病名は愛だった

(よめいすうかげつばかりのこいにてんてきでふようするかんじゃたち)

余命数か月ばかりの恋に点滴で扶養する患者達

(ひがいしゃのあまいきたいをわずらいかいごのきかいをためらうどくたー)

被害者の甘い期待を弔い悔悟の機械を躊躇うドクター

(ゆえんなどゆくえしらずみちのびょうそうにふすかんじゃたち)

所以など行方知らず未知の病巣に臥す患者達

(はつねつがしいんさればそうきにちゅうちょすべきだったとしるほうかはん)

発熱が死因然れば早期に躊躇すべきだったと知る放火犯

(このこころにあながあいたくらいなのにたったそれだけのちがいなのに)

この心に穴が空いたくらいなのにたったそれだけの違いなのに

(あなたのせなかににじんでくるいこんがかれそうもないのはどうしてなの)

貴方の背中に滲んでく涙根が枯れそうもないのはどうしてなの

(びょうめいはあいだった)

病名は愛だった

(いまはもはやもちぐされのこいにさじなえんめいをこうかんじゃたち)

今はもはや持ち腐れの恋に些事な延命を乞う患者達

(かがいしゃのあらいちりょうにたえたいはんりょたるものはとさとるぺいしぇんと)

加害者の荒い治療に耐えたい伴侶たる者はと覚るペイシェント

(あかいいとをかたむすびゆえにくびをしめあうかんじゃたち)

赤い糸を固結び故に首を絞めあう患者達

(こきゅうができないされどほどけないほんしにはんすますいにすがっている)

呼吸ができない然れど解けない本旨に反す麻酔に縋っている

(ただこころのみぞをそっとおおいたくてたったそれだけのちがいなのに)

ただ心の溝をそっと覆いたくてたったそれだけの違いなのに

(どのがーぜをあてたとしてもかえられないあなたのぬくもりをまっている)

どのガーゼを充てたとしても代えられない貴方の温もりを待っている

(びょうめいはあいだった)

病名は愛だった

(うつくしいうそにだまされて)

美しい嘘に騙されて

(えにあわぬはなになりはてて)

会に合わぬ花に成り果てて

(ゆるやかにせまるしきですらふぃなーれのようにみちがえる)

緩やかに迫る死期ですらフィナーレのように見違える

(あさましいゆめにばかされてふれいなやまいにたたられて)

浅ましい夢に化かされて不例な病に祟られて

(いきもたえだえなこいごころそのしにめをつづった)

息も絶え絶えな恋心その死に目を綴った

(「びょうめいはあいだった」)

「病名は愛だった」