悪霊 江戸川乱歩 12

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投稿者投稿者神楽@社長推しいいね0お気に入り登録
プレイ回数237難易度(4.5) 3917打 長文
江戸川乱歩の短編小説です
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7746 7.8 98.4% 490.7 3863 62 70 2024/04/17
2 HAKU 7668 7.8 97.4% 497.1 3914 102 70 2024/04/17
3 subaru 7191 7.5 95.4% 513.8 3880 185 70 2024/04/19
4 miko 5924 A+ 6.1 97.0% 638.0 3898 118 70 2024/04/20
5 りく 5880 A+ 5.9 98.1% 660.3 3958 75 70 2024/04/18

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問題文

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(くまうらしはおもいかえしたようにあいづちをうって、)

熊浦氏は思い返した様に相槌を打って、

(「やがすりのおんなと、こんやの、「おりえさん」の、ことばとを、りょうりつさせようと、すれば、)

「矢絣の女と、今夜の、『織江さん』の、言葉とを、両立させようと、すれば、

(はんにんが、じょせいでは、ないかという、うたがいが、おこるのは、むりもない。)

犯人が、女性では、ないかという、疑いが、起るのは、無理もない。

(じょせいなれば、やがすりのきものを、きることも、ひさしがみに、ゆうことも、じゆうだからね」)

女性なれば、矢絣の着物を、着ることも、庇髪に、結うことも、自由だからね」

(かれはそこまでいうと、ぷっつりことばをきって、いようにだまりこんでしまった。)

彼はそこまで云うと、プッツリ言葉を切って、異様に黙り込んでしまった。

(うたがってはならないひとをうたがったのだといういしきが、いちどうをきまずくちんもくさせた。)

疑ってはならない人を疑ったのだという意識が、一同を気拙く沈黙させた。

(「それはそうと、あねざきさんのしがいのそばにおちていたという、しょうこの)

「それはそうと、姉崎さんの死骸のそばに落ちていたという、証拠の

(かみきれには、いったいなにがかいてあったのですか。そぶえさんはごしょうちでしょうが」)

紙切れには、一体何が書いてあったのですか。祖父江さんは御承知でしょうが」

(そのだぶんがくしが、しらけたいちざをとりなすように、まったくべつのわだいをもちだした。)

園田文学士が、白けた一座をとりなす様に、全く別の話題を持出した。

(ぼくは、まだこのひとたちには、それをみせていないことにきづいたので、さいぜん)

僕は、まだこの人達には、それを見せていないことに気附いたので、さい前

(くろかわせんせいにえがいてみせたてちょうのぺーじをひらいて、まずそのだしにわたした。)

黒川先生に描いて見せた手帳の頁[ページ]を開いて、先ず園田氏に渡した。

(「これですよ。おくさんは、いざりぐるまをしょうちょうしたきごうじゃないかと)

「これですよ。奥さんは、いざり車を象徴した記号じゃないかと

(おっしゃったんですが、おんなってみょうなことをかんがえるものですね」)

おっしゃったんですが、女って妙なことを考えるものですね」

(ちかめのぶんがくしは、ぼくのてちょうを、ちかぢかとめによせて、ひとめみたかと)

近眼[ちかめ]の文学士は、僕の手帳を、近々と目によせて、一目見たかと

(おもうと、じつにふしぎなことには、くろかわせんせいとおなじように、なにかぎょっとした)

思うと、実に不思議なことには、黒川先生と同じ様に、何かギョッとした

(ようすで、いそいでそれをとじてしまった。)

様子で、急いでそれを閉じてしまった。

(「そぶえさん、ほんとうにこんなきごうをかいたかみがおちていたのですか。まったく)

「祖父江さん、本当にこんな記号を書いた紙が落ちていたのですか。全く

(このとおりのきごうでしたか、おもいちがいではないでしょうね」)

この通りの記号でしたか、思い違いではないでしょうね」

(そのだしはおどろきをかくすことができなかった。)

