『蜘蛛の糸』芥川竜之介2【完】

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プレイ回数607難易度(4.4) 3289打 長文
自身のみ助かりたいという欲求を抱いた結果…
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

↓のURLからの続きですので、未プレイの方はプレイしてから
こちらのタイピングをしてください
https://typing.twi1.me/game/304473

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問題文

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(このいとにすがりついて、どこまでものぼっていけば、)

この糸にすがりついて、どこまでものぼっていけば、

(きっとじごくからぬけだせるにちがいありません。)

きっと地獄から抜け出せるに違いありません。

(いや、うまくいくと、ごくらくへはいることさえもできましょう。)

いや、うまくいくと、極楽へ入ることさえも出来ましょう。

(そうすれば、もうはりのやまへおいあげられることもなくなれば、)

そうすれば、もう針の山へ追い上げられることもなくなれば、

(ちのいけにしずめられることもあるはずはございません。)

血の池に沈められることもあるはずはございません。

(こうおもいましたから、かんだたはさっそくそのくものいとを)

こう思いましたから、カンダタは早速その蜘蛛の糸を

(りょうてでしっかりとつかみながら、いっしょうけんめいにうえへうえへとたぐり)

両手でしっかりとつかみながら、一生懸命に上へ上へとたぐり

(のぼりはじめました。もとよりおおどろぼうのことでございますから、)

のぼり始めました。もとより大泥棒のことでございますから、

(こういうことには、むかしからなれきっているのでございます。)

こういうことには、昔から慣れきっているのでございます。

(しかしじごくとごくらくとのあいだは、なんまんきろとなくございますから、)

しかし地獄と極楽とのあいだは、何万キロとなくございますから、

(いくらあせってみたところで、よういにうえへはでられません。)

いくら焦ってみた所で、容易に上へは出られません。

(しばらくのぼるうちに、とうとうかんだたもくたびれて、)

しばらくのぼるうちに、とうとうカンダタもくたびれて、

(もうひとつもうえのほうへは、のぼれなくなってしまいました。)

もう一つも上のほうへは、のぼれなくなってしまいました。

(そこでしかたがございませんから、まずひとやすみやすむつもりで、)

そこで仕方がございませんから、まず一休み休むつもりで、

(いとのとちゅうにぶらさがりながら、とおいしたをみおろしました。)

糸の途中にぶら下がりながら、遠い下を見下ろしました。

(すると、いっしょうけんめいのぼったかいもあり、さっきまでじぶんがいたちのいけは、)

すると、一生懸命のぼった甲斐もあり、さっきまで自分がいた血の池は、

(いまではもうやみのそこにいつのまにかかくれております。)

今ではもう闇の底にいつの間にか隠れております。

(それから、あのぼんやりひかっているおそろしいはりのやまも、)

それから、あのぼんやり光っている恐ろしい針の山も、

(あしのしたになってしまいました。)

足の下になってしまいました。

(このぶんでのぼっていけば、じごくからぬけだすのもかんたんなことです。)

この分でのぼっていけば、地獄から抜け出すのも簡単なことです。

など

(かんだたはりょうてをくものいとにからめながら、)

カンダタは両手を蜘蛛の糸にからめながら、

(ここへきてからなんねんもだしたことのないこえで、)

ここへ来てから何年も出したことのない声で、

(「しめた、しめた」と、わらいました。ところがふときがつきますと、)

「しめた、しめた」と、笑いました。ところがふと気がつきますと、

(くものいとのしたのほうには、かぞえきれないほどのざいにんたちが、)

蜘蛛の糸の下のほうには、数えきれないほどの罪人たちが、

(じぶんののぼったあとをつけて、まるでありのぎょうれつのように、)

自分ののぼったあとをつけて、まるでアリの行列のように、

(やはりうえへうえへといっしんによじのぼってくるではございませんか。)

やはり上へ上へと一心によじのぼってくるではございませんか。

(かんだたはこれをみると、おどろいたのとおそろしいのとで、)

カンダタはこれを見ると、驚いたのと恐ろしいのとで、

(しばらくはただ、ばかのようにおおきなくちをあけたまま、)

しばらくはただ、ばかのように大きな口をあけたまま、

(めばかりうごかしておりました。じぶんひとりでさえきれそうな、)

目ばかり動かしておりました。自分一人でさえ切れそうな、

(このほそいくものいとが、どうしてあれだけのにんずうのおもみに)

この細い蜘蛛の糸が、どうしてあれだけの人数の重みに

(たえることができるでしょうか。)

