Rapunzel

(ゆかにころがるすなどけい)

床に転がる砂時計

(おれまがったびょうしん)

折れ曲がった秒針

(はぐるまのはずれたふりこ)

歯車の外れた振り子

(そう)

そう

(ときをきざむくろかみ)

時を刻む黒髪

(なみにたゆたうりきゅうに)

波にたゆたう離宮に

(しまいこんだあした)

しまい込んだ明日

(ひはのぼりまたしずめど)

陽は昇りまた沈めど

(ふりつもるだけのきょう)

降り積もるだけの今日

(ときをとめたのは)

時を止めたのは

(しょうじょじしんでしたなにもほしくない)

少女自身でした(ナニモホシクナイ)

(なにもなくしたくない)

"何も失くしたくない"

(おとなになることこばんだ)

大人になること拒んだ

(それでもしょうじょに)

それでも少女に

(すなはおちる)

"砂は落ちる"

(ながいかみをとき)

長い髪を解き

(ながれたじかんにさからうように)

流れた時間に逆らうように

(かみをきる)

髪を切る

(なみだがつくるときのすきま)

涙が作る時の隙間

(しずかにしずんでいく)

静かに沈んでいく

(たかくそびえるじょうへき)

高く聳える城壁

(あすのないめいきゅう)

明日のない迷宮

(ふりだしにつづくらせん)

振り出しに続く螺旋

(そう)

そう

(かたにゆれるくろかみ)

肩に揺れる黒髪

(なみにゆらめくゆりかご)

波に揺らめく揺り籠

(ふくらみゆくそのむね)

膨らみゆくその胸

(つきにすがたをかえれど)

月に姿を変えれど

(くりかえすだけのきょう)

繰り返すだけの今日

(ひとみとじたのは)

瞳閉じたのは

(しょうじょじしんでしたなにもみたくない)

少女自身でした(ナニモミタクナイ)

(なにもわすれたくない)

"何も忘れたくない"

(かこになることおそれた)

過去になること恐れた

(それでもしょうじょに)

それでも少女に

(はりはすすむ)

"針は進む"

(ゆかにちらばった)

床に散らばった

(きょうからこぼれてかこになった)

今日から零れて過去になった

(かみをすく)

髪を梳く

(つきがさえぎるなみだのあと)

月が遮る涙の跡

(しずかにきざんでいく)

静かに刻んでいく

(ささやくうたごえ)

囁く歌声

(とおいひのきょうにきいたははのこもりうた)

遠い日の今日に聞いた母の子守歌

(なみだがつくるときのすきま)

涙が作る時の隙間

(しずかにしずんでいく)

静かに沈んでいく