バスカヴィル家の犬42

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プレイ回数1558難易度(4.2) 4490打 長文 かな 長文モード可
シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。句読点以外の記号は省いています。

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問題文

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(もしこれがほうこくしょだとすればほかにもあるかもしれないとおもい、わたしはこやのなかを)

もしこれが報告書だとすれば他にもあるかもしれないと思い、私は小屋の中を

(みまわしてちょうさした。しかしてがみのようなものはまったくなかった。それどころか、)

見回して調査した。しかし手紙のようなものは全くなかった。それどころか、

(こんなきみょうなばしょにすんでいるおとこのすじょうやもくてきにつながりそうなこんせきも、なにひとつ)

こんな奇妙な場所に住んでいる男の素性や目的に繋がりそうな痕跡も、何一つ

(みつからなかった。ただ、このじんぶつはしつじつなせいかつしゅうかんで、ふべんなせいかつを)

見つからなかった。ただ、この人物は質実な生活習慣で、不便な生活を

(ほとんどくにしないおとこにちがいない。どしゃぶりのあめとおおきなあなのあいたやねを)

ほとんど苦にしない男に違いない。土砂降りの雨と大きな穴の開いた屋根を

(かんがえると、このあれはてたじゅうきょにすんでいるおとこが、どれほどけんごでふへんのもくてきを)

考えると、この荒れ果てた住居に住んでいる男が、どれほど堅固で不変の目的を

(もっているかがりかいできた。かれはあくいをいだいたてきなのか、それとも、)

持っているかが理解できた。彼は悪意を抱いた敵なのか、それとも、

(ことによるとしゅごしんなのか?わたしはそれをしるまでけっしてこのこやをはなれないと)

ことによると守護神なのか?私はそれを知るまで決してこの小屋を離れないと

(けついした。そとではたいようがひくくおちていき、にしのそらはあかときんいろにそまって)

決意した。外では太陽が低く落ちて行き、西の空は赤と金色に染まって

(もえたつようだった。そのひかりがきょだいなぐりんぺんしっちたいにてんざいするとおくのぬまに)

燃え立つようだった。その光が巨大なグリンペン湿地帯に点在する遠くの沼に

(はんしゃし、あかいはんてんとしててりかえされていた。にほんのばすかヴぃるかんのとうがみえ、)

反射し、赤い斑点として照り返されていた。二本のバスカヴィル館の塔が見え、

(とおくにぐりんぺんむらをしめすけむりがぼんやりとたちのぼっていた。りょうしゃのあいだのおかの)

遠くにグリンペン村を示す煙がぼんやりと立ち昇っていた。両者の間の丘の

(むこうに、すていぷるとんのいえがあった。きんいろのゆうがたのひかりのなかで、すべてはあまく)

向こうに、ステイプルトンの家があった。金色の夕方の光の中で、全ては甘く

(おちついてへいわだった。しかしこのこうけいをがんぜんにしても、わたしはへいわなしぜんを)

落ち着いて平和だった。しかしこの光景を眼前にしても、私は平和な自然を

(かんしょうしていたのではなかった。ただ、いっしゅんごとにちかづいてくる、よそうのつかない)

鑑賞していたのではなかった。ただ、一瞬ごとに近づいてくる、予想のつかない

(たいけつのきょうふにふるえていた。しんけいははりつめていたが、ふたいてんのけついで、わたしは)

対決の恐怖に震えていた。神経は張り詰めていたが、不退転の決意で、私は

(こやのくらくおくまったばしょにすわり、じゅうにんがかえってくるのをしずかにまちかまえていた。)

小屋の暗く奥まった場所に座り、住人が帰ってくるのを静かに待ち構えていた。

(そのとき、ついにあしおとがきこえた。とおくでくつがいしをふむするどいがりっという)

その時、ついに足音が聞こえた。遠くで靴が石を踏む鋭いガリッという

(おとがした。それからあしおとがどんどんとちかづいてきた。わたしはいちばんくらいすみにみをひそめ)

音がした。それから足音がどんどんと近づいてきた。私は一番暗い隅に身を潜め

(ぽけっとにいれたじゅうのげきてつをおこした。このなぞのおとこについてなにかをしるまでは、)

