「こころ」1-38 夏目漱石

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(上)先生と私
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7401 7.6 96.8% 281.7 2154 69 40 2024/04/09
2 りく 6072 A++ 6.2 97.1% 358.5 2242 65 40 2024/03/21
3 ヤス 5512 A 5.7 95.8% 377.9 2178 95 40 2024/04/01
4 kanta 5194 B+ 5.4 95.3% 395.0 2158 106 40 2024/04/07
5 レイコ 4603 C++ 4.7 97.9% 462.9 2177 46 40 2024/04/13

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問題文

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(わたくしはこころのうちで、ちちとせんせいとをひかくしてみた。)

私は心のうちで、父と先生とを比較して見た。

(りょうほうともせけんからみれば、いきているかしんでいるかわからないほど)

両方とも世間から見れば、生きているか死んでいるか分らないほど

(おとなしいおとこであった。)

大人しい男であった。

(ひとにみとめられるというてんからいえばどっちもれいであった。)

他に認められるという点からいえばどっちも零であった。

(それでいて、このしょうぎをさしたがるちちは、たんなるごらくのあいてとしても)

それでいて、この将棋を差したがる父は、単なる娯楽の相手としても

(わたくしにはものたりなかった。)

私には物足りなかった。

(かつてゆうきょうのためにゆききをしたおぼえのないせんせいは、)

かつて遊興のために往来をした覚えのない先生は、

(かんらくのつきあいからでるしたしみいじょうに、いつかわたくしのあたまにえいきょうをあたえていた。)

歓楽の交際から出る親しみ以上に、いつか私の頭に影響を与えていた。

(ただあたまというのはあまりにひややかすぎるから、わたくしはむねといいなおしたい。)

ただ頭というのはあまりに冷やか過ぎるから、私は胸といい直したい。

(にくのなかにせんせいのちからがくいこんでいるといっても、)

肉のなかに先生の力が喰い込んでいるといっても、

(ちのなかにせんせいがながれているといっても、)

血のなかに先生が流れているといっても、

(そのときのわたくしにはすこしもこちょうでないようにおもわれた。)

その時の私には少しも誇張でないように思われた。

(わたくしはちちがわたくしのほんとうのちちであり、せんせいはまたいうまでもなく、)

私は父が私の本当の父であり、先生はまたいうまでもなく、

(あかのたにんであるというめいはくなじじつを、ことさらにめのまえにならべてみて、)

あかの他人であるという明白な事実を、ことさらに眼の前に並べてみて、

(はじめておおきなしんりでもはっけんしたかのごとくにおどろいた。)

始めて大きな真理でも発見したかのごとくに驚いた。

(わたくしがのつそつしだすとぜんごして、ちちやははのめにもいままでめずらしかったわたくしが)

私がのつそつし出すと前後して、父や母の眼にも今まで珍しかった私が

(だんだんちんぷになってきた。)

段々陳腐になって来た。

(これはなつやすみなどにくにへかえるだれでもがいちようにけいけんするこころもちだろうとおもうが、)

これは夏休みなどに国へ帰る誰でもが一様に経験する心持だろうと思うが、

(とうざのいっしゅうかんぐらいはしたにもおかないように、ちやほやもてなされるのに、)

当座の一週間ぐらいは下にも置かないように、ちやほや歓待されるのに、

(そのとうげをていきどおりとおりこすと、あとはそろそろかぞくのねつがさめてきて、)

その峠を定期通り通り越すと、あとはそろそろ家族の熱が冷めて来て、

など

(しまいにはあってもなくってもかまわないもののようにそまつにとりあつかわれがちに)

しまいには有っても無くっても構わないもののように粗末に取り扱われがちに

(なるものである。)

なるものである。

(わたくしもたいざいちゅうにそのとうげをとおりこした。)

私も滞在中にその峠を通り越した。

(そのうえわたくしはくにへかえるたびに、ちちにもははにもわからないへんなところを)

その上私は国へ帰るたびに、父にも母にも解らない変なところを

(とうきょうからもってかえった。)

東京から持って帰った。

(むかしでいうと、じゅしゃのいえへきりしたんのにおいをもちこむように、)

昔でいうと、儒者の家へ切支丹の臭いを持ち込むように、

(わたくしのもってかえるものはちちともははともちょうわしなかった。)

私の持って帰るものは父とも母とも調和しなかった。

(むろんわたくしはそれをかくしていた。)

無論私はそれを隠していた。

(けれどももともとみについているものだから、だすまいとおもっても、)

けれども元々身に着いているものだから、出すまいと思っても、

(いつかそれがちちやははのめにとまった。)

いつかそれが父や母の眼に留まった。

(わたくしはついおもしろくなくなった。はやくとうきょうへかえりたくなった。)

私はつい面白くなくなった。早く東京へ帰りたくなった。

(ちちのびょうきはさいわいげんじょういじのままで、すこしもわるいほうへすすむもようはみえなかった。)

父の病気は幸い現状維持のままで、少しも悪い方へ進む模様は見えなかった。

(ねんのためにわざわざとおくからそうとうのいしゃをまねいたりして、)

念のためにわざわざ遠くから相当の医者を招いたりして、

(しんちょうにしんさつしてもらってもやはりわたくしのしっているいじょうに)

慎重に診察してもらってもやはり私の知っている以上に

(いじょうはみとめられなかった。)

異常は認められなかった。

(わたくしはふゆやすみのつきるすこしまえにくにをたつことにした。)

私は冬休みの尽きる少し前に国を立つ事にした。

(たつといいだすと、にんじょうはみょうなもので、ちちもははもはんたいした。)

立つといい出すと、人情は妙なもので、父も母も反対した。

(「もうかえるのかい、まだはやいじゃないか」とははがいった。)

「もう帰るのかい、まだ早いじゃないか」と母がいった。

(「まだし、ごにちいてもまにあうんだろう」とちちがいった。)

「まだ四、五日いても間に合うんだろう」と父がいった。

(わたくしはじぶんのきめたしゅったつのひをうごかさなかった。)

私は自分の極めた出立の日を動かさなかった。

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