夏目漱石 こころ1

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プレイ回数7674難易度(4.5) 3218打 長文
※超長文です。飽きやすい人はプレイしないでください。
夏目漱石の作品「こころ」です。超長い。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 zero 6365 S 6.6 96.0% 485.6 3225 134 50 2024/03/05
2 朝三暮四 5668 A 5.9 95.3% 540.0 3218 157 50 2024/02/25

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問題文

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(じゅういちがつのさむいあめのふるひのことでした。)

十一月の寒い雨の降る日のことでした。

(わたしはがいとうをぬらしてれいのとおりこんにゃくえんまをぬけてほそいさかみちをあがって)

私は外套を濡らして例のとおり蒟蒻閻魔を抜けて細い坂道を上がって

(うちへかえりました。kのへやはがらんどうでしたけれども、)

うちへ帰りました。Kの室はがらんどうでしたけれども、

(ひばちにはつぎたてのひがあたたかそうにもえていました。)

火鉢には継ぎたての火が暖かそうに燃えていました。

(わたしもつめたいてをはやくあかいすみのうえにかざそうとおもって、)

私も冷たい手を早く赤い炭の上にかざそうと思って、

(いそいでじぶんのへやのしきりをあけました。するとわたしのひばちにはつめたいはいが)

急いで自分の室の仕切りを開けました。すると私の火鉢には冷たい灰が

(しろくのこっているだけで、ひだねさえつきているのです。)

白く残っているだけで、火種さえ尽きているのです。

(わたしはきゅうにふゆかいになりました。)

私は急に不愉快になりました。

(そのときわたしのあしおとをきいてでてきたのは、おくさんでした。)

その時私の足音を聞いて出てきたのは、奥さんでした。

(おくさんはだまってへやのまんなかにたっているわたしをみて、きのどくそうに)

奥さんは黙って室の真ん中に立っている私を見て、気の毒そうに

(がいとうをぬがせてくれたり、にほんふくをきせてくれたりしました。)

外套を脱がせてくれたり、日本服を着せてくれたりしました。

(それからわたしがさむいというのをきいて、すぐつぎのまからkのひばちを)

それから私が寒いというのを聞いて、すぐ次の間からKの火鉢を

(もってきてくれました。わたしがkはもうかえったのかとききましたら、)

持ってきてくれました。私がKはもう帰ったのかと聞きましたら、

(おくさんはかえってまたでたとこたえました。)

奥さんは帰ってまた出たと答えました。

(そのひもkはわたしよりおくれてかえるじかんわりだったのですから、わたしはどうしたわけかと)

その日もKは私より遅れて帰る時間割だったのですから、私はどうした訳かと

(おもいました。おくさんはおおかたようじでもできたのだろうといっていました。)

思いました。奥さんはおおかた用事でもできたのだろうと言っていました。

(わたしはしばらくそこにすわったまましょけんをしました。うちのなかがしんとしずまって、)

私はしばらくそこに座ったまま書見をしました。うちの中がしんと静まって、

(だれのはなしごえもきこえないうちに、はつふゆのさむさとわびしさとが、わたしのからだに)

誰の話し声も聞こえないうちに、初冬の寒さと侘しさとが、私の体に

(くいこむようなかんじがしました。わたしはすぐしょもつをふせてたちあがりました。)

食い込むような感じがしました。私はすぐ書物を伏せて立ち上がりました。

(わたしはふとにぎやかなところへいきたくなったのです。あめはやっとあがったようですが)

私はふとにぎやかな所へ行きたくなったのです。雨はやっとあがったようですが

など

(そらはまだつめたいなまりのようにおもくみえたので、わたしはようじんのため、)

空はまだ冷たい鉛のように重く見えたので、私は用心のため、

(じゃのめをかたにかついで、ほうへいこうしょうのうらてのどべいについて)

蛇の目を肩に担いで、砲兵工廠(ほうへいこうしょう)の裏手の土塀について

(ひがしへさかをおりました。そのじぶんはまだどうろのかいせいができてないころなので、)

東へ坂を下りました。その時分はまだ道路の改正ができてない頃なので、

(さかのこうばいがいまよりもずっときゅうでした。どうろもせまくて、ああまっすぐでは)

坂の勾配が今よりもずっと急でした。道路も狭くて、ああ真っすぐでは

(なかったのです。そのうえあのたにへおりると、みなみがたかいたてものでふさがっているのと、)

