「心理試験」17 江戸川乱歩

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江戸川乱歩の小説「心理試験」です。
今はあまり使われていない漢字や、読み方、表現などがありますが、原文のままです。

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問題文

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(ろく)

(かさもりはんじは、ひととおりさいとうをゆうざいとけっていしたりゆうをせつめいしたあとで、)

笠森判事は、一通り斉藤を有罪と決定した理由を説明したあとで、

(こうつけくわえた。「きみをうたがったりして、まったくあいすまんとおもっているのです。)

こう附加えた。「君を疑ったりして、全く相済まんと思っているのです。

(きょうは、じつはそのおわびかたがた、じじょうをよくおはなししようとおもって、)

今日は、実はそのお詫び旁々、事情をよくお話しようと思って、

(きていただいたわけですよ」そして、ふきやのためにはこうちゃをめいじたりして)

来て頂いた訳ですよ」そして、蕗谷の為には紅茶を命じたりして

(ごくうちくつろいだようすでざつだんをはじめた。あけちもはなしにくわわった。はんじは、)

極く打ちくつろいだ様子で雑談を始めた。明智も話に加わった。判事は、

(かれをしりあいのべんごしで、しんだろうばのいさんそうぞくしゃから、ちんぎんのとりたてなどを)

彼を知合の弁護士で、死んだ老婆の遺産相続者から、賃金の取立て等を

(いらいされているおとこだといってしょうかいした。むろんはんぶんはうそだけれどもしんぞくかいぎの)

依頼されている男だといって紹介した。無論半分は嘘だけれども親族会議の

(けっか、ろうばのおいがいなかからでてきて、いさんをそうぞくすることになったのは)

結果、老婆の甥が田舎から出て来て、遺産を相続することになったのは

(じじつだった。さんにんのあいだには、さいとうのうわさをはじめとして、いろいろのわだいがはなされた。)

事実だった。三人の間には、斉藤の噂を始めとして、色々の話題が話された。

(すっかりあんしんしたふきやは、なかでもいちばんゆうべんなはなしてだった。そうしているうちに、)

すっかり安心した蕗谷は、中でも一番雄弁な話手だった。そうしている内に、

(いつのまにかじかんがたって、まどのそとにゆうやみがせまってきた。ふきやはふとそれに)

いつの間にか時間が経って、窓の外に夕闇が迫って来た。蕗谷はふとそれに

(きづくと、かえりじたくをはじめながらいった。「では、もうしつれいしますが、べつに)

気附くと、帰り支度を始めながら云った。「では、もう失礼しますが、別に

(ごようはないでしょうか」「おお、すっかりわすれてしまうところだった」あけちが)

御用はないでしょうか」「オオ、すっかり忘れて了うところだった」明智が

(かいかつにいった。「なあに、どうでもいいようなことですがね。ちょうどついでだから、)

快活に云った。「なあに、どうでもいい様なことですがね。丁度序だから、

(・・・・・ごしょうちかどうですか、あのさつじんのあったへやに、にまいおりのきんびょうぶが)

・・・・・ご承知かどうですか、あの殺人のあった部屋に、二枚折りの金屏風が

(たててあったのですが、それにちょっときずがついていたといってもんだいに)

立ててあったのですが、それに一寸傷がついていたと云って問題に

(なっているのですよ。というのは、そのびょうぶはばあさんのものではなく、)

なっているのですよ。というのは、その屏風は婆さんのものではなく、

(ちんぎんのていとうにあずかってあったしなで、もちぬしのほうでは、さつじんのさいについたきずに)

賃金の抵当に預かってあった品で、持主の方では、殺人の際についた傷に

(そういないからべんしょうしろというし、ばあさんのおいは、これがまたばあさんににた)

相違ないから弁償しろというし、婆さんの甥は、これが又婆さんに似た

など

(けちんぼでね、もとからあったきずかもしれないといって、なかなかおうじないのです。)

けちん坊でね、元からあった傷かも知れないといって、却々応じないのです。

(じっさいつまらないもんだいで、へいこうしてるんです。もっともそのびょうぶはかなりねうちの)

実際つまらない問題で、閉口してるんです。尤もその屏風は可也値打ちの

(あるしなものらしいのですけれど。ところで、あなたはよくあのいえへではいり)

ある品物らしいのですけれど。ところで、あなたはよくあの家へ出入り

(されたのですから、そのびょうぶもたぶんごぞんじでしょうか、いぜんにきずがあったか)

されたのですから、その屏風も多分御存じでしょうか、以前に傷があったか

(どうか、ひょっとごきおくじゃないでしょうか。どうでしょう。びょうぶなんかべつに)

どうか、ひょっと御記憶じゃないでしょうか。どうでしょう。屏風なんか別に

(ちゅういしなかったでしょうね。じつはさいとうにもきいてみたんですが、)

注意しなかったでしょうね。実は斎藤にも聞いてみたんですが、

(せんせいこうふんしきっていて、よくわからないのです、それに、じょちゅうはくにへかえって)

先生亢奮し切っていて、よく分らないのです、それに、女中は国へ帰って

(しまって、てがみでといあわせてもようりょうをえないし、ちょっとこまっているのですが・・・」)

了って、手紙で問合わせても要領を得ないし、一寸困っているのですが・・・」

(びょうぶがていとうぶつだったことはほんとうだが、そのほかのてんはむろんつくりばなしに)

屏風が抵当物だったことはほんとうだが、その外の点は無論作り話に

(すぎなかった。ふきやはびょうぶということばにおもわずひやっとした。しかしよく)

過ぎなかった。蕗谷は屏風という言葉に思わずヒヤッとした。併しよく

(きいてみるとなんでもないことなので、すっかりあんしんした。「なにをびくびく)

聞いてみるとなんでもないことなので、すっかり安心した。「何をビクビク

(しているのだ。じけんはもうらくちゃくしておわったのじゃないか」かれはどんなふうに)

しているのだ。事件はもう落着して了ったのじゃないか」彼はどんな風に

(こたえてやろうか、ちょっとしあんしたが、れいによってありのままにやるのが)

答えてやろうか、一寸思案したが、例によってありのままにやるのが

(いちばんいいほうほうのようにかんがえられた。)

一番いい方法の様に考えられた。

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