風の又三郎 19

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九月十二日 大風の朝
宮沢賢治 作 全文
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1 Par100 3841 D++ 3.9 96.4% 474.3 1892 70 46 2024/02/22

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問題文

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(くがつじゅうににち、だいじゅうににち)

九 月 十 二 日 、第 十 二 日

(「どっどど どどうど どどうど どどう)

「どっどど どどうど どどうど どどう

(あおいくるみも、ふきとばせ)

青いくるみも、吹きとばせ

(すっぱいかりんもふきとばせ)

すっぱいかりんもふきとばせ

(どっどど どどうど どどうど どどう)

どっどど どどうど どどうど どどう

(どっどど どどうど どどうど どどう」)

どっどど どどうど どどうど どどう」

(せんころ、またさぶろうからきいたばかりのあのうたを)

先頃(センコロ)、又三郎から聞いたばかりのあの歌を

(いちろうはゆめのなかでまたきいたのです。)

一郎は夢の中でまたきいたのです。

(びっくりしてはねおきてみると、)

びっくりして跳ね起きて見ると、

(そとではほんとうにひどくかぜがふいて、はやしはまるでほえるよう、)

外ではほんとうにひどく風が吹いて、林はまるで咆えるよう、

(あけがたちかくのあおぐろいうすあかりが、)

あけがた近くの青ぐろいうすあかりが、

(しょうじやたなのうえのちょうちんばこやいえじゅう、いっぱいでした。)

障子や棚の上の提灯箱や家中、一っぱいでした。

(いちろうはすばやくおびをして、そしてげたをはいてどまをくだり、)

一郎はすばやく帯をして、そして下駄をはいて土間を下り、

(うまやのまえをとおってくぐりをあけましたら、)

馬屋の前を通って潜りをあけましたら、

(かぜがつめたいあめのつぶといっしょに、どうっとはいってきました。)

風がつめたい雨の粒と一緒に、どうっと入って来ました。

(うまやのうしろのほうでなにかとがばたっとたおれ、)

馬屋のうしろの方で何か戸がばたっと倒れ、

(うまはぶるるっとはなをならしました。)

馬はぶるるっと鼻を鳴らしました。

(いちろうはかぜがむねのそこまでにじみこんだようにおもって、)

一郎は風が胸の底まで滲み込んだように思って、

(はあとつよくいきをはきました。)

はあと強く息を吐きました。

(そしてそとへかけだしました。)

そして外へかけだしました。

など

(そとはもうよほどあかるく、つちはぬれておりました。)

外はもうよほど明るく、土はぬれて居りました。

(いえのまえのくりのきのれつは、へんにあおくしろくみえて、)

家の前の栗の木の列は、変に青く白く見えて、

(それがまるでかぜとあめとで、いませんたくをするとでもいうように、)

それがまるで風と雨とで、今洗濯をするとでもいう様に、

(はげしくもまれていました。)

烈しくもまれていました。

(あおいはもいくまいもふきとばされ、)

青い葉も幾枚も吹き飛ばされ、

(ちぎられたあおいくりのいがは、くろいじめんにたくさんおちていました。)

ちぎられた青い栗のいがは、黒い地面にたくさん落ちていました。

(そらではくもがけわしいはいいろにひかり、)

空では雲がけわしい灰色に光り、

(どんどんどんどんきたのほうへふきとばされていました。)

どんどんどんどん北の方へ吹きとばされていました。

(とおくのほうのはやしはまるでうみがあれているように、)

遠くの方の林はまるで海が荒れているように、

(ごとんごとんとなったり、ざっときこえたりするのでした。)

ごとんごとんと鳴ったり、ざっと聞えたりするのでした。

(いちろうはかおいっぱいにつめたいあめのつぶをなげつけられ、)

一郎は顔いっぱいに冷たい雨の粒を投げつけられ、

(かぜにきものをもっていかれそうになりながら、)

風に着物をもって行かれそうになりながら、

(だまってそのおとをききすまし、じっとそらをみあげました。)

だまってその音をききすまし、じっと空を見上げました。

(するとむねが、さらさらとなみをたてるようにおもいました。)

すると胸が、さらさらと波をたてるように思いました。

(けれどもまた、じっと、そのなってほえてうなって、)

けれどもまた、じっと、その鳴って吠えてうなって、

(かけていくかぜをみていますと、)

かけて行く風をみていますと、

(こんどはむねが、どかどかなってくるのでした。)

今度は胸が、どかどかなってくるのでした。

(きのうまでおかやのはらのそらのそこに、すみきってしんとしていたかぜが、)

昨日まで丘や野原の空の底に、澄みきってしんとしていた風が、

(けさ、よあけがたにわかにいっせいにこううごきだして、)

今朝、夜あけ方俄かに一斉に斯う動き出して、

(どんどんどんどん、たすかろらかいしょうのきたのはじをめがけて、)

どんどんどんどん、タスカロラ海床の北のはじをめがけて、

(いくことをかんがえますと、)

行くことを考えますと、

(もういちろうはかおがほてり、いきもはあはあなって、)

もう一郎は顔がほてり、息もはあはあなって、

(じぶんまでがいっしょに、そらをかけていくようなきもちになって、)

自分までが一緒に、空を翔けて行くような気持ちになって、

(むねをいっぱいはって、いきをふっとふきました。)

胸を一ぱいはって、息をふっと吹きました。

(「ああひでかぜだ。きょうはたばこもあわもすっかりやらえる。」)

「ああひで風だ。今日はたばこも粟もすっかりやらえる。」

(といちろうのおじいさんがくぐりのところにたって、じっとそらをみています。)

と一郎のおじいさんが潜りのところに立って、じっと空を見ています。

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