なかったのです。その上あの谷へ下りると、南が高い建物で塞がっているのと、

(みずはきがよくないのとで、おうらいはどろどろでした。)

放水(みずはき)がよくないのとで、往来はどろどろでした。

(ことにほそいいしばしをわたってやなぎまちのとおりへでるあいだがひどかったのです。)

ことに細い石橋を渡って柳町の通りへ出る間がひどかったのです。

(あしだでもながぐつでもむやみにあるくわけにはゆきません。だれでもみちの)

足駄(あしだ)でも長靴でもむやみに歩く訳にはゆきません。誰でも道の

(まんなかにしぜんとほそくどろがかきわけられたところを、ごしょうだいじにたどっていかなければ)

真ん中に自然と細く泥がかき分けられた所を、後生大事にたどって行かなければ

(ならないのです。そのはばはわずかいち、にしゃくしかないのですから、)

ならないのです。その幅は僅か一、二尺しかないのですから、

(てもなくおうらいにしいてあるおびのうえをふんでむこうへこすのとおなじことです。)

手もなく往来に敷いてある帯の上を踏んで向こうへ越すのと同じことです。

(いくひとはみんないちれつになってそろそろとおりぬけます。わたしはこのほそおびのうえで、)

行く人はみんな一列になってそろそろ通り抜けます。私はこの細帯の上で、

(はたりとkにであいました。あしのほうにばかりきをとられていたわたしは、)

はたりとKに出会いました。足の方にばかり気を取られていた私は、

(かれとむきあうまで、かれのそんざいにまるできがつかずにいたのです。)

彼と向き合うまで、彼の存在にまるで気がつかずにいたのです。

(わたしはふいにじぶんのまえがふさがったのでぐうぜんめをあげたとき、)

私は不意に自分の前が塞がったので偶然目を上げたとき、

(はじめてそこにたっているkをみとめたのです。わたしはkにどこへいったのかと)

初めてそこに立っているKを認めたのです。私はKにどこへ行ったのかと

(ききました。kはちょっとそこまでといったぎりでした。かれのこたえは)

聞きました。Kはちょっとそこまでと行ったぎりでした。彼の答えは

(いつものとおりふんというちょうしでした。kとわたしはほそいおびじょうでからだをかわせました。)

いつものとおりふんという調子でした。Kと私は細い帯上で体を替わせました。

(するとkのすぐうしろにひとりのわかいおんながたっているのがみえました。)

するとKのすぐ後ろに一人の若い女が立っているのが見えました。

(きんがんのわたしには、いままでそれがよくわからなかったのですが、kをやりこしたあとで)

近眼の私には、今までそれがよく分からなかったのですが、Kをやり越した後で

(そのおんなのかおをみると、それがうちのおじょうさんだったので、わたしはすくなからず)

その女の顔を見ると、それがうちのお嬢さんだったので、私は少なからず

(おどろきました。おじょうさんはこころもちうすあかいかおをして、わたしにあいさつをしました。)

驚きました。お嬢さんはこころもち薄赤い顔をして、私に挨拶をしました。

(そのじぶんのそくはつはいまとちがってひさしがでていないのです。)

その時分の束髪(そくはつ)は今と違って廂(ひさし)が出ていないのです。

(そうしてあたまのまんなかにへびのようにぐるぐるまきつけてあったものです。)

そうして頭の真ん中に蛇のようにぐるぐる巻きつけてあったものです。

(わたしはぼんやりとおじょうさんのあたまをみていましたが、つぎのしゅんかんに、どっちかがみちを)

私はぼんやりとお嬢さんの頭を見ていましたが、次の瞬間に、どっちかが道を

(ゆずらなければならないのだということにきがつきました。わたしはおもいきって)

譲らなければならないのだということに気が付きました。私は思い切って

(どろどろのなかへかたあしふんごみました。そうしてひかくてきとおりやすいところをあけて、)

どろどろの中へ片足踏ん込みました。そうして比較的通りやすい所を空けて、

(おじょうさんをわたしてやりました。)

お嬢さんを渡してやりました。

(それからやなぎまちのとおりへでたわたしはどこへいっていいかじぶんにも)

それから柳町の通りへ出た私はどこへ行っていいか自分にも

(わからなくなりました。どこへいってもおもしろくないようなこころもちがするのです。)

分からなくなりました。どこへ行っても面白くないような心持ちがするのです。

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