半七捕物帳 鷹のゆくえ1

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プレイ回数375難易度(4.5) 3744打 長文 長文モード可
岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第15話
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 すもさん 5597 A 5.8 95.4% 657.6 3864 183 62 2024/04/17
2 sachiko 4942 B 4.9 99.5% 747.4 3710 16 62 2024/04/18
3 やまちやまちゃん 4651 C++ 4.8 96.6% 769.6 3707 127 62 2024/04/04

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問題文

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(ろうじんとわたしとさしむかいで、ごがつのあめのふるにちようびをこはんにちもかたりくらした。)

一 老人とわたしと差し向いで、五月の雨のふる日曜日を小半日も語り暮した。

(じせつがらでかめいどのふじのうわさがでた。ふじのはなからふじむすめのはなしをよびだして、)

時節柄で亀戸(かめいど)の藤の噂が出た。藤の花から藤娘の話をよび出して、

(それからおおつえのはなしにてんじて、さらにたかじょうのはなしにうつる。)

それから大津絵の話に転じて、更に鷹匠(たかじょう)のはなしに移る。

(そのはなしをじゅんじゅんにはこんでいてはながくなるから、まえおきはいっさいりゃくして、)

その話を順々に運んでいては長くなるから、前置きはいっさい略して、

(たんにほんぶんだけをしょうかいすることにした。)

単に本文だけを紹介することにした。

(あんせいろくねんのじゅうがつ、はんしちがあさゆにはいっていると、こぶんのひとりが)

…… 安政六年の十月、半七があさ湯にはいっていると、子分の一人が

(あわただしくむかえにきた。)

あわただしく迎えに来た。

(「おやぶん。はっちょうぼりのだんなからきゅうにきてくれということですぜ」)

「親分。八丁堀の旦那から急に来てくれということですぜ」

(「そうか。すぐかえる」)

「そうか。すぐ帰る」

(はっちょうぼりからよばれるのはめずらしくない。しかしそれがふつうのできごとで)

八丁堀から呼ばれるのは珍らしくない。しかしそれが普通の出来事で

(あるならば、すぐにそのげんばへしゅっちょうをめいじられるのがならいで、)

あるならば、すぐにその現場へ出張を命じられるのが習いで、

(とくにはっちょうぼりのやしきへよびつけられるいじょう、なにかひみつのようけんであることは)

特に八丁堀の屋敷へ呼び付けられる以上、なにか秘密の用件であることは

(たねんのけいけんではんしちもよくしょうちしていた。かれはさっそくにゆやからとびだして、)

多年の経験で半七もよく承知していた。彼は早速に湯屋から飛び出して、

(あさめしをくってきものをきかえるあいだにも、そのようけんがどんなことであるかを)

あさ飯を食って着物を着かえる間にも、その用件がどんなことであるかを

(そうぞうした。このしょくぎょうのものには、いっしゅのあんじがある。ぞくに、「むしがしらせる」)

想像した。この職業の者には、一種の暗示がある。俗に、「虫が知らせる」

(ということがふしぎにてきちゅうするためしがしばしばある。)

ということが不思議に的中するためしがしばしばある。

(はんしちもだまってそれをかんがえていたが、けさはどうもそのはんだんがつかなかった。)

半七も黙ってそれを考えていたが、けさはどうもその判断がつかなかった。

(そのじけんのせいしつがなんであるか、まるでけんとうがつかないで、)

その事件の性質がなんであるか、まるで見当が付かないで、

(はんしちはなんだかおちつかないようなきもちでそわそわとかんだのいえをでた。)

半七はなんだか落ち着かないような気持でそわそわと神田の家を出た。

(はっちょうぼりどうしんやまざきぜんべえはかれのくるのをまちうけて、すぐにようだんにとりかかった。)

八丁堀同心山崎善兵衛は彼の来るのを待ち受けて、すぐに用談に取りかかった。

など

(「おい、はんしち。さっそくだが、またひとつごようをつとめてもらいたいことがある。)

「おい、半七。早速だが、また一つ御用を勤めて貰いたいことがある。

(はたらいてくれ」 「かしこまりました。して、どんなすじでございますかえ」)

働いてくれ」 「かしこまりました。して、どんな筋でございますかえ」

(「ちっとむずかしい。いきものだ」)

「ちっとむずかしい。生き物だ」

(ひつけもひとごろしもとうぞくもいきものにそういないが、ここでとくにいきものといういじょう、)

火付けも人殺しも盗賊も生き物に相違ないが、ここで特に生き物という以上、

(それがちょうじゅうかさかなのたぐいをいみするのはわかりきっているので、)

それが鳥獣か魚のたぐいを意味するのは判り切っているので、

(はんしちはすこしいがいにかんじた。なるほどけさはなんのあんじもなかったはずだ)

半七はすこし意外に感じた。なるほど今朝はなんの暗示もなかった筈だ

(ともおもった。かれはすぐにこごえでききかえした。 「つるでございますかえ」)

とも思った。彼はすぐに小声で訊き返した。 「鶴でございますかえ」

(えどじだいにつるをころせば、しざいまたははりつけになる。)

江戸時代に鶴を殺せば、死罪または磔刑(はりつけ)になる。

(つるごろしはじゅうざいはんにんである。いきものときいて、かれはすぐにつるごろしを)

鶴殺しは重罪犯人である。生き物と聞いて、彼はすぐに鶴殺しを

(おもいうかべたのであるが、あいてはほほえみながらかぶりをふっていた。)

