金の輪 小川未明

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プレイ回数2105難易度(4.5) 3320打 長文
長く病気だった太郎は、ようやく起きられるようになり外へ出た。
そして不思議な少年に出会う。
作者は児童文学作家。非常に読みやすい作品です。

輪回し→自転車の車輪等を、棒をあてがい転がす遊び。

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問題文

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(たろうはながいあいだ、びょうきでふしていましたが、ようやくとこからはなれて)

太郎は長いあいだ、病気でふしていましたが、ようやく床からはなれて

(でられるようになりました。けれどまださんがつのすえで、)

出られるようになりました。けれどまだ三月の末で、

(あさとばんにはさむいことがありました。だから、ひのあたっているときには、)

朝と晩には寒いことがありました。だから、日のあたっているときには、

(そとへでてもさしつかえなかったけれど、ばんがたになるとはやくいえへはいるように、)

外へ出てもさしつかえなかったけれど、晩がたになると早く家へはいるように、

(おかあさんからいいきかされていました。まだ、さくらのはなも、)

おかあさんからいいきかされていました。まだ、さくらの花も、

(もものはなもさくにははようございましたけれど、うめだけが、)

ももの花も咲くには早うございましたけれど、うめだけが、

(かきねのきわにさいていました。そして、ゆきもたいていきえてしまって、)

かきねのきわに咲いていました。そして、雪もたいてい消えてしまって、

(ただおおきなてらのうらや、はたけのすみのところなどに、いくぶんかきえずに)

ただ大きな寺のうらや、畑のすみのところなどに、いくぶんか消えずに

(のこっているくらいのものでありました。)

のこっているくらいのものでありました。

(たろうは、そとにでましたけれど、おうらいにはちょうど、だれもともだちが)

太郎は、外に出ましたけれど、往来にはちょうど、だれも友だちが

(あそんでいませんでした。みんなてんきがよいので、とおくのほうまで)

遊んでいませんでした。みんな天気がよいので、遠くの方まで

(あそびにいったものとみえます。もし、このきんじょであったら、)

遊びに行ったものとみえます。もし、この近所であったら、

(じぶんもいってみようとおもって、みみをすましてみましたけれど、)

自分も行ってみようと思って、耳をすましてみましたけれど、

(それらしいこえなどはきこえなかったのであります。)

それらしい声などはきこえなかったのであります。

(ひとりしょんぼりとして、たろうはいえのまえにたっていましたが、)

ひとりしょんぼりとして、太郎は家のまえに立っていましたが、

(はたけにはきょねんとりのこしたやさいなどが、あたらしくみどりいろのめをふきましたので、)

畑には去年とりのこした野菜などが、新しくみどり色の芽をふきましたので、

(それをみながらほそいみちをあるいていました。すると、よいきんのわのふれあう)

それを見ながら細い道を歩いていました。すると、よい金の輪のふれあう

(おとがして、ちょうどすずをならすようにきこえてきました。かなたをみますと、)

音がして、ちょうどすずを鳴らすようにきこえてきました。かなたを見ますと、

(おうらいのうえをひとりのしょうねんが、わをまわしながら、はしってきました。)

往来の上をひとりの少年が、輪をまわしながら、走ってきました。

(そして、そのわはきんいろにひかっていました。たろうはめをみはりました。)

そして、その輪は金色に光っていました。太郎は目を見はりました。

など

(かつてこんなにうつくしくひかるわをみなかったからであります。しかも、しょうねんの)

かつてこんなに美しく光る輪を見なかったからであります。しかも、少年の

(まわしてくるきんのわはふたつで、それがたがいにふれあって、よいねいろを)

まわしてくる金の輪は二つで、それがたがいにふれあって、よい音色を

(たてるのであります。たろうはかつてこんなにてぎわよく)

たてるのであります。太郎はかつてこんなに手ぎわよく

(わをまわすしょうねんをみたことがありません。いったいだれだろうとおもって、)

輪をまわす少年を見たことがありません。いったいだれだろうと思って、

(かなたのおうらいをはしっていくしょうねんのかおをながめましたが、)

かなたの往来を走って行く少年の顔をながめましたが、

(まったくみおぼえのないしょうねんでありました。このしらぬしょうねんは、)

まったく見おぼえのない少年でありました。この知らぬ少年は、

(そのおうらいをすぎるときに、ちょっとたろうのほうをむいてびしょうしました。)

その往来をすぎるときに、ちょっと太郎の方をむいて微笑しました。

(ちょうどしったともだちにむかってするように、なつかしげにみえました。)

