「こころ」1-26 夏目漱石

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プレイ回数583難易度(4.5) 2304打 長文 長文モード可
(上)先生と私
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7523 7.7 97.2% 292.3 2264 65 45 2024/04/06
2 ヤス 6981 S++ 7.2 96.0% 315.1 2295 95 45 2024/03/29
3 まめぞう 6303 S 6.5 95.9% 351.7 2315 98 45 2024/04/21
4 BEASTななせ 6297 S 6.6 94.8% 351.7 2342 127 45 2024/05/17
5 レイコ 4556 C++ 4.6 98.4% 496.0 2295 35 45 2024/04/01

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問題文

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(わたくしはかしこまったままたばこをのんでいた。)

私は畏まったまま煙草を飲んでいた。

(おくさんがちゃのまでなにかげじょにはなしているこえがきこえた。)

奥さんが茶の間で何か下女に話している声が聞こえた。

(しょさいはちゃのまのえんがわをつきあたっておれまがったかどにあるので、)

書斎は茶の間の縁側を突き当たって折れ曲がった角にあるので、

(むねのいちからいうと、ざしきよりもかえってかけはなれたしずかさをりょうしていた。)

棟の位置からいうと、座敷よりもかえって掛け離れた静かさを領していた。

(ひとしきりでおくさんのはなしごえがやむと、あとはしんとした。)

ひとしきりで奥さんの話し声が已むと、後はしんとした。

(わたくしはどろぼうをまちうけるようなこころもちで、じっとしながらきをどこかにくばった。)

私は泥棒を待ち受けるような心持で、凝としながら気をどこかに配った。

(さんじゅっぷんほどすると、おくさんがまたしょさいのいりぐちへかおをだした。)

三十分ほどすると、奥さんがまた書斎の入口へ顔を出した。

(「おや」といって、かるくおどろいたときのめをわたくしにむけた。)

「おや」といって、軽く驚いた時の眼を私に向けた。

(そうしてきゃくにきたひとのようにしかつめらしくひかえているわたくしをおかしそうにみた。)

そうして客に来た人のように鹿爪らしく控えている私をおかしそうに見た。

(「それじゃきゅうくつでしょう」)

「それじゃ窮屈でしょう」

(「いえ、きゅうくつじゃありません」)

「いえ、窮屈じゃありません」

(「でもたいくつでしょう」)

「でも退屈でしょう」

(「いいえ。どろぼうがくるかとおもってきんちょうしているからたいくつでもありません」)

「いいえ。泥棒が来るかと思って緊張しているから退屈でもありません」

(おくさんはてにこうちゃぢゃわんをもったまま、わらいながらそこにたっていた。)

奥さんは手に紅茶茶碗を持ったまま、笑いながらそこに立っていた。

(「ここはすみっこだからばんをするにはよくありませんね」)

「ここは隅っこだから番をするには好くありませんね」

(とわたくしがいった。)

と私がいった。

(「じゃしつれいですがもっとまんなかへでてきてちょうだい。)

「じゃ失礼ですがもっと真中へ出て来て頂戴。

(ごたいくつだろうとおもって、おちゃをいれてもってきたんですが、)

ご退屈だろうと思って、お茶を入れて持って来たんですが、

(ちゃのまでよろしければあちらであげますから」)

茶の間で宜しければあちらで上げますから」

(わたくしはおくさんのあとについてしょさいをでた。)

私は奥さんの後に尾いて書斎を出た。

など

(ちゃのまにはきれいなながひばちにてつびんがなっていた。)

茶の間にはきれいな長火鉢に鉄瓶が鳴っていた。

(わたくしはそこでちゃとかしのごちそうになった。)

私はそこで茶と菓子のご馳走になった。

(おくさんはねられないといけないといって、ちゃわんにてをふれなかった。)

奥さんは寝られないといけないといって、茶碗に手を触れなかった。

(「せんせいはやっぱりときどきこんなかいへおでかけになるんですか」)

「先生はやっぱり時々こんな会へお出掛けになるんですか」

(「いいえめったにでたことはありません。ちかごろはだんだんひとのかおをみるのが)

「いいえ滅多に出た事はありません。近頃は段々人の顔を見るのが

(きらいになるようです」)

嫌いになるようです」

(こういったおくさんのようすに、べつだんこまったものだというふうもみえなかったので、)

こういった奥さんの様子に、別段困ったものだという風も見えなかったので、

(わたくしはついだいたんになった。)

私はつい大胆になった。

(「それじゃおくさんだけがれいがいなんですか」)

「それじゃ奥さんだけが例外なんですか」

(「いいえわたしもきらわれているひとりなんです」)

「いいえ私も嫌われている一人なんです」

(「そりゃうそです」とわたくしがいった。)

「そりゃ嘘です」と私がいった。

(「おくさんじしんうそとしりながらそうおっしゃるんでしょう」)

「奥さん自身嘘と知りながらそうおっしゃるんでしょう」

(「なぜ」)

「なぜ」

(「わたくしにいわせると、おくさんがすきになったからせけんがきらいになるんですもの」)

「私にいわせると、奥さんが好きになったから世間が嫌いになるんですもの」

(「あなたはがくもんをするかただけあって、なかなかおじょうずね。)

「あなたは学問をする方だけあって、なかなかお上手ね。

(からっぽなりくつをつかいこなすことが。よのなかがきらいになったから、)

空っぽな理屈を使いこなす事が。世の中が嫌いになったから、

(わたしまでもきらいになったんだともいわれるじゃありませんか。)

私までも嫌いになったんだともいわれるじゃありませんか。

(それとおんなじりくつで」)

それと同なじ理屈で」

(「りょうほうともいわれることはいわれますが、このばあいはわたくしのほうがただしいのです」)

「両方ともいわれる事はいわれますが、この場合は私の方が正しいのです」

(「ぎろんはいやよ。よくおとこのかたはぎろんだけなさるのね、おもしろそうに。)

「議論はいやよ。よく男の方は議論だけなさるのね、面白そうに。

(からのさかずきでよくあああきずにけんしゅうができるとおもいますわ」)

空の盃でよくああ飽きずに献酬ができると思いますわ」

(おくさんのことばはすこしてひどかった。しかしそのことばのみみざわりからいうと、)

奥さんの言葉は少し手痛かった。しかしその言葉の耳障からいうと、

(けっしてもうれつなものではなかった。じぶんにずのうのあることをあいてにみとめさせて、)

決して猛烈なものではなかった。自分に頭脳のある事を相手に認めさせて、

(そこにいっしゅのほこりをみいだすほどにおくさんはげんだいてきでなかった。)

そこに一種の誇りを見出すほどに奥さんは現代的でなかった。

(おくさんはそれよりもっとそこのほうにしずんだこころをだいじにしているらしくみえた。)

奥さんはそれよりもっと底の方に沈んだ心を大事にしているらしく見えた。

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