春の日

(ひばりがそらにたかなくはれたはるのひ。)

雲雀がそらに高鳴く　晴れた春の日。

(さくらをひいてならんだあわいとばり。)

桜を弾いて並んだ淡い帳。

(まちあわせばしょはきょうもさくらなみき。)

待ち合わせ場所は今日も桜並木。

(いつだっておくれるのはぼくだったのにね。)

いつだって遅れるのは僕だったのにね。

(かよいなれたこのながいみちに、いたずらなはるさんばんがことしもきたよ。)

通い慣れたこの長い道に、いたずらな春三番が今年も来たよ。

(ほら、はなかぜのまち。)

ほら、花風の町。

(はるのひ。まばゆいさくらやみ。きみだけがみえない。)

春の日。まばゆい桜闇。君だけが見えない。

(まいちるくらやみにめをこらし、つぶやいたきみをみた。)

舞い散る暗闇に目を凝らし、呟いた君をみた。

(ただ、それだけのこと。)

ただ、それだけのこと。

(それとなく、むごんのままではなしをしよう。)

それとなく、無言のままで話をしよう。

(なんとなく、このであいはだめだってしっていたんだ)

なんとなく、この出会いは駄目だって知っていたんだ

(だけど、それをきめたきみとぼくだから、)

だけど、それを決めた君と僕だから、

(こうやって、むごんのままでさくらをひこう。)

こうやって、無言のままで桜を弾こう。

(それじゃあ、ありがとう。またいつかあうひまで、おげんきで、さようなら。)

「それじゃあ、ありがとう。またいつか逢う日まで、お元気で、さようなら。」

(はるのひ。まばゆいさくらやみ。きみだけがみえない。)

春の日。まばゆい桜闇。君だけが見えない。

(まいちるくらやみにじゃまされて、きみだけがみえない。)

舞い散る暗闇に邪魔されて、君だけが見えない。

(はるのひ。むじゃきなさくらやみ。なにもかもみえない。)

春の日。無邪気な桜闇。何もかも見えない。

(いっしょにあるいていてもひとりだった。なにもかもみえない。)

一緒に歩いていても独りだった。何もかも見えない。

(きがつけばさくらやみ。どこまでもさくらやみ。)

気がつけば桜闇。どこまでも桜闇。

(はなびらになりはてた。しあわせのかたち。)

花びらに成り果てた。幸福の形。

(ひばりがそらにたかなくはれたはるのひ。)

雲雀がそらに高鳴く晴れた春の日。