ポケットに入れた銃の撃鉄を起こした。この謎の男について何かを知るまでは、

など

(じぶんのみはかえりみないけついだった。ながいあいだ、あしおとがとだえていた。それはおとこが)

自分の身はかえりみない決意だった。長い間、足音が途絶えていた。それは男が

(たちどまっていることをしめしていた。そのあと、もういちどあしおとがちかづいてきて、)

立ち止まっていることを示していた。その後、もう一度足音が近づいてきて、

(こやのかいこうぶにひとかげがおちた。すばらしいゆうぐれだ、わとそん みみにおぼえの)

小屋の開口部に人影が落ちた。「素晴らしい夕暮れだ、ワトソン」耳に覚えの

(あるこえがきこえた。なかにいるよりそとのほうが、じつにすがすがしいとおもうよ)

ある声が聞こえた。「中にいるより外の方が、実にすがすがしいと思うよ」

(だいじゅうにしょう こうやのし)

第十二章 荒野の死

(わたしはじぶんのみみがしんじられず、しばらくいきをのんですわっていた。そのあと、)

私は自分の耳が信じられず、しばらく息を飲んで座っていた。その後、

(おしつぶされそうなせきにんがいっしゅんでわたしのせからきえたとかんじるとどうじに、わたしは)

押しつぶされそうな責任が一瞬で私の背から消えたと感じると同時に、私は

(じぶんをとりもどしてこえがでるようになった。あの、れいせいで、するどく、ひにくっぽいこえの)

自分を取り戻して声が出るようになった。あの、冷静で、鋭く、皮肉っぽい声の

(もちぬしは、せかいでただひとりしかいない。ほーむず!わたしはさけんだ。)

持ち主は、世界でただ一人しかいない。「ホームズ!」私は叫んだ。

(ほーむず!でてこいよ かれはいった。たのむからけんじゅうにはちゅういしてくれ)

「ホームズ!」「出てこいよ」彼は言った。「頼むから拳銃には注意してくれ」

(わたしはあらけずりのまぐさいしのしたにみをかがめてそとをのぞいた。ほーむずはそとのいしに)

私は荒削りのまぐさ石の下に身をかがめて外をのぞいた。ホームズは外の石に

(すわっていた。わたしのおどろいたようすをみて、かれのはいいろのめはゆかいそうにひかっていた。)

座っていた。私の驚いた様子を見て、彼の灰色の目は愉快そうに光っていた。

(かれはやせ、つかれているようにみえたが、こぎれいできびんそうだった。かれのするどいかおは)

彼は痩せ、疲れているように見えたが、小奇麗で機敏そうだった。彼の鋭い顔は

(ひにやけ、かぜでざらざらになっていた。かれはついーどのすーつをきてぬののぼうしを)

日に焼け、風でざらざらになっていた。彼はツイードのスーツを着て布の帽子を

(かぶり、ほかのこうやのりょこうしゃとかわらないようにみえた。そしてかれは、ねこのように)

被り、他の荒野の旅行者と変わらないように見えた。そして彼は、猫のように

(がいかんをこぎれいにしておきたいというどくとくのこだわりをなんらかのほうほうで)

外観を小奇麗にしておきたいという独特のこだわりを何らかの方法で

(みたしていた。ひげはきれいにそられ、しゃつはべいかーがいにいるのとおなじように)

満たしていた。髭は綺麗に剃られ、シャツはベイカー街にいるのと同じように

(ぱりっとしていた。じんせいでこれほどひとにあえてうれしかったことはない わたしは)

パリッとしていた。「人生でこれほど人に会えて嬉しかったことはない」私は

(かれのてをにぎっていった。というより、これほどおどろいたことはない、だろ?)

