蝉時雨

(ひとりたちつくしてたときのやみのなかで)

ひとり立ち尽くしてた時代（とき）の闇の中で

(なにをしんじればいい？)

何を信じればいい？

(あせたこころ)

褪せた心

(たあいないほほえみもいのることばさえも)

他愛ない微笑みも 祈ることばさえも

(あのなつかげのそこにうめてきたの)

あの夏影の底に埋めてきたの

(まいおちるはなのように)

舞い落ちる花のように

(なつをおくるこえたちよ)

夏を葬送（おく）る聲（こえ）たちよ

(ひかりもきぎのざわめきも)

光も 木々のざわめきも

(ひとのあしあとさえ)

人の足跡さえ

(すべておおいつくしてしずめるのなら)

すべて覆い尽くして 鎮魂（しず）めるのなら

(わたしのゆめもかなしみも)

わたしの希望（ゆめ）も かなしみも

(よろこびもいたみも)

よろこびも いたみも

(すべてをわすれさせて)

すべてを忘れさせて

(ねむらせてこのまま)

眠らせてこのまま

(あさいまどろみのなかくりかえしみるのは)

浅いまどろみのなか くりかえし視るのは

(なつかしいぬくもりととおいきおく)

なつかしいぬくもりと遠い記憶

(にどとかえらぬひびのあたたかなおもかげ)

二度と帰らぬ日々の あたたかな面影

(つまさきをすりぬけるにげみずのよう)

つまさきをすりぬける逃げ水のよう

(ゆめみてもうたかたととうにきめたはずなのに)

夢見ても うたかたと とうに決めたはずなのに

(わたしをよびさますのはだれ？)

わたしをよびさますのは誰？

(さびしいひとみで)

さびしいひとみで

(こおるいたみにふれてあなたのゆびで)

凍る痛みにふれて あなたの指で

(くらやみのなかてをのばすどうかきえないでと)

暗闇の中 手をのばす どうか消えないでと

(このてをはなさずいて)

この手をはなさずいて

(どんなあらしのときも)

どんな嵐のときも

(わたしのうでをつなぐかせ)

わたしの腕をつなぐ枷

(うんめいのくびきをたちきるこのゆうきをあなたのために)

運命のくびきを断ち切るこの勇気を あなたのために

(わたしのゆめもかなしみも)

わたしの希望（ゆめ）も かなしみも

(よろこびもいたみもすべてをおもいにかえてほほえむから)

よろこびも いたみも すべてを想いにかえて微笑むから

(ここからあるきだす)

ここから歩き出す