ドロッセルの剣

(むせびなくひあいのつぐみ)

咽び泣く　悲哀の鶫

(わすれがたきはありしひのきおくそこくにせをむけしにくしんの)

忘れ難きは在りし日の記憶　祖国に背を向けし肉親の

(いてつくようなさいごのしせんとちいさくなっていくまだおさなきせなか)

凍てつくような最後の視線と　小さくなっていく未だ幼き背中

(ああかなしみのあめはやがてにくしみのいかずちへとかわり)

嗚呼哀しみの雨はやがて　憎しみの雷へと変わり

(おおいつくすあついくもがわたしのしやをくろくそめゆく)

覆い尽くす厚い雲が　私の視野を黒く染めゆく

(かわしたちぎりをなぞるたびにやけるこころはまるで)

交わした契りをなぞる度に　灼ける心はまるで

(いとおしさもうつくしさもきりさくつるぎのように)

愛おしさも美しさも　切り裂く剣のように

(はいとくのとがにさばきをかれんなつばさにじあいを)

背徳の咎に裁きを　可憐な翼に慈愛を

(こわれたはぐるまのおとさえもきこえぬまま)

壊れた歯車の音さえも　聞こえぬまま

(ゆめにみるありしひのきみのすがたあざやかにひそうのつぐみ)

夢に見る在りし日の王女（きみ）の姿　鮮やかに悲愴の鶫

(いてつくえみでふむいこくのつちそこくにせをむけしにくしんの)

凍てつく微笑で踏む異国の大地（つち）　祖国に背を向けし肉親の

(ありしひのままかわらぬすがたにおえつとともにめざめるきょうきのごうか)

在りし日のまま変わらぬ姿に　嗚咽と共に目覚める狂気の業火

(ああそのせつなむがのままにてにしたものははくぎんのつるぎ)

嗚呼その刹那無我のままに　手にしたものは白銀の剣

(ふりかざしたそのやいばがきりさくものは)

振りかざしたその刃が切り裂くものは

(せんけつとふたりのきずなのかけらがあやまちをつげるように)

鮮血と二人の絆の欠片が　過ちを告げるように

(いかずちとかしたにくしみはこころをもうもくにして)

雷と化した憎しみは　心を盲目にして

(あいするものさえひとしくきりさくつるぎにかえる)

愛する者さえ等しく　切り裂く剣に変える

(ちんもくのひめいをあげてよこたわるなきがらを)

沈黙の悲鳴を上げて　横たわる亡骸を

(いくどとなくゆらすうでにしたたるあかきいぶき)

幾度となく揺らす　腕に滴る紅き息吹

(ひどうのあやまちにじひをかいこんのごうにすくいを)

非道の過ちに慈悲を　悔恨の業に救済（すくい）を

(すべてはてにしたそのつるぎのおもむくまま)

全ては手にしたその剣の赴くまま