偉人たちのラブレター＃4

(めありーすかーろっくへ)

―メアリー・スカーロックへ

(まだむ、)

マダム、

(さいあいのじょせいにくるしみではなくよろこびをあたえておちかづきになるのに)

最愛の女性に苦しみではなく喜びを与えてお近づきになるのに、

(いったいどんなことばであなたをよべばいいのでしょう？)

いったいどんな言葉であなたを呼べばいいのでしょう？

(あなたのまえにいないときわたしはざわめきたっているばかり。)

あなたの前にいないとき、私はざわめきたっているばかり。

(あなたといるときにもあんなにきょりをおいてあしらわれるせいで)

あなたといるときにもあんなに距離を置いてあしらわれるせいで、

(いまこのしゅんかんにもわたしはすっかりうつろになり)

今この瞬間にも私はすっかりうつろになり、

(そのみりょくにちかづいてはならぬのだというきもちがたかまるばかりなのです。)

その魅力に近づいてはならぬのだという気持ちが高まるばかりなのです。

(かんけつにいうとするならば、)

簡潔にいうとするならば、

(あなたはみにつけておられるおうぎかめんてぶくろのどれかを)

あなたは身につけておられる扇、仮面、手袋のどれかを

(わたしにくださらなくてはいけません。)

私にくださらなくてはいけません。

(でなければわたしはいきてなどいられません。)

でなければ、私は生きてなどいられません。

(そうでもしないとあなたのてにきすをしてしまうかもしれませんし、)

そうでもしないとあなたの手にキスをしてしまうかもしれませんし、

(つぎにあなたのとなりにすわるときはんかちをぬすんでしまうかもしれません。)

次にあなたの隣に座るとき、ハンカチを盗んでしまうかもしれません。

(すぐにてにいれるには、あなたのそんざいはあまりにもおおきなめぐみです。)

すぐに手に入れるには、あなたの存在はあまりにも大きな恵みです。

(ですからわたしはすこしずつそのためにそなえこのおおきなおくりものに)

ですから私は少しずつそのためにそなえ、この大きな贈り物に、

(よろこびのあまりこころのみだれることのないようにしなくてはなりません。)

喜びのあまり心の乱れることのないようにしなくてはなりません。

(しんあいなるみすすかーろっく)

親愛なるミス・スカーロック、

(わたしはもうこのなまえであなたをよぶことなどうんざりなのです。)

私はもうこの名前であなたを呼ぶことなどうんざりなのです。

(ですからどうかそのひがいつくるのかおしえてくださいませんか。)

ですから、どうかその日がいつ来るのか教えて下さいませんか。