雨に唄えば

(ずっとぬれたそら)

ずっと濡れた空

(どこにもいけないまま)

どこにも行けないまま

(そっとかさをさす)

そっと傘を差す

(きみはとなりにもういない)

君は隣にもういない

(いつかじかんがすべて)

いつか時間がすべて

(あらいながしてくなら)

洗い流してくなら

(せかいはなんてやさしくて)

世界はなんて優しくて

(かなしいんだろう)

悲しいんだろう

(わすれないわすれない)

忘れない　忘れない

(きみにどうつたえよう)

君にどう伝えよう

(ありがとうさようなら)

「ありがとう」「さようなら」

(どんなことばもちがう)

どんな言葉も違う

(よほうもよそうも)

予報も　予想も

(あてにならないまま)

あてにならないまま

(それでもいつしか)

それでも　いつしか

(いつしかあめはあがっていく)

いつしか　雨は上がっていく

(そっとかさねたて)

そっと重ねた手

(かべみたいひふとひふ)

壁みたい　皮膚と皮膚

(きっとわかりあえない)

きっと分かり合えない

(だからぼくらはわかちあう)

だから僕らは分かち合う

(ひとりきりじゃわからない)

一人きりじゃわからない

(じぶんのかたちでさえ)

自分の形でさえ

(ふれてきずつけて)

触れて　傷つけて

(すこしずつきづいていく)

少しずつ気づいていく

(からだでこころでこえでもうまくで)

体で　心で　声で　網膜で

(それでもたりない)

それでも足りない

(すべてあいしてた)

すべて愛してた

(きえないきずあと)

消えない傷跡

(きみがくれたもの)

君がくれたもの

(いまでもすこしだけうずくよ)

今でも少しだけ疼くよ

(とりがはばたくように)

鳥が羽ばたくように

(さかながおよぐように)

魚が泳ぐように

(ぼくにきみがいた)

僕に君がいた

(きみにぼくがいた)

君に僕がいた

(おちたとりは)

落ちた鳥は

(おぼれたさかなは)

溺れた魚は

(あるくしかないよね)

歩くしかないよね

(ひとりでも)

ひとりでも

(わすれないわすれない)

忘れない　忘れない

(ここにいないきみへ)

ここにいない君へ

(とどかないわかってる)

届かない　分かってる

(それでもとどけたい)

それでも届けたい

(そぼふるしぐれる)

そぼ降る　時雨れる

(そらのむこうまで)

空の向こうまで

(うたうよとどくようにうたうよ)

唄うよ　届くように　唄うよ

(わすれないわすれない)

忘れない　忘れない

(ありがとうさようなら)

「ありがとう」「さようなら」

(どんなことばもちがう)

どんな言葉も違う

(よほうもよそうも)

予報も　予想も

(あてにならないまま)

あてにならないまま

(それでもいつしか)

それでも　いつしか

(それでも)

それでも

(あめはあがっていく)

雨は上がっていく