園田氏は驚きを隠すことが出来なかった。

(かれはこのきごうについて、なにごとかをしっているのだ。)

彼はこの記号について、何事かを知っているのだ。

など

(「ええ、まちがいはないつもりです。ですが、あなたは、それにみおぼえでも)

「エエ、間違いはない積りです。ですが、あなたは、それに見覚えでも

(あるのですか」)

あるのですか」

(「まってください。そして、そのかみきれはどんなものでした。ししつやおおきさは」)

「待って下さい。そして、その紙切れはどんなものでした。紙質や大きさは」

(「ちょうどはがきくらいのちょうほうけいで、あついようしでした。けいさつのひとはじょうしつしだと)

「丁度端書[はがき]位の長方形で、厚い洋紙でした。警察の人は上質紙だと

(いっていました」)

云っていました」

(えんでんしのめがねのなかのふくれためだまが、いっそうふくれあがってくるように)

園田氏の眼鏡の中のふくれた眼球[めだま]が、一層ふくれ上って来る様に

(みえた。あおいかおがいっそうあおざめていくようにみえた。)

見えた。青い顔が一層青ざめて行く様に見えた。

(「どうしたんです。このきごうのいみがおわかりなんですか」)

「どうしたんです。この記号の意味がお分りなんですか」

(ぼくはつめよらないではいられなかった。)

僕は詰めよらないではいられなかった。

(「じつはしっているんです。ひとめみてわかるほど、よくしっているんです」)

「実は知っているんです。一目見て分る程、よく知っているんです」

(かれはしょうじきにうちあけてしまった。)

彼は正直に打開けてしまった。

(「ふん、そいつは、みみよりな、はなしですね。どれ、ぼくにも、みせてくれたまえ」)

「フン、そいつは、耳よりな、話ですね。ドレ、僕にも、見せてくれ給え」

(くまうらしもじせきからたってきて、てちょうをうけとると、きごうのぺーじをながめていたが、)

熊浦氏も自席から立って来て、手帳を受取ると、記号の頁を眺めていたが、

(「こりゃ、わしには、さっぱり、わからん。だが、そのだくん、このきごうを、しって、)

「こりゃ、わしには、サッパリ、分らん。だが、園田君、この記号を、知って、

(いるからには、きみは、はんにんが、だれだと、いうことも、けんとうが、つくのだろうね」)

いるからには、君は、犯人が、誰だと、いうことも、見当が、つくのだろうね」

(と、まるでさいばんかんのようなちょうしでたずねる。)

と、まるで裁判官の様な調子で尋ねる。

(「いや、それは、そういうわけじゃないのです」)

「イヤ、それは、そういう訳じゃないのです」

(そのだしは、ひじょうにどぎまぎして、すくいをもとめるように、きょろきょろとさんにんのかおを)

園田氏は、非常にドギマギして、救いを求める様に、キョロキョロと三人の顔を

(みくらべながら、)

見比べながら、

(「たとえ、ぼくにはんにんのけんとうがつくとしても、それはいえません。・・・・・・すこし)

「仮令、僕に犯人の見当がつくとしても、それは云えません。・・・・・・少し

(かんがえさせてください。ぼくのおもいちがいかもしれません。たぶんおもいちがいでしょう。)

考えさせて下さい。僕の思い違いかも知れません。多分思い違いでしょう。

(・・・・・・そうでないとすると、じつにおそろしいことなんだから。・・・・・・」)

・・・・・・そうでないとすると、実に恐ろしい事なんだから。・・・・・・」

(かれはあおざめたかおに、ぶつぶつとあせのたまをうかべて、かわいたくちびるを)

彼は青ざめた顔に、ブツブツと汗の玉を浮べて、乾いた脣[くちびる]を

(なめながら、とぎれとぎれにいうのだ。)

舐めながら、途切れ途切れに云うのだ。

(「ここでは、いえないのですか」)

