風の又三郎 17

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九月八日 鬼っこ
宮沢賢治 作 全文
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 Par100 4032 C 4.0 98.5% 578.6 2369 36 51 2024/02/21

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問題文

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(くがつようか)

九 月 八 日

(つぎのあさ、じゅぎょうのまえ、みんながうんどうじょうでてつぼうにぶらさがったり、)

次の朝、授業の前、みんなが運動場で鉄棒にぶら下ったり、

(ぼうかくしをしたりしていますと、)

棒かくしをしたりしていますと、

(すこしおくれてさたろうがなにかをいれたざるを、そっとかかえてやってきました。)

少し遅れて佐太郎が何かを入れた笊を、そっと抱えてやって来ました。

(「なんだ。なんだ。なんだ。」とすぐみんなはしっていって、のぞきこみました。)

「何だ。何だ。何だ。」とすぐみんな走って行って、のぞき込みました。

(するとさたろうはそででそれをかくすようにして、)

すると佐太郎は袖でそれをかくすようにして、

(いそいでがっこうのうらのいわあなのところへいきました。)

急いで学校の裏の岩穴のところへ行きました。

(みんなはいよいよ、あとをおっていきました。)

みんなはいよいよ、あとを追って行きました。

(いちろうがそれをのぞくと、おもわずかおいろをかえました。)

一郎がそれをのぞくと、思わず顔いろを変えました。

(それはさかなのどくもみにつかうさんしょうのこなで、)

それは魚の毒もみにつかう山椒の粉で、

(それをつかうと、はっぱとおなじようにじゅんさにおさえられるのでした。)

それを使うと、発破と同じように巡査に押えられるのでした。

(ところがさたろうは、それをいわあなのよこのかやのなかへかくして、)

ところが佐太郎は、それを岩穴の横の萱の中へかくして、

(しらないかおをしてうんどうじょうへかえりました。)

知らない顔をして運動場へ帰りました。

(そこでみんなは、ひそひそじかんになるまで、)

そこでみんなは、ひそひそ時間になるまで、

(ひそひそ、そのはなしばかりしていました。)

ひそひそ、その話ばかりしていました。

(そのひもじゅうじごろから、やっぱりきのうのようにあつくなりました。)

その日も十時ごろから、やっぱり昨日のように暑くなりました。

(みんなはもうじゅぎょうのすむのばかり、まっていました。)

みんなはもう授業の済むのばかり、待っていました。

(にじになってごじかんめがおわると、もうみんないちもくさんにとびだしました。)

二時になって五時間目が終ると、もうみんな一目散に飛びだしました。

(さたろうもまたざるをそっとそででかくして、)

佐太郎もまた笊をそっと袖でかくして、

(こうすけだのみんなにかこまれて、かわらへいきました。)

耕助だのみんなに囲まれて、河原へ行きました。

など

(またさぶろうはかすけといきました。)

又三郎は嘉助と行きました。

(みんなはまちのまつりのときのがすのような、)

みんなは町の祭のときの瓦斯のような、

(においのむっとする、ねむのかわらをいそいでぬけて、)

匂のむっとする、ねむの河原を急いで抜けて、

(いつもの、さいかちぶちにつきました。)

いつもの、さいかち淵に着きました。

(すっかりなつのようなりっぱなくものみねが、ひがしでむくむくもりあがり、)

すっかり夏のような立派な雲の峰が、東でむくむく盛りあがり、

(さいかちのきはあおくひかってみえました。)

さいかちの木は青く光って見えました。

(みんないそいできものをぬいで、ふちのきしにたつと、)

みんな急いで着物をぬいで、淵の岸に立つと、

(さたろうがいちろうのかおをみながらいいました。)

佐太郎が一郎の顔を見ながらいいました。

(「ちゃんといちれつにならべ。いいか、さかなういてきたらおよいでいってとれ。)

「ちゃんと一列にならべ。いいか、魚浮いて来たら泳いで行ってとれ。

(とったくらいやるぞ。いいか。」)

とった位与(ヤ)るぞ。いいか。」

(ちいさなこどもらは、よろこんでかおをあかくして、)

小さなこどもらは、よろこんで顔を赤くして、

(おしあったりしながら、ぞろっとふちをかこみました。)

押しあったりしながら、ぞろっと淵を囲みました。

(ぺきちだのさんよにんはもうおよいで、さいかちのきのしたまでいってまっていました。)

ぺ吉だの三四人はもう泳いで、さいかちの木の下まで行って待っていました。

(さたろう、おおいばりで、じょうりゅうのせにいってざるをじゃぶじゃぶみずであらいました。)

佐太郎、大威張りで、上流の瀬に行って笊をじゃぶじゃぶ水で洗いました。

(みんなしぃんとして、みずをみつめてたっていました。)

みんなしぃんとして、水をみつめて立っていました。

(またさぶろうはみずをみないで、むこうのくものみねのうえをとおる、くろいとりをみていました。)

又三郎は水を見ないで、向うの雲の峰の上を通る、黒い鳥を見ていました。

(いちろうもかわらにすわっていしをこちこちたたいていました。)

一郎も河原に坐って石をこちこち叩いていました。

(ところが、それからよほどたってもさかなはういてきませんでした。)

ところが、それからよほどたっても魚は浮いて来ませんでした。

(さたろうはたいへんまじめなかおで、きちんとたってみずをみていました。)

佐太郎は大へんまじめな顔で、きちんと立って水を見ていました。

(きのうはっぱをかけたときなら、もうじゅっぴきもとっていたんだと、)

昨日発破をかけたときなら、もう十疋もとっていたんだと、

(みんなはおもいました。)

みんなは思いました。

(またずいぶんしばらく、みんなしぃんとしてまちました。)

またずいぶんしばらく、みんなしぃんとして待ちました。

(けれどもやっぱりさかなはいっぴきもういてきませんでした。)

けれどもやっぱり魚は一ぴきも浮いて来ませんでした。

(「さっぱりさかな、うかばなぃな。」こうすけがさけびました。)

「さっぱり魚、浮ばなぃな。」耕助が叫びました。

(さたろうはびくっとしましたけれども、まだいっしんにみずをみていました。)

佐太郎はびくっとしましたけれども、まだ一しんに水を見ていました。

(「さかなさっぱりうかばなぃな。」ぺきちがまたむこうのきのしたでいいました。)

「魚さっぱり浮ばなぃな。」ぺ吉がまた向うの木の下でいいました。

(するともう、みんなはがやがやいいだして、)

するともう、みんなはがやがやいい出して、

(みんなみずにとびこんでしまいました。)

みんな水に飛び込んでしまいました。

(さたろうはしばらくきまりわるそうに、しゃがんでみずをみていましたけれど、)

佐太郎はしばらくきまり悪そうに、しゃがんで水を見ていましたけれど、

(とうとうたって、)

とうとう立って、

(「おにっこしないか。」といった。)

「鬼っこしないか。」といった。

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