがしだってわかってる)

一目瞭然 滑稽な 間違い探しだってわかってる

(なのにこころだけはずっとみえないままで)

なのに心だけはずっと見えないままで

(あなたのめにはどううつっているの)

あなたの目にはどう映っているの？

(やこうせいはあなたのせい)

夜行性は あなたのせい

(おなじからだじゃないから)

同じ身体じゃないから

(まえあしなんかじゃあなたとおどれない)

前足なんかじゃ あなたと踊れない

(ことばひとつだけかわせたなら)

言葉一つだけ交わせたなら

(それいじょうはいらないのに)

それ以上は いらないのに

(きょうもこえひとつなくえきへきえる)

今日も声一つ無く 駅へ消える

(あなたをまたとめられない)

あなたをまた止められない

(とどかない)

届かない