彼の手を握って言った。「というより、これほど驚いたことはない、だろ?」

(ああ、じつはそのとおりだ いっておくが、おどろいたのはきみだけじゃない。ぼくが)

「ああ、実はそのとおりだ」「言っておくが、驚いたのは君だけじゃない。僕が

(ときどきひなんじょにしていたこのこやが、きみにはっけんされるとはおもってもみなかった。)

時々避難所にしていたこの小屋が、君に発見されるとは思ってもみなかった。

(まして、ぼくがこのとびらからにじゅっぽいないのばしょにくるまで、きみがそのなかにいるとは)

まして、僕がこの扉から二十歩以内の場所に来るまで、君がその中にいるとは

(そうぞうもしなかった たぶん、わたしのあしあとをみたんだな?いや、わとそん、)

想像もしなかった」「多分、私の足跡を見たんだな?」「いや、ワトソン、

(せかいじゅうのにんげんのあしあとのなかからきみのあしあとをみわけられるとはおもっていない。)

世界中の人間の足跡の中から君の足跡を見分けられるとは思っていない。

(もしきみがほんきでぼくをあざむきたいなら、たばこやをかえないといけないな。)

もし君が本気で僕を欺きたいなら、煙草屋を変えないといけないな。

(おっくすふぉーどがいぶらっどりーのまーくがついたたばこのすいがらをみかければ、)

オックスフォード街ブラッドリーのマークがついた煙草の吸殻を見かければ、

(わがゆうじんわとそんがちかくにいるとわかるからね。みちのよこのそこにすいがらがみえる)

我が友人ワトソンが近くにいると分かるからね。道の横のそこに吸殻が見える

(だろう。まちがいなく、からのこやにふみいろうとするしゅんかん、きみがなげすてたんだ)

だろう。間違いなく、空の小屋に踏み入ろうとする瞬間、君が投げ捨てたんだ」

(そのとおりだ そこまでわかれば、ぼくはきみのすばらしいねばりづよさをしっている)

「その通りだ」「そこまで分かれば、僕は君の素晴らしい粘り強さを知っている

(ので、じゅうにんがもどってくるのをまちぶせするために、ぶきをてにいえのなかでしゃがんで)

ので、住人が戻ってくるのを待ち伏するために、武器を手に家の中でしゃがんで

(いるとかくしんした。きみはほんとうにぼくをはんにんだとおもったんだな?しょうたいは)

いると確信した。君は本当に僕を犯人だと思ったんだな?」「正体は

(わからなかった。しかしはっきりさせるけついだった みごとだ、わとそん!)

分からなかった。しかしはっきりさせる決意だった」「見事だ、ワトソン!

(どうやってぼくのいばしょをつきとめたんだ?たぶんしゅうじんをおいかけたよるに、)

どうやって僕の居場所を突き止めたんだ?多分囚人を追いかけた夜に、

(うかつにもつきをせにするというへまをしたとき、ぼくのすがたをみかけたんだな?)

うかつにも月を背にするというヘマをした時、僕の姿を見かけたんだな?」

(そうだ、あのとききみのすがたをみた もちろんこのこやにたどりつくまでぜんぶの)

「そうだ、あの時君の姿を見た」「もちろんこの小屋にたどり着くまで全部の

(こやをさがしたんだろう?いや、きみがつかっているしょうねんをみつけたから、けんとうは)

小屋を探したんだろう?」「いや、君が使っている少年を見つけたから、見当は

(ついた きっとぼうえんきょうをもったあのろうじんだな。さいしょにれんずがひかるのを)

ついた」「きっと望遠鏡を持ったあの老人だな。最初にレンズが光るのを

(みたときは、なんなのかがわからなかった かれはたちあがってこやをのぞきこんだ。)

見た時は、何なのかが分からなかった」彼は立ち上がって小屋を覗き込んだ。

(ほお。かーとらいとがぶっしをはこんでくれているな。このかみは?そうか、きみは)

「ほお。カートライトが物資を運んでくれているな。この紙は?そうか、君は

(くーむとれーしーにいったのか?そうだ みせすろーららいおんず)

クーム・トレーシーに行ったのか?」「そうだ」「ミセス・ローラ・ライオンズ

(にあいに?そのとおり よくやった!われわれのちょうさはどうやらおなじほうこうに)

に会いに?」「その通り」「よくやった!我々の調査はどうやら同じ方向に

(むいているようだ。おたがいのせいかをとうごうすれば、このじけんについてそうとうのじょうほうが)

向いているようだ。お互いの成果を統合すれば、この事件について相当の情報が

(えられるとおもう)

得られると思う」

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