女王蜂　鉄壁

(ふいにひとりでこどくをかんじてがけのうえではなたばいだいて)

不意に一人で孤独を感じて　崖の上で花束抱いて

(つまさきだってるのらっかしないすべをおぼえたのがやっと)

爪先立ってるの　落下しない術を覚えたのがやっと

(ようしゃないなまえとあしかせひーるでかぎあなをぶちこわす)

容赦ない名前と足枷　ヒールで鍵穴をぶち壊す

(こえをころしなきはらすようなでぐちもなくいたむまいにちに)

声を殺し泣き腫らすような　出口も無く痛む毎日に

(うばわれるのにはつかれたの)

奪われるのには疲れたの

(あたしがいのることはこれいじょう)

あたしが祈ることは　これ以上

(あたしがあいしたすべてのものにどうかふこうがおとずれませんように)

あたしが愛した全てのものに　どうか不幸が訪れませんように

(ただひたすらいのっているのたとえばなんていってるあいだに)

ただひたすら祈っているの　例えばなんていってる間に

(げんじつになるようなざんこくなひびよめをとじちいさくつぶやいてみるの)

現実になるような残酷な日々よ　目を閉じ小さく呟いてみるの

(なにひとつおくすることなどはないと)

「何一つ臆することなどはないと」

(けんそうにまじってあたしにざんにんなかこがとつぜんとびこんできたとしたら)

喧騒に混じってあたしに残忍な過去が　突然飛び込んで来たとしたら

(いちばんただしいこうどうはどれ？)

一番正しい行動はどれ？

(そのばでひざつきなきじゃくるあたしをみとめていいの？)

その場で膝突き泣きじゃくるあたしを認めていいの？

(なにひとつおくすることなどはないと)

「何一つ臆することなどはないと」

(だれかのことばおぼえてるのおまじないのようにちいさないのりのように)

誰かの言葉覚えてるの　おまじないのように小さな祈りのように

(めをそらさずにかがみをみればいちばんかわいいひとがたってるいつもそうでしょ？)

目を逸らさずに鏡を見れば一番可愛い人がたってる　いつもそうでしょ？

(ひどいかおじゃない！あなたのせいよ！ぶつけるさきにはあたししかいない)

「酷い顔じゃない！あなたのせいよ！」　ぶつける先にはあたししかいない

(ちのあじがするほどわめいてみたけれど)

血の味がする程　喚いてみたけれど

(なにひとつよみがえったりしないしおわったりはじまったりもしない)

何一つ蘇ったりしないし　終わったり始まったりもしない

(ただしさなんていまはなんのやくにもたたない)

正しさなんて今は何の役にも立たない

(ゆるしたいみとめたいじぶんをあいしたいけれど)

許したい　認めたい　自分を愛したいけれど

(だれもがいつかつちにかえるわ)

誰もがいつか土に還るわ

(いきぬいたものをたたえるうつくしいばしょだときくわ)

生き抜いた者を讃える美しい場所だと聞くわ

(いきてゆくことしがまつことは)

生きてゆくこと　死が待つことは

(なによりすばらしいことだれにもうばわせないで)

何より素晴らしいこと　誰にも奪わせないで

(あたしがあいしたすべてのものに)

あたしが愛した全てのものに

(どうかふこうがおとずれませんように)

どうか不幸が訪れませんように

(ただひたすらいのっているの)

ただひたすら祈っているの