「ここでは、云えないのですか」

(「ええ、ここでは、どうしても、いえないのです」)

「エエ、ここでは、どうしても、云えないのです」

(「さしさわりが、あるのですか」)

「さしさわりが、あるのですか」

(「ええ、いや、そういうわけでもないのですが、ともかく、もうすこし)

「エエ、イヤ、そういう訳でもないのですが、兎も角、もう少し

(かんがえさせてください。いくらおたずねになっても、こんやはいえません」)

考えさせて下さい。いくらお尋ねになっても、今夜は云えません」

(そのだしは、さんにんのかおを、ぬすみみるようにしながら、がんきょうにいいはった。)

園田氏は、三人の顔を、盗み見る様にしながら、頑強に云い張った。

(けっきょくぼくたちは、きごうのひみつをききだすことができないまま、くろかわていを)

結局僕達は、記号の秘密を聞出すことが出来ないまま、黒川邸を

(じすることになった。せんせいはかいいんをみおくるためにげんかんまででていらしったが、)

辞することになった。先生は会員を見送る為に玄関まで出ていらしったが、

(そのしんぱいにやつれたおかおをみると、だれもさつじんじけんのことなどはなしだすきに)

その心配にやつれたお顔を見ると、誰も殺人事件のことなど話し出す気に

(なれなかった。おくさんは、きぶんがわるいといってねこんでいるから、)

なれなかった。奥さんは、気分が悪いといって寝こんでいるから、

(しつれいするとのことであった。)

失礼するとのことであった。

(そのかえりみち、くまうらしはほどとおからぬじたくへ、ぼくはしょうせんのていしゃじょうへとわかれるとき、)

その帰り途、熊浦氏は程遠からぬ自宅へ、僕は省線の停車場へと別れる時、

(このきみょうなようかいがくしゃが、そっとぼくにささやいたひとことは、にわかにそのいみを)

この奇妙な妖怪学者が、ソッと僕に囁いた一言は、俄[にわ]かにその意味を

(とらえることはできなかったけれど、じつにいようないんしょうをあたえた。)

捉えることは出来なかったけれど、実に異様な印象を与えた。

(「ね、そぶえくん、きみに、いいことをおしえてやろうか。くろかわくんの、おくさんはね、)

「ね、祖父江君、君に、いい事を教えてやろうか。黒川君の、奥さんはね、

(むすめのじぶんに、きたのだと、いって、たんすの、そこにね、むらさきやがすりのきものを、もって、)

娘の時分に、着たのだと、言って、箪笥の、底にね、紫矢絣の着物を、持って、

(いるのだよ。ぼくは、ずっとまえに、それを、みたことが、あるんだよ」)

いるのだよ。僕は、ずっと前に、それを、見たことが、あるんだよ」

(くまうらしはそういったかとおもうと、ぼくがなにをたずねるひまもないうちに、さっさと、)

熊浦氏はそう云ったかと思うと、僕が何を尋ねるひまもない内に、サッサと、

(むこうのやみのなかへきえていってしまったのだ。)

向うの闇の中へ消えて行ってしまったのだ。

(いじょうがくがつにじゅうしちにちのよるのできごとのあらましだ。ぼくはこういうしょうせつたいのぶんしょうには)

以上が九月二十七日の夜の出来事のあらましだ。僕はこういう小説体の文章には

(ふなれだし、きょうはなんとなくつかれているので、そざつなてんがおおかったとおもう。)

不慣れだし、今日は何となく疲れているので、粗雑な点が多かったと思う。

(はんどくしてください。)

判読して下さい。

(だいさんしんはひきつづいて、あしたにもかきつぐつもりだ。)

第三信は引続いて、明日にも書きつぐつもりだ。

(じゅうがつにじゅうににち)

十月二十二日

(そぶえせい)

祖父江生

(いわいたいけい)

岩井大兄

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