山本周五郎 赤ひげ診療譚 三度目の正直 3

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投稿者投稿者uzuraいいね1お気に入り登録
プレイ回数668難易度(4.4) 2018打 長文
映画でも有名な、山本周五郎の傑作連作短編です。
赤ひげ診療譚の第四話です。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 じゅんこ 5363 B++ 5.5 96.2% 362.1 2020 78 40 2024/05/10

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問題文

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(よくじつ、のぼるはまだくらいうちにようじょうしょをでた。)

翌日、登はまだ暗いうちに養生所を出た。

(きょじょうのともをしているあいだに、あしのほうもかなりたっしゃになり、)

去定の供をしているあいだに、足のほうもかなり達者になり、

(さくまちょうへついたときには、とうきちはまだいえでめしをたべていた。)

佐久間町へ着いたときには、藤吉はまだ家で飯を喰べていた。

(のぼるはおちよにとうきちをとぐちまでよんでもらい、きょじょうからめいぜられたことをつげた。)

登はおちよに藤吉を戸口まで呼んでもらい、去定から命ぜられたことを告げた。

(「いのはまだねていますが」といって、とうきちはあたまをかいた、)

「猪之はまだ寝ていますが」と云って、藤吉は頭を掻いた、

(くわしいはなしをするには、うちではちょっとまずいんですがね」)

詳しい話をするには、うちではちょっとまずいんですがね」

(「しごとばへいってもいいよ」)

「仕事場へいってもいいよ」

(「しごとはかわってもらえるんですが」とうきちはきのどくそうにいった、)

「仕事は代ってもらえるんですが」藤吉は気の毒そうに云った、

(「とうりょうにことわればかわってもらえるんですが、ほりえまでいってくださいますか」)

「頭梁に断われば代ってもらえるんですが、堀江までいって下さいますか」

(「しごとをやすむことはないだろう」)

「仕事を休むことはないだろう」

(「はなすならゆっくりはなしたいし、)

「話すならゆっくり話したいし、

(なに、いまのちょうばはあっしでなくってもまにあうんです、)

なに、いまの帳場はあっしでなくってもまにあうんです、

(じゃあちょっとめしをかたづけちまいますから」)

じゃあちょっと飯を片づけちまいますから」

(のぼるはそとへでた。)

登は外へ出た。

(そこはさくまちょうよんちょうめで、うしろがかんだがわになっている。)

そこは佐久間町四丁目で、うしろが神田川になっている。

(いえはにこだてだが、こうしどのあるこぢんまりしたつくりだし、)

家は二戸建てだが、格子戸のある小ぢんまりした造りだし、

(となりきんじょもにたようなしもたやがおおく、したまちにしてはかんせいないっかくをなしていた。)

隣り近所も似たようなしもたやが多く、下町にしては閑静な一画をなしていた。

(ーーでてきたとうきちは、きながしにひらぐけをしめあさうらをはいていた。)

ーー出て来た藤吉は、着流しにひらぐけをしめ麻裏をはいていた。

(しごとはやすむつもりらしい、またせてすみません、といってあるきだしたが、)

仕事は休むつもりらしい、待たせて済みません、と云って歩きだしたが、

(ふとおもいついたようにたちどまり、ちょっとみておいてもらいたいものがあると、)

ふと思いついたように立停り、ちょっと見ておいてもらいたいものがあると、

など

(いえのわきをうらへまわっていった。)

家の脇を裏へまわっていった。

(うらにはもうひとかわ、かんだがわにめんしたいえがならんでおり、)

裏にはもうひとかわ、神田川に面した家が並んでおり、

(こっちのいえとのあいだに、はばきゅうしゃくあまりのあきちがあった。)

こっちの家とのあいだに、幅九尺あまりの空地があった。

(そこはりょうほうのいえのかってぐちがむきあっていて、いどもあるし、)

そこは両方の家の勝手口が向き合っていて、井戸もあるし、

(てづくりのたなにぼんさいをかざったり、たけがきをまわして、うえきやはなをそだてていたりした。)

手作りの棚に盆栽を飾ったり、竹垣をまわして、植木や花を育てていたりした。

(「これをみてください」)

「これを見て下さい」

(とうきちはじぶんのいえのかってぐちのところで、そういいながら、)

藤吉は自分の家の勝手口のところで、そう云いながら、

(そこにならんでいるうえきばちをゆびさした。)

そこに並んでいる植木鉢を指さした。

(やすもののすやきのはちがななつあり、それぞれなにかちいさななえぎがうわっているが、)

安物の素焼きの鉢が七つあり、それぞれなにか小さな苗木が植わっているが、

(のぼるにはそれがなにをうえてあるのか、まったくみわけがつかなかった。)

登にはそれがなにを植えてあるのか、まったく見分けがつかなかった。

(「いのがうえたんですよ」ととうきちはかってぐちのほうをきにしながらいった、)

「猪之が植えたんですよ」と藤吉は勝手口のほうを気にしながら云った、

(「よくみてください、みんなさかさまです」)

「よく見て下さい、みんな逆さまです」

(「さかさまとは」)

「逆さまとは」

(「えだのほうをうめて、ねをうえへだしてあるんです」)

「枝のほうを埋めて、根を上へ出してあるんです」

(のぼるはほうといった。なるほど、よくみるとはちのつちからでているのはねである。)

登はほうといった。なるほど、よく見ると鉢の土から出ているのは根である。

(もっともみなねをうえにしてうえてあり、)

もっともみな根を上にして植えてあり、

(それでなんのきかわからなかったのであった。)

それでなんの木かわからなかったのであった。

(「どうしてこんなうえかたをしたんだ」)

「どうしてこんな植えかたをしたんだ」

(「それはあとではなします」といってとうきちはあるきだした、「いきましょうか」)

「それはあとで話します」と云って藤吉は歩きだした、「いきましょうか」

(あたらしばしをわたって、にほんばしのほうへむかいながら、とうきちははなしはじめた。)

あたらし橋を渡って、日本橋のほうへ向かいながら、藤吉は話し始めた。

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