深海　森七菜

(あわただしくすぎてゆくひび)

慌ただしく過ぎてゆく日々

(かえるばしょはまちがってなんかないのに)

帰る場所は間違ってなんかないのに

(きみのこえがききたくてそっとひとみとじる)

君の声が聞きたくてそっと瞳閉じる

(ふかいうみのそこたゆたうからだ)

深い海の底たゆたう体

(さまようだけのわたしはさかな)

彷徨うだけの私は魚

(みなもからさしこむひかりのかなた)

水面から差し込む光の彼方

(とどけとねがうようにてをのばす)

届けと願うように手を伸ばす

(きみにはみえてますかあのほしがゆめが)

君には見えてますかあの星が夢が

(わたしのこのおもいがどこかでないていませんか)

私のこの想いがどこかで泣いていませんか

(ただねがうこえはあわになって)

ただ願う声は泡になって

(せわしなくまちにともるきらびやかなあかり)

忙しなく街に灯る煌びやかな明かり

(やすむことなくひびはつづいてくんだとしる)

休むことなく日々は続いてくんだと知る

(はきだすためいきからこぼれた「あいたいな」)

吐き出すため息から零れた「会いたいな」

(ひとのこえにかきけされていく)

他人の声にかき消されていく

(きょうはこんなことがきのうはこんなことが)

今日はこんなことが昨日はこんなことが

(わたしはかわらずげんきでいるよ)

私は変わらず元気でいるよ

(きょうはどんなことが？きのうはどんなことが？)

今日はどんなことが？昨日はどんなことが？

(ねえきみはげんきにしていますか？)

ねえ君は元気にしていますか？

(ふかいよるのそこにしずむからだ)

深い夜の底に沈む体

(ざわつくむね、ひとみとじたまま)

ざわつく胸、瞳閉じたまま

(きづけばさしこむあさひのかけらが)

気づけば差し込む朝日のかけらが

(やさしくほおをなでる)

優しく頬を撫でる

(まどからみえたきぎがゆれるたび)

窓から見えた木々が揺れる度

(きみのすむあのまちのおもいでが)

君の住むあの町の思い出が

(あふれておぼれそうになるけど)

溢れて溺れそうになるけど

(おなじそらのしたでほら)

同じ空の下でほら

(いきているきみにはいつまでもただ)

生きている君にはいつまでもただ

(りふじんなかなしみにのみこまれることなく)

理不尽な悲しみに飲み込まれることなく

(やさしくおだやかなくらしのなか)

優しく穏やかな暮らしの中

(わらっていてほしいから)

笑っていてほしいから

(きみはおぼえてますかあのひびを)

君は覚えてますかあの日々を

(ともにすごしたふうけいを)

共に過ごした風景を

(わたしがかえるばしょはいまでもきみとおなじ)

私が帰る場所は今でも君と同じ

(いつのひかもういちどわらいあえるそのひを)

いつの日かもう一度笑い合えるその日を

(おもいながらねむりにつく)

思いながら眠りにつく