モルモットと傭兵

(はくのにつかれて)

吐くのに疲れて

(そのともだちはぐっすりねむる)

そのともだちはぐっすり眠る

(とびらのむこうに)

扉の向こうに

(いったあのこはげんきにしてるかな)

行ったあの子は元気にしてるかな

(きかいだらけのしろいへやのなか)

機械だらけの白い部屋の中、

(にがいくっきーおやつにたべながら)

苦いクッキーおやつに食べながら

(ともだちとおそとをながめてた)

ともだちと　お外を眺めてた

(いつかあのおかをこえて)

「いつかあの丘を越えて、

(そのむこうでふわふわひつじとおどりたいな)

その向こうでふわふわ羊と踊りたいな！」

(ただぼくはそっとうなずいた)

ただ僕はそっと頷いた

(あれはかべにえがかれたえだよだなんてねいえない)

「あれは壁に描かれた絵だよ」だなんてね、言えない

(いーよいいよ)

いーよ、いいよ、

(もるもっとのきもちなんてわからなくていいよ)

モルモットの気持ちなんてわからなくていいよ

(いーよいいよ)

いーよ、いいよ、

(しっぽがきれたきんぎょすくっちゃったっていいよ)

しっぽが切れた金魚救っちゃったっていいよ

(ああぼくのせかいに)

ああ、僕の世界に

(おしまいがおとずれるまで)

おしまいが訪れるまで

(よどんだくうきをすってはいて)

淀んだ空気を吸って、吐いて

(がたがたふるえる)

がたがた震える

(そのともだちにもうふをかぶせる)

そのともだちに 毛布を被せる

(ちゅうしゃのきらいな)

注射の嫌いな

(あのこのかわりにぼくはまえへでる)

あの子の代わりに 僕は前へ出る

(２４じかんへいそくくうかん)

24時間 閉塞空間

(はとどけいのちくたくなるおとが)

鳩時計のチクタクなる音が

(やけにみみにはりついていた)

やけに耳に 張り付いていた

(きっとこのえほんみたいに)

「きっとこの絵本みたいに、

(かみさまがぼくたちをそとにだしてくれるよ)

神様が僕たちを外に出してくれるよ！」

(ただぼくはそっとほほえんだ)

ただ僕はそっと 微笑んだ

(ぼくらはひとじゃないからむりだよなんてねいえない)

「僕らは人間じゃないから無理だよ」なんてね、言えない

(いーよいいよ)

いーよ、いいよ、

(もるもっとのきもちなんてわからなくていいよ)

モルモットの気持ちなんてわからなくていいよ

(いーよいいよ)

いーよ、いいよ、

(きたないふくおはなでうめつくしちゃっていいよ)

汚い服 お花で 埋め尽くしちゃっていいよ

(ああがらすごしの)

ああ、ガラス越しの

(べつせかいからふってくる)

別世界から 降ってくる

(さげすんだめをすっとみた)

蔑んだ目を すっと見た

(ぱっとくらくなるへや)

ぱっと暗くなる部屋、

(このしせつのせいめいそうちがぜんていしした)

この施設の 生命装置が 全停止した

(ただぼくはじっとめをこらした)

ただ僕は じっと目を凝らした

(こわがりなともだちはぼくにしがみついた)

怖がりなともだちは僕にしがみついた

(とおくでひびくどーんという)

遠くで響く どーんという

(はなびにもにたなつかしいざつおん)

花火にも似た懐かしい雑音

(ぐらりんりんり)

ぐらりん、りんり、

(しょうげきそっとうすきまからかやくのにおい)

衝撃、卒倒、隙間から火薬の匂い

(ああないてさけぶなかまにうもれながら)

ああ、泣いて叫ぶ 仲間に埋もれながら

(くずれるかべのえをぼっとみてた)

崩れる壁の 絵をぼっと見てた

(いーのいいの)

いーの？いいの？

(かべむこうのさんそはいにいれちゃってもいいの)

壁向こうの酸素 肺に入れちゃってもいいの？

(いーのいいの)

いーの？いいの？

(れーざーせんじゃないひかりあびちゃってもいいの)

レーザー線じゃない光 浴びちゃってもいいの？

(ああがらがらと)

ああ、ガラガラと

(くずれたかべのさきに)

崩れた壁の先に

(あおぞらごしのかみさまをみた)

青空越しの 神様を見た