耐えることが出来るでしょうか。

(もしまんがいちにも、とちゅうできれたといたしましたら、)

もし万が一にも、途中で切れたと致しましたら、

(せっかくここまでのぼってきた、このじぶんまでももとのじごくへ)

折角ここまでのぼってきた、この自分までも元の地獄へ

(まっさかさまにおちてしまわなければなりません。)

真っ逆さまに落ちてしまわなければなりません。

(そんなことがあったら、たいへんでございます。)

そんなことがあったら、大変でございます。

(が、そういううちにもざいにんたちはなんびゃく、なんぜんとなく、)

が、そういううちにも罪人たちは何百、何千となく、

(まっくらなちのいけのそこから、うようよとはいあがって、)

真っ暗な血の池の底から、ウヨウヨと這い上って、

(ほそくひかっているくものいとを、いちれつになりながら、せっせとのぼってまいります。)

細く光っている蜘蛛の糸を、一列になりながら、せっせとのぼって参ります。

(いまのうちにどうにかしなければ、いとはまんなかからふたつにきれて、)

今のうちにどうにかしなければ、糸は真ん中から二つに切れて、

(おちてしまうにちがいありません。そこでかんだたはおおきなこえをだして、)

落ちてしまうに違いありません。そこでカンダタは大きな声を出して、

(「こら、ざいにんども。このくものいとは、おれのものだぞ。)

「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は、おれのものだぞ。

(おまえたちはいったいだれにきいて、のぼってきた。)

お前たちは一体誰に聞いて、のぼってきた。

(おりろ、おりろ」と、わめきました。そのとたんでございます。)

下りろ、下りろ」と、わめきました。その途端でございます。

(いままでなんともなかったくものいとが、)

今までなんともなかった蜘蛛の糸が、

(きゅうにかんだたのぶらさがっているところから、ぷつりとおとをたててきれました。)

急にカンダタのぶら下がっている所から、プツリと音を立てて切れました。

(ですから、かんだたはたまりません。あっというまもなく、かぜをきって)

ですから、カンダタはたまりません。あっというまもなく、風を切って

(こまのようにくるくるまわりながら、みるみるうちにやみのそこへ、)

コマのようにクルクル回りながら、みるみるうちに闇の底へ、

(まっさかさまにおちてしまいました。)

真っ逆さまに落ちてしまいました。

(あとには、ただごくらくのくものいとがきらきらとほそくひかりながら、)

あとには、ただ極楽の蜘蛛の糸がキラキラと細く光りながら、

(つきもほしもないそらのとちゅうで、みじかくたれているばかりでございます。)

月も星もない空の途中で、短く垂れているばかりでございます。

(おしゃかさまはごくらくのはすいけのふちにたって、)

お釈迦様は極楽のハス池のふちに立って、

(このいちぶしじゅうをじっとみていらっしゃいましたが、)

この一部始終をジッと見ていらっしゃいましたが、

(やがてかんだたがちのいけのそこへ、いしのようにしずんでしまいますと、)

やがてカンダタが血の池の底へ、石のように沈んでしまいますと、

(かなしそうなおかおをなさりながら、またぶらぶらおあるきになりはじめました。)

悲しそうなお顔をなさりながら、またブラブラお歩きになり始めました。

(じぶんだけじごくからぬけだそうとする、かんだたのむじひなこころに)

自分だけ地獄から抜け出そうとする、カンダタの無慈悲な心に

(そうとうするばつをうけて、もとのじごくへおちてしまったのが、)

相当する罰を受けて、元の地獄へ落ちてしまったのが、

(おしゃかさまのめからみると、あさましくおおもいになったのでございましょう。)

お釈迦様の目から見ると、浅ましくお思いになったのでございましょう。

(しかしごくらくのはすいけのはすは、すこしもそんなことにはしゅうちゃくいたしません。)

しかし極楽のハス池のハスは、少しもそんなことには執着致しません。

(そのたまのようなしろいはなは、おしゃかさまのおみあしのまわりで、)

その玉のような白い花は、お釈迦様のおみ足の周りで、

(はなびらをつつんでいるがくをゆらゆらとうごかして、)

花びらを包んでいるガクをユラユラと動かして、

(そのまんなかにあるきんいろのおしべとめしべからは、)

その真ん中にある金色のおしべとめしべからは、

(なんともいえないよいにおいが、たえまなくあたりへあふれております。)

なんともいえないよい匂いが、絶え間なくあたりへあふれております。

(ごくらくも、もうひるにちかくなったのでございましょう。)

極楽も、もう昼に近くなったのでございましょう。

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