岡本かの子『おせっかい夫人』
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | kanta | 4770 | B | 4.9 | 96.6% | 343.6 | 1698 | 59 | 23 | 2024/03/02 |
2 | ねね | 4056 | C | 4.1 | 97.2% | 412.4 | 1722 | 49 | 23 | 2024/03/31 |
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問題文
(ごぜん11じはんから12じちょっとすぎまでのできごとです。うらうらとはれたはるの)
午前十一時半から十二時ちょっと過ぎまでの出来事です。うらうらと晴れた春の
(ひのだんきにさそわれてはなこふじんは3じかんもまえにしゅじんをおくりだしたもんぜんへまたもでて)
日の暖気に誘われて花子夫人は三時間も前に主人を送り出した門前へまたも出て
(みました。いとめのつやをはっきりたてたてぎわのいいししゅうです。そこにりんか)
見ました。糸目の艶をはっきりたてた手際の好い刺繍です。そこに隣家
(くにえださんとのさかいのかきにきんこうしょくのつぼみをよりあわせもりあわせているぼけのえだは--)
国枝さんとの境の垣に金紅色の蕾を寄り合わせ盛り合わせているぼけの枝は――
(だが、そのかげにうろうろしていたのはかわゆいかなりやのひなではありません)
だが、その蔭にうろうろしていたのは可愛ゆいカナリヤの雛ではありません
(でした。くろっぽくぼやけた40おとこでした。「わたし、くにえだのしんるいのものですが、しきゅう)
でした。黒っぽくぼやけた四十男でした。「私、国枝の親類の者ですが、至急
(たびにたちますのにひつようなものをこのいえにあずけておいたのですがるすでこまって)
旅に立ちますのに必要なものをこの家に預けて置いたのですが留守で困って
(おります」わかくてきのいい、そしてかなりおせっかいなはなこふじんが、くにえださん)
おります」若くて気の好い、そしてかなりおせっかいな花子夫人が、国枝さん
(いっかがけさからなかののちじんへでかけたことをしっていたのですから)
一家が今朝から中野の知人へ出かけたことを知っていたのですから
(たまりません。くにえださんのよめさんとしゅうとめさんがでかけるとき、げんじゅうにかぎをきかせて)
たまりません。国枝さんの嫁さんと姑さんが出かける時、厳重に鍵を利かせて
(おいたとじまりのどこかにすきがあるかとりんかのとぐちというとぐちを40おとこと)
置いた戸締りの何処かにすきがあるかと隣家の戸口という戸口を四十男と
(たたいてあるきまわりました。がだめでした。「おきのどくですわね、よこはまの)
たたいて歩き廻りました。がだめでした。「お気の毒ですわね、横浜の
(くにえださんのおしゅうとめさんのおうちのほうででもおありでしょうにね」「ええわたしはその)
国枝さんのお姑さんのお家の方ででもおありでしょうにね」「ええ私はその
(よこはまのくにえださんのしゅうとめのいえのものなのですが」はなこふじんのくちまねを40おとこがすれば)
横浜の国枝さんの姑の家の者なのですが」花子夫人の口まねを四十男がすれば
(するほど、はなこふじんはおとこをしんようしきのどくがりました。はなこふじんはきいこえになり)
するほど、花子夫人は男を信用し気の毒がりました。花子夫人は黄い声になり
(おおげさにはしごのひつようをまえのいえのさかんのおかみさんにとき、ちゅうくらいなのを1つかりて)
大げさに梯子の必要を前の家の左官のおかみさんに説き、中位なのを一つ借りて
(きておとこにてつだわせくにえださんのゆどののじょうぶのがらすまどにとどかせ、すこしこしよわそうなおとこの)
来て男に手伝わせ国枝さんの湯殿の上部の硝子窓に届かせ、少し腰弱そうな男の
(ためにはしごのかぶまでおさえてやり、がらすどをうまくこじあけさせて、おとこをいえの)
ために梯子の下部まで押えてやり、硝子戸をうまくこじ開けさせて、男を家の
(なかにいれてやりました。30ぷんばかりあと、おとこはくにえださんのおもてげんかんをうちがわから)
中にいれてやりました。三十分ばかり後、男は国枝さんの表玄関を内側から
(あけ、かなりなおもみのみえるふろしきづつみをもってあらわれました。おとこはあれほど)
あけ、可成な重味の見える風呂敷包みを持って現われました。男はあれほど
(せわになったはなこふじんのげんかんへおれいのことば1ついいかけるでもなく、それこそ)
世話になった花子夫人の玄関へ御礼の言葉一ついい掛けるでもなく、それこそ
(ふてきなつらがまえをして、さっさとあるきさりました。おとこはとうきょうのやまのてをあらしていた)
不敵な面構えをして、さっさと歩き去りました。男は東京の山の手を荒していた
(あきすねらいでした。)
空巣ねらいでした。
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