「こころ」1-39 夏目漱石

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(上)先生と私
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7710 7.8 97.7% 329.3 2598 59 49 2024/04/09
2 ヤス 7405 7.7 95.4% 340.3 2647 127 49 2024/04/01
3 りく 6183 A++ 6.3 97.5% 420.8 2669 67 49 2024/03/22
4 5152 B+ 5.2 98.5% 498.0 2603 37 49 2024/04/04
5 kkk 3675 D+ 3.9 94.5% 695.7 2714 157 49 2024/04/06

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問題文

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(とうきょうへかえってみると、まつかざりはいつかとりはらわれていた。)

東京へ帰ってみると、松飾はいつか取り払われていた。

(まちはさむいかぜのふくにまかせて、どこをみてもこれというほどの)

街は寒い風の吹くに任せて、どこを見てもこれというほどの

(しょうがつめいたけしきはなかった。)

正月めいた景色はなかった。

(わたくしはさっそくせんせいのうちへかねをかえしにいった。)

私は早速先生のうちへ金を返しに行った。

(れいのしいたけもついでにもっていった。)

例の椎茸もついでに持って行った。

(ただだすのはすこしへんだから、ははがこれをさしあげてくれといいましたと)

ただ出すのは少し変だから、母がこれを差し上げてくれといいましたと

(わざわざことわっておくさんのまえへおいた。)

わざわざ断って奥さんの前へ置いた。

(しいたけはあたらしいかしおりにいれてあった。)

椎茸は新しい菓子折に入れてあった。

(ていねいにれいをのべたおくさんは、つぎのまへたつとき、そのおりをもってみて、)

鄭寧に例を述べた奥さんは、次の間へ立つ時、その折を持って見て、

(かるいのにおどろかれたのか、)

軽いのに驚かれたのか、

(「こりゃなにのおかし」ときいた。)

「こりゃ何の御菓子」と聞いた。

(おくさんはこんいになると、こんなところにきわめてたんぱくなこどもらしいこころをみせた。)

奥さんは懇意になると、こんなところに極めて淡泊な子供らしい心を見せた。

(ふたりともちちのびょうきについて、いろいろけねんのといをくりかえしてくれたなかに、)

二人とも父の病気について、色々掛念の問いを繰り返してくれた中に、

(せんせいはこんなことをいった。)

先生はこんな事をいった。

(「なるほどようだいをきくと、いまがいまどうということもないようですが、)

「なるほど容体を聞くと、今が今どうという事もないようですが、

(びょうきがびょうきだからよほどきをつけないといけません」)

病気が病気だからよほど気を付けないといけません」

(せんせいはじんぞうのやまいについてわたくしのしらないことをおおくしっていた。)

先生は腎臓の病について私の知らない事を多く知っていた。

(「じぶんでびょうきにかかっていながら、きがつかないでへいきでいるのが)

「自分で病気に罹っていながら、気が付かないで平気でいるのが

(あのやまいのとくしょくです。わたしのしったあるしかんは、とうとうそれでやられたが、)

あの病の特色です。私の知ったある士官は、とうとうそれでやられたが、

(まったくうそのようなしにかたをしたんですよ。なにしろそばにねていたさいくんが)

全く嘘のような死に方をしたんですよ。何しろ傍に寝ていた細君が

など

(かんびょうをするひまもなんにもないくらいなんですからね。)

看病をする暇も何にもないくらいなんですからね。

(よなかにちょっとくるしいといって、さいくんをおこしたぎり、あくるあさはもう)

夜中にちょっと苦しいといって、細君を起したぎり、翌る朝はもう

(しんでいたんです。しかもさいくんはおっとがねているとばかりおもってたんだって)

死んでいたんです。しかも細君は夫が寝ているとばかり思ってたんだって

(いうんだから」)

いうんだから」

(いままでらくてんてきにかたむいていたわたくしはきゅうにふあんになった。)

今まで楽天的に傾いていた私は急に不安になった。

(「わたくしのおやじもそんなになるでしょうか。ならんともいえないですね」)

「私の父もそんなになるでしょうか。ならんともいえないですね」

(「いしゃはなんというのです」)

「医者は何というのです」

(「いしゃはとてもなおらないといんです。けれどもとうぶんのところ)

「医者は到底治らないといんです。けれども当分のところ

(しんぱいはあるまいともいうんです」)

心配はあるまいともいうんです」

(「それじゃいいでしょう。いしゃがそういうなら。わたしのいまはなしたのはきがつかずに)

「それじゃ好いでしょう。医者がそういうなら。私の今話したのは気が付かずに

(いたひとのことで、しかもそれがずいぶんらんぼうなぐんじんなんだから」)

いた人の事で、しかもそれがずいぶん乱暴な軍人なんだから」

(わたくしはややあんしんした。わたくしのへんかをじっとみていたせんせいは、それからこうつけたした。)

私はやや安心した。私の変化を凝と見ていた先生は、それからこう付け足した。

(「しかしにんげんはけんこうにしろびょうきにしろ、どっちにしてももろいものですね。)

「しかし人間は健康にしろ病気にしろ、どっちにしても脆いものですね。

(いつどんなことでどんなしにようをしないともかぎらないから」)

いつどんな事でどんな死にようをしないとも限らないから」

(「せんせいもそんなことをかんがえておいでですか」)

「先生もそんな事を考えてお出ですか」

(「いくらじょうぶのわたしでも、まんざらかんがえないこともありません」)

「いくら丈夫の私でも、満更考えない事もありません」

(せんせいのくちもとにはびしょうのかげがみえた。)

先生の口元には微笑の影が見えた。

(「よくころりとしぬひとがあるじゃありませんか。しぜんに。)

「よくころりと死ぬ人があるじゃありませんか。自然に。

(それからあっとおもうまにしぬひともあるでしょう。ふしぜんなぼうりょくで」)

それからあっと思う間に死ぬ人もあるでしょう。不自然な暴力で」

(「ふしぜんなぼうりょくってなんですか」)

「不自然な暴力って何ですか」

(「なんだかそれはわたしにもわからないが、じさつするひとはみんなふしぜんなぼうりょくを)

「何だかそれは私にも解らないが、自殺する人はみんな不自然な暴力を

(つかうんでしょう」)

使うんでしょう」

(「するところされるのも、やはりふしぜんなぼうりょくのおかげですね」)

「すると殺されるのも、やはり不自然な暴力のお蔭ですね」

(「ころされるほうはちっともかんがえていなかった。なるほどそういえばそうだ」)

「殺される方はちっとも考えていなかった。なるほどそういえばそうだ」

(そのひはそれでかえった。かえってからもちちのびょうきはそれほどくにならなかった。)

その日はそれで帰った。帰ってからも父の病気はそれほど苦にならなかった。

(せんせいのいったしぜんにしぬとか、ふしぜんのぼうりょくでしぬとかいうことばも、)

先生のいった自然に死ぬとか、不自然の暴力で死ぬとかいう言葉も、

(そのばかぎりのあさいいんしょうをあたえただけで、あとはなんのこだわりをわたくしのあたまに)

その場限りの浅い印象を与えただけで、後は何らのこだわりを私の頭に

(のこさなかった。わたくしはいままでいくたびかてをつけようとしてはてをひっこめたそつろんぶんを)

残さなかった。私は今まで幾度か手を着けようとしては手を引っ込めた卒論文を

(いよいよほんしきにかきはじめなければならないとおもいだした。)

いよいよ本式に書き始めなければならないと思い出した。

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