一縷

(うんめいはどこからともなくやってきてこのほほかすめる)

運命はどこからともなく　やってきてこの頬かすめる

(ふれられたらさいごあらがうことさえできないとしりながら)

触れられたら最後　抗うことさえできないと知りながら

(きずだらけでかわをのぼってくあのさかなたちのように)

傷だらけで川を上ってく　あの魚たちのように

(わたしたちにのこされたもがきかたなどいくつもなくて)

私たちに残されたもがき方など　いくつもなくて

(ゆめだけじゃいきてゆけないからとかきあつめたげんじつも)

夢だけじゃ生きてゆけないからと　かき集めた現実も

(いまじゃもうさびつきわたしのなかかたくにぶくしずんだまま)

今じゃもう錆びつき私の中　硬く鈍く沈んだまま

(でもねせめてこれくらいはもっていてもねぇいいでしょう？)

でもね　せめて　これくらいは持っていても　ねぇいいでしょう？

(だいそれたきぼうなんかじゃなくだれもきづかないほどの)

大それた希望なんかじゃなく　誰も気づかないほどの

(ちいさなひかり)

小さな光

(かなしみはなにげないかおでこちらをみるだけなにもいわず)

悲しみは　何気ない顔で　こちらを見るだけ　何も言わず

(かがみのようにわたしのこころがかたむくほうがくをしりたげに)

鏡のように　私の心が傾く方角を　知りたげに

(なみだもことばもわらいもおえつもでないようなこころ)

涙も　言葉も　笑いも　嗚咽も　出ないような心

(ひとはいまだなまえもつけられずにおよがしつづける)

人はいまだ　名前もつけられずに　泳がし続ける

(ゆめだけじゃいきてゆけないからとなもしらぬだれかのことばに)

「夢だけじゃ生きてゆけないから」と　名も知らぬ誰かの言葉に

(どれだけこころをひたそうともわたしのめをじっとみつづけるすがた)

どれだけ心を浸そうとも　私の眼をじっと　見続ける姿

(わたしのゆめがどっかでまいごになっても)

私の夢がどっかで　迷子になっても

(こっちだよってわかるくらいのひかりになるよ)

「こっちだよ」ってわかる　くらいの光になるよ

(つちのはてたこうやでひとはなにをみるだろう)

土の果てた荒野で　人は何を見るだろう

(だれよりもここだよといちばんかがやくほしを)

誰よりも「ここだよ」と一番輝く星を

(きっとみあげてつぎのうんめいをそのてで)

きっと見上げて　次の運命を　その手で

(たぐるだろう)

手操るだろう