坊ちゃん(17)

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夏目漱石の坊ちゃん(17)です。

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問題文

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(てんぷらそばもうちへかえって、ひとばんねたらそんなにかんしゃくにさわらなくなった。)

天麩羅蕎麦もうちへ帰って、一晩寝たらそんなに肝癪に障らなくなった。

(がっこうへでてみると、せいともでている。なんだかわけがわからない。)

学校へ出てみると、生徒も出ている。何だか訳が分らない。

(それからみっかばかりはぶじであったが、)

それから三日ばかりは無事であったが、

(よっかめのばんにすみたというところへいってだんごをくった。)

四日目の晩に住田と云う所へ行って団子を食った。

(このすみたというところはおんせんのあるまちでじょうかからきしゃだとじゅっぷんばかり、)

この住田と云う所は温泉のある町で城下から汽車だと十分ばかり、

(あるいてさんじゅっぷんでいかれる、りょうりやもおんせんやども、こうえんもあるうえにゆうかくがある。)

歩いて三十分で行かれる、料理屋も温泉宿も、公園もある上に遊郭がある。

(おれのはいっただんごやはゆうかくのいりぐちにあって、)

おれのはいった団子屋は遊廓の入口にあって、

(たいへんうまいというひょうばんだから、おんせんにいったかえりがけにちょっとくってみた。)

大変うまいという評判だから、温泉に行った帰りがけにちょっと食ってみた。

(こんどはせいとにもあわなかったから、だれもしるまいとおもって、)

今度は生徒にも逢わなかったから、誰も知るまいと思って、

(いちじかんめのきょうじょうへはいるとだんごにさらななせんとかいてある。)

一時間目の教場へはいると団子二皿七銭と書いてある。

(じっさいおれはにさらくってななせんはらった。どうもやっかいなやつらだ。)

実際おれは二皿食って七銭払った。どうも厄介な奴等だ。

(にじかんめにもきっとなにかあるとおもうとゆうかくのだんごうまいうまいとかいてある。)

二時間目にもきっと何かあると思うと遊廓の団子旨い旨いと書いてある。

(あきれかえったやつらだ。)

あきれ返った奴等だ。

(だんごがそれですんだとおもったらこんどはあかてぬぐいというのがひょうばんになった。)

団子がそれで済んだと思ったら今度は赤手拭と云うのが評判になった。

(なんのことだとおもったら、つまらないらいれきだ。)

何の事だと思ったら、つまらない来歴だ。

(おれはここへきてから、まいにちすみたのおんせんへいくことにきめている。)

おれはここへ来てから、毎日住田の温泉へ行く事に極めている。

(ほかのところはなにをみてもとうきょうのあしもとにもおよばないがおんせんだけはりっぱなものだ。)

ほかの所は何を見ても東京の足元にも及ばないが温泉だけは立派なものだ。

(せっかくきたものだからまいにちはいってやろうというきで、)

せっかく来た者だから毎日はいってやろうという気で、

(ばんめしまえにうんどうかたがたでかかる。)

晩飯前に運動かたがた出掛る。

(ところがいくときはかならずせいようてぬぐいのおおきなやつをぶらさげていく。)

ところが行くときは必ず西洋手拭の大きな奴をぶら下げて行く。

など

(このてぬぐいがゆにそまったうえへ、あかいしまがながれだしたので)

この手拭が湯に染った上へ、赤い縞が流れ出したので

(ちょっとみるとべにいろにみえる。)

ちょっと見ると紅色に見える。

(おれはこのてぬぐいをいきもかえりも、きしゃにのってもあるいても、)

おれはこの手拭を行きも帰りも、汽車に乗ってもあるいても、

(つねにぶらさげている。それでせいとがおれのことをあかてぬぐいあかてぬぐいというんだそうだ。)

常にぶら下げている。それで生徒がおれの事を赤手拭赤手拭と云うんだそうだ。

(どうもせまいとちにすんでるとうるさいものだ。まだある。)

どうも狭い土地に住んでるとうるさいものだ。まだある。

(おんせんはさんかいのしんちくでじょうとうはゆかたをかして、ながしをつけてはっせんですむ。)

温泉は三階の新築で上等は浴衣をかして、流しをつけて八銭で済む。

(そのうえにおんながてんもくへちゃをのせてだす。おれはいつでもじょうとうへはいった。)

その上に女が天目へ茶を載せて出す。おれはいつでも上等へはいった。

(するとよんじゅうえんのげっきゅうでまいにちじょうとうへはいるのはぜいたくだといいだした。)

すると四十円の月給で毎日上等へはいるのは贅沢だと云い出した。

(よけいなおせわだ。まだある。)

余計なお世話だ。まだある。

(ゆつぼははみかげいしをたたみあげて、じゅうごじょうじきぐらいのひろさにしきってある。)

湯壺は花崗石を畳み上げて、十五畳敷ぐらいの広さに仕切ってある。

(たいていはじゅうさんよにんつかってるがたまにはだれもいないことがある。)

大抵は十三四人漬ってるがたまには誰も居ない事がある。

(ふかさはたってちちのへんまであるから、)

深さは立って乳の辺まであるから、

(うんどうのために、ゆのなかをおよぐのはなかなかゆかいだ。)

運動のために、湯の中を泳ぐのはなかなか愉快だ。

(おれはひとのいないのをみすましてはじゅうごじょうのゆつぼをおよぎまわってよろこんでいた。)

おれは人の居ないのを見済しては十五畳の湯壺を泳ぎ巡って喜んでいた。

(ところがあるひさんがいからいせいよくおりて)

ところがある日三階から威勢よく下りて

(きょうもおよげるかなとざくろぐちをのぞいてみると、)

今日も泳げるかなとざくろ口を覗いてみると、

(おおきなふだへくろぐろとゆのなかでおよぐべからずとかいてはりつけてある。)

大きな札へ黒々と湯の中で泳ぐべからずとかいて貼りつけてある。

(ゆのなかでおよぐものは、あまりあるまいから、)

湯の中で泳ぐものは、あまりあるまいから、

(このはりふだはおれのためにとくべつにしんちょうしたのかもしれない。)

この貼札はおれのために特別に新調したのかも知れない。

(おれはそれからおよぐのはだんねんした。)

おれはそれから泳ぐのは断念した。

(およぐのはだんねんしたが、がっこうへでてみると、)

泳ぐのは断念したが、学校へ出てみると、

(れいのとおりこくばんにゆのなかでおよぐべからずとかいてあるにはおどろいた。)

例の通り黒板に湯の中で泳ぐべからずと書いてあるには驚ろいた。

(なんだかせいとぜんたいがおれひとりをたんていしているようにおもわれた。くさくさした。)

何だか生徒全体がおれ一人を探偵しているように思われた。くさくさした。

(せいとがなにをいったって、やろうとおもったことをやめるようなおれではないが、)

生徒が何を云ったって、やろうと思った事をやめるようなおれではないが、

(なんでこんなせまくるしいはなのさきがつかえるようなところへきたのかとおもうとなさけなくなった)

何でこんな狭苦しい鼻の先がつかえるような所へ来たのかと思うと情なくなった

(それでうちへかえるとあいかわらずこっとうせめである。)

それでうちへ帰ると相変らず骨董責である。

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