半七捕物帳 少年少女の死7

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投稿者投稿者さうっちゃんいいね0お気に入り登録
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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 すもさん 5707 A 5.9 95.8% 359.5 2146 94 35 2024/03/01

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問題文

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(「まったくですね」と、わたしもためいきをついた。「こうなると、じてんしゃや)

二 「全くですね」と、わたしも溜息をついた。「こうなると、自転車や

(にぐるまばかりとりしまってもむだですね」)

荷車ばかり取締っても無駄ですね」

(「そうですよ。なんといっても、うわべにみえるものはよけられますが、)

「そうですよ。なんと云っても、うわべに見えるものは避けられますが、

(もうひとつおくにはいっているものはどうにもしようがありますまい。)

もう一つ奥にはいっているものはどうにもしようがありますまい。

(いまおはなしをしたほかに、まだこんなこともありましたよ」)

今お話をしたほかに、まだこんなこともありましたよ」

(はんしちろうじんはさらにこんなはなしをはじめた。)

半七老人は更にこんな話をはじめた。

(けいおうさんねんのできごとである。)

…… 慶応三年の出来事である。

(しば、たまちのだいくのこがきゅうびょうでしんだ。だいくはちょうないのうらながやにすむ)

芝、田町の大工の子が急病で死んだ。大工は町内の裏長屋に住む

(よしごろうというおとこで、そのせがれのよしまつはかぞえどしのむっつであった。)

由五郎という男で、その伜の由松はかぞえ年の六つであった。

(よしまつはしちがつみっかのゆうがたからにわかにかおいろがかわってくるしみだしたので、)

由松は七月三日のゆうがたから俄かに顔色が変って苦しみだしたので、

(ははのおはなはおどろいてちょうないのいしゃをよんできたが、いしゃにもそのようだいが)

母のお花はおどろいて町内の医者をよんで来たが、医者にもその容体が

(たしかにはわからなかった。なにかのものあたりであろうというので、)

確かには判らなかった。なにかの物あたりであろうというので、

(まずかたのごときてあてをほどこしたが、よしまつはてあしがけいれんして、それから)

まず型のごとき手当てを施したが、由松は手足が痙攣して、それから

(はんときばかりののちにいきをひきとった。ちちのよしごろうがしごとばからもどって)

半晌ばかりの後に息を引き取った。父の由五郎が仕事場から戻って

(きたときには、かわいいひとりむすこはもうつめたいなきがらになっていた。)

来たときには、可愛いひとり息子はもう冷たい亡骸になっていた。

(あまりのきょうがくになみだもでないよしごろうは、いきなりにょうぼうのよこっつらをなぐりとばした。)

あまりの驚愕に涙も出ない由五郎は、いきなり女房の横っ面を殴り飛ばした。

(「このひきずりあまめ。ていしゅのるすにきんじょとなりへかなぼうをひいてあるいて、)

「この引き摺り阿魔め。亭主の留守に近所隣へ金棒を曳いてあるいて、

(だいじのこどもをたまなしにしてしまやあがった。さあ、いかしてかえせ」)

大事の子供を玉無しにしてしまやあがった。さあ、生かして返せ」

(よしごろうはふだんからひとなみはずれたこぼんのうでひとつぶだねのよしまつを)

由五郎はふだんから人並みはずれた子煩悩でひと粒種の由松を

(めのなかへいれたいほどにかわいがっていた。そのかわいいこがるすのあいだに)

眼のなかへ入れたいほどに可愛がっていた。その可愛い子が留守の間に

など

(とんしどうようにしんだのであるから、きのはやいしょくにんのかれは、いちずにそれを)

頓死同様に死んだのであるから、気の早い職人の彼は、一途にそれを

(にょうぼうのふちゅういときめてしまって、はんきちがいのようなありさまで)

女房の不注意と決めてしまって、半気違いのようなありさまで

(かのじょにくってかかったのもむりはなかった。)

彼女に食ってかかったのも無理はなかった。

(「さあ、ていしゅのるすにこどもをころして、どうしていいわけをするんだ。)

「さあ、亭主の留守に子供を殺して、どうして言い訳をするんだ。

(はっきりとへんじをしろ」)

はっきりと返事をしろ」

(かれはそこにいあわせたひとたちがとめるのもきかずに、またもやにょうぼうを)

彼はそこに居あわせた人達が止めるのも肯かずに、又もや女房を

(つづけうちにした。さなきだにかわいいこのいのちをふちゅういにうばわれて、)

つづけ打ちにした。さなきだに可愛い子の命を不注意に奪われて、

(これもはんきょうらんのようになっているにょうぼうは、ていしゅにはげしくせめられて、)

これも半狂乱のようになっている女房は、亭主に激しく責められて、

(いよいよかっとぎゃくじょうしたらしい。かのじょはあおざめたかおにふりかかるばらしがみを)

いよいよ赫と逆上したらしい。彼女は蒼ざめた顔にふりかかる散らし髪を

(かきあげながら、ていしゅのまえへてをついた。)

かきあげながら、亭主の前へ手をついた。

(「まことにもうしわけありません。きっとおわびをいたします」)

「まことに申し訳ありません。きっとお詫びをいたします」

(きりこうじょうにこういったかとおもうと、かれははだしでおもてへとびだした。)

切り口上にこう云ったかと思うと、かれは跣足で表へとび出した。

(そのけっそうがただならないとみて、いあわせたひとたちもあとからおってでたが、)

その血相が唯ならないと見て、居あわせた人達もあとから追ってでたが、

(もうおそかった。おおどおりのむこうはたかなわのうみである。あれあれといううちに、)

もう遅かった。大通りの向こうは高輪の海である。あれあれといううちに、

(にょうぼうのうしろすがたはきしからきえてしまった。)

女房のうしろ姿は岸から消えてしまった。

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