思いうかべたのであるが、相手はほほえみながら頭(かぶり)をふっていた。

(「うずらですかえ」と、はんしちはまたきいた。)

「鶉(うずら)ですかえ」と、半七はまた訊いた。

(このじだいにはうずらもいろいろのもんだいをおこしやすいいきものであった。)

この時代には鶉もいろいろの問題を起し易い生き物であった。

(ぜんべえはやはりくびをふって、じらすようにはんしちのかおをみた。)

善兵衛はやはり首をふって、焦(じ)らすように半七の顔を見た。

(「わからねえか」 「わかりませんね」)

「判らねえか」 「わかりませんね」

(「はは、きさまにもにあわねえ。いきものはたかだ。おたかだよ」)

「はは、貴様にも似合わねえ。生き物は鷹だ。お鷹だよ」

(「へえ、おたかでございますか」と、はんしちはうなずいた。)

「へえ、お鷹でございますか」と、半七はうなずいた。

(「そのおたかがにげたんですか」)

「そのお鷹が逃げたんですか」

(「むむ、にげた。それで、おたかじょうはあおくなっているのだ。)

「むむ、逃げた。それで、御鷹匠は蒼くなっているのだ。

(けさそのおじというのがかけこんできて、おれにいろいろなきついて)

けさ其(そ)の叔父というのが駆け込んで来て、おれにいろいろ泣き付いて

(いったが、ほかのことともちがうから、うっちゃってはおかれねえ。)

行ったが、ほかの事とも違うから、打っちゃっては置かれねえ。

(そのとうにんもかわいそうだ。はやくなんとかしてやりたいとおもうのだが・・・・・・」)

その当人も可哀そうだ。早くなんとかしてやりたいと思うのだが……」

(おたかといえばしょうぐんのかいどりである。それをにがしたたかじょうはいのちにかかわる)

お鷹といえば将軍の飼い鳥である。それを逃がした鷹匠は命にかかわる

(ちんじで、かれはせっぷくでもしなければならない。ほんにんはもちろん、)

椿事(ちんじ)で、かれは切腹でもしなければならない。本人は勿論、

(そのしんるいどもがうろたえてさわぐのもむりはなかった。)

その親類どもがうろたえて騒ぐのも無理はなかった。

(「そこで、そのおたかはどこでどうしてにがしたのですかえ」と、はんしちはきいた。)

「そこで、そのお鷹はどこでどうして逃がしたのですかえ」と、半七は訊いた。

(「それがじゅうじゅうわるい。ゆうしょばでとりにがしたのだ」)

「それが重々悪い。遊所場(ゆうしょば)で取り逃がしたのだ」

(「しゅくですね」 「そうだ。しながわのまるやというじょろうやだ」)

「宿(しゅく)ですね」 「そうだ。品川の丸屋という女郎屋だ」

(ぜんべえのせつめいによると、じけんのてんまつはこうであった。)

善兵衛の説明によると、事件の顛末(てんまつ)はこうであった。

(たかじょうのみついきんのすけが、ふたりのどうやくとつれだって、きのうのひるすぎから)

鷹匠の光井金之助が、二人の同役と連れ立って、きのうの午(ひる)すぎから

(めぐろのほうがくへおたかならしにでた。たかじょうはそのやくめとして、あずかりのたかを)

目黒の方角へお鷹馴らしに出た。鷹匠はその役目として、あずかりの鷹を

(ならすために、ときどきやがいへはなしにでるのである。ゆらい、たかじょうなるものはたかひゃっぴょう、)

馴らすために、時々野外へ放しに出るのである。由来、鷹匠なるものは高百俵、

(みならいごじゅっぴょうで、けっしてみぶんのたかいものではないが、しょうぐんけのたかを)

見習い五十俵で、決して身分の高いものではないが、将軍家の鷹を

(あずかってうるので、「おたかじょう」とよばれて、そのこぶしにすえているおたかを)

あずかってうるので、「御鷹匠」と呼ばれて、その拳に据えているお鷹を

(かさにきて、むやみにいばりちらしたものである。かれらは)

嵩(かさ)に被(き)て、むやみに威張り散らしたものである。かれらは

(えでみるように、こもんのてっこうきゃはんわらじばきで)

絵で見るように、小紋の手甲脚絆(てっこうきゃはん)草鞋穿(わらじば)きで

(すげがさをかぶり、かたてにたかをすえてしちゅうをおうらいする。そのばあいに)

菅笠(すげがさ)をかぶり、片手に鷹を据えて市中を往来する。その場合に

(うっかりかれらにすれちがったりすると、たいせつなおたかをおどろかしたといって、)

うっかり彼等にすれ違ったりすると、大切なお鷹をおどろかしたと云って、

(むずかしくくってかかる。そのほんにんはともかくも、そのこぶしにすえているのは)

むずかしく食ってかかる。その本人はともかくも、その拳に据えているのは

(しょうぐんけのたかであるから、それにたいしてはどうすることもできないので、)

将軍家の鷹であるから、それに対してはどうすることも出来ないので、

(おたかをおどろかしたといいかけられたものは、だいちにてをついて)

お鷹をおどろかしたと云いかけられた者は、大地に手をついて

(あやまらなければならない。ばんじがこういうふうで、かれらはそのささげている)

あやまらなければならない。万事がこういう風で、かれらはその捧げている

(たかよりもするどいめをひからせて、えどのしみんをにらみまわしておしあるいていた。)

鷹よりも鋭い眼をひからせて、江戸の市民を睨みまわして押し歩いていた。

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