ちょうど知った友だちにむかってするように、なつかしげに見えました。

(わをまわしていくしょうねんのすがたは、やがてしろいみちのほうにきえてしまいました。)

輪をまわして行く少年のすがたは、やがて白い道の方に消えてしまいました。

(けれど、たろうはいつまでもたって、そのゆくえをみまもっていました。)

けれど、太郎はいつまでも立って、そのゆくえを見まもっていました。

(たろうは、「だれだろう。」と、そのしょうねんのことをかんがえました。いつこのむらへ)

太郎は、「だれだろう。」と、その少年のことを考えました。いつこの村へ

(こしてきたのだろう?それともとおいまちのほうから、あそびにきたのだろうか)

こしてきたのだろう?それとも遠い町の方から、遊びにきたのだろうか

(とおもいました。あくるひのごご、たろうはまたはたけのなかにでてみました。すると、)

と思いました。あくる日の午後、太郎はまた畑の中に出てみました。すると、

(ちょうどきのうとおなじじこくにわのなるおとがきこえてきました。)

ちょうどきのうとおなじ時刻に輪の鳴る音がきこえてきました。

(たろうはかなたのおうらいをみますと、しょうねんがふたつのわをまわして、はしってきました。)

太郎はかなたの往来を見ますと、少年が二つの輪をまわして、走ってきました。

(そのわはきんいろにかがやいてみえました。)

その輪は金色にかがやいて見えました。

(しょうねんはそのおうらいをすぎるときに、こちらをむいて、きのうよりも)

少年はその往来をすぎるときに、こちらをむいて、きのうよりも

(いっそうなつかしげに、ほおえんだのであります。)

いっそうなつかしげに、ほおえんだのであります。

(そして、なにかいいたげなようすをして、ちょっとくびをかしげましたが、)

そして、なにかいいたげなようすをして、ちょっとくびをかしげましたが、

(ついそのままいってしまいました。たろうははたけのなかにたって、しょんぼりとして、)

ついそのまま行ってしまいました。太郎は畑の中に立って、しょんぼりとして、

(しょうねんのゆくえをみおくりました。いつしかそのすがたは、しろいみちのかなたに)

少年のゆくえを見おくりました。いつしかそのすがたは、白い道のかなたに

(きえてしまったのです。けれど、いつまでもそのしょうねんのしろいかおと、)

消えてしまったのです。けれど、いつまでもその少年の白い顔と、

(びしょうとがたろうのめにのこっていて、とれませんでした。)

微笑とが太郎の目にのこっていて、とれませんでした。

(「いったい、だれだろう。」と、たろうはふしぎにおもえてなりませんでした。)

「いったい、だれだろう。」と、太郎はふしぎに思えてなりませんでした。

(いままでいちどもみたことがないしょうねんだけれど、なんとなくいちばんしたしい)

今まで一ども見たことがない少年だけれど、なんとなくいちばんしたしい

(ともだちのようなきがしてならなかったのです。)

友だちのような気がしてならなかったのです。

(あしたばかりは、ものをいっておともだちになろうと、いろいろくうそうを)

あしたばかりは、ものをいってお友だちになろうと、いろいろ空想を

(えがきました。やがて、にしのそらがあかくなって、ひぐれがたになりましたから、)

えがきました。やがて、西の空が赤くなって、日暮れがたになりましたから、

(たろうはいえのなかにはいりました。そのばん、たろうはははおやにむかって、)

太郎は家の中にはいりました。その晩、太郎は母親にむかって、

(ふつかもおなじじこくに、きんのわをまわしてはしっているしょうねんのことをかたりました。)

二日もおなじ時刻に、金の輪をまわして走っている少年のことを語りました。

(ははおやはしんじませんでした。たろうは、しょうねんとともだちになって、じぶんはしょうねんから)

母親は信じませんでした。太郎は、少年と友だちになって、自分は少年から

(きんのわをひとつわけてもらって、おうらいのうえをふたりでどこまでも)

金の輪を一つわけてもらって、往来の上をふたりでどこまでも

(はしっていくゆめをみました。そして、いつしかふたりは、)

走って行く夢を見ました。そして、いつしかふたりは、

(あかいゆうやけぞらのなかにはいってしまったゆめをみました。)

赤い夕やけ空の中にはいってしまった夢をみました。

(あくるひから、たろうはまたねつがでました。)

あくる日から、太郎はまた熱が出ました。

(そして、にじゅうさんにちめにななつでなくなりました。)

そして、二三日めに七つでなくなりました。

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