稲葉浩志 / 透明人間

(とうめいにんげんみたいにどこでもゆける)

透明人間みたいに　どこでもゆける

(うらやましいだろ)

うらやましいだろ

(きょうしつのなかでもろうかをはしっても)

教室の中でも　廊下を走っても

(みんなみてないみたい)

みんな見てないみたい

(なんてじゆうなんだろなみのないうみ)

なんて自由なんだろ　波のない海

(だれかぼくのなまえをよんで)

だれか僕の名前を呼んで

(だれでもかまわないよはやく)

だれでもかまわないよ　早く

(きょうはやけにあついひだよねのどはかわいてる)

今日はやけに暑い日だよね　喉は渇いてる

(でんごんはありませんか？)

伝言はありませんか？

(しょうてんがいをあるいてばすにのりこんでも)

商店街を歩いて　バスに乗り込んでも

(なにもおきないよ)

何も起きないよ

(しってるひとはなんにんかすれちがったけれど)

知ってる人は何人か　すれちがったけれど

(みてるのはかめらだけ)

見てるのはカメラだけ

(ずぼんのぽけっとのないふはすこしひんやり)

ズボンのポケットのナイフは少しひんやり

(だれかぼくのなまえをよんで)

だれか僕の名前を呼んで

(だれでもかまわないよはやく)

だれでもかまわないよ　早く

(このしゃつをぬぎすててみたい)

このシャツを脱ぎ捨ててみたい

(そらにほうりなげたい)

空にほうり投げたい

(でんごんはありませんか？)

伝言はありませんか？

(まよなかにめがさめてんじょうにてをのばす)

真夜中に目が覚め　天井に手をのばす

(だれかぼくのなまえをよんで)

だれか僕の名前を呼んで

(だれでもかまわないよはやく)

だれでもかまわないよ　早く

(けしきはぜんぶゆがんでゆくよ)

景色はぜんぶゆがんでゆくよ

(ねつにうなされて)

熱にうなされて

(おかあさんぼくはあのときひかりをめざして)

おかあさん　僕はあの時光をめざして

(さいこうのせかいをゆめにみながら)

最高の世界を夢に見ながら

(せいいっぱいあなたのうみをおよいだよ)

せいいっぱいあなたの海を泳いだよ

(そしてもうどこかにいきたい)

そしてもうどこかに行きたい

(せかいよぼくのおもいどおりになれ)

世界よ僕の思い通りになれ

(いつかぼくのおもいどおりにおもいどおりになれ)

いつか僕の思い通りに　思い通りになれ