Silent Glory

(はいけいなんてへんかな)

「拝啓なんて変かな？

(いまさらだとおもわれるかな)

今更だと思われるかな

(だけどおしまいだしさ)

だけどお終いだしさ

(ひとことなにかのこすのなら)

一言何か残すのなら

(おまえがいいとおもったんだ)

お前が良いと思ったんだ」

(わらってくれたらまんてんか)

笑ってくれたら満点か

(ないたらゆきでもふるかもなぁ)

泣いたら雪でも降るかもなぁ

(いいひとだったおしいひとをと)

『いい人だった』『惜しい人を』と

(いわれたらそれでじゅうぶんか)

言われたらそれで十分か

(うぞうむぞうにすくいをあたえ)

有象無象に救いを与え

(たべんがいたについたくち)

多弁が板についた口

(びじれいくしかうみだせない)

美辞麗句しか生み出せない

(ただあいたいなんていえるか)

ただ会いたい、なんて言えるか

(そばにいてなんてらしくないか)

傍にいて、なんてらしくないか

(きょうはもうおしまいだ)

今日はもうおしまいだ

(こざかしいせりふがでてこない)

小賢しい台詞がでてこない

(わすれられなくなればいいな)

忘れられなくなればいいな

(のろわれてくれたらうれしいな)

呪われてくれたら嬉しいな

(おれだけのためにくるしめ)

俺だけのために生きてよ

(なんていきてるうちにいえばよかった)

なんて　生きてるうちに言えばよかった

(こいにようにはきようすぎるまま)

恋に酔うには器用すぎるまま

(おわってしまったはるを)

終わってしまった春を

(なかったことにしたくないな)

無かったことにしたくないな

(でもひつようないもんな)

でも必要ないもんな

(ごめんねなんてしらないもんな)

ごめんねなんて知らないもんな

(おまえじゃなきゃふさげない)

お前じゃなきゃ塞げない

(ひびわれがおれにだけあるなんて)

ひび割れが俺にだけあるなんて

(きづかなきゃよかったな)

気付かなきゃよかったな

(あーあ)

あーあ

(かがやかしいほまれをぬいだひとりのおれをみすえるめはねむれぬよるをともすひかりだ)

輝かしい誉を脱いだひとりの俺を見据える目は眠れぬ夜を灯す光だ

(いいあらわせずにこえはないだ)

言い表せずに声は凪いだ

(だせないこたえはなかった)

出せない答えはなかった

(しらないことなどなかった)

識らない事などなかった

(かしこくいきてみたけれど)

賢く生きてみたけれど

(ておくれだったおろかものだ)

手遅れだった愚か者だ

(はいけいなんてかこうかな)

拝啓、なんて書こうかな

(とくべつななにしたかったけど)

特別な名にしたかったけど

(ぼんようでおてあげだ)

凡庸でお手上げだ

(これをあいとよぶんでしょ)

これを愛と呼ぶんでしょ？

(しんでいいなんておもうか)

死んでいいなんて思うか

(きえたいなんておもうものか)

消えたいなんて思うものか

(あがいたっておしまいだ)

足掻いたってお終いだ

(なにかいわなきゃいけないのにな)

何か言わなきゃいけないのにな

(くらいやみにみをゆだね)

暗い闇に身を委ね

(てばなすまぎわにゆきがふる)

手放す間際に雪が降る

(もうみえないおまえのほほ)

もう見えないお前の頬

(つたうしずくがひびをみたす)

伝う雫がひびを満たす

(どんなじょうぜつなこっかいもかなわないぜっくでまくをひいて)

どんな饒舌な告解も敵わない絶句で幕を引いて

(ようやくおれはくちをとじた)

ようやく俺は口を閉じた

(しずかにねむれるきがしたんだ)

静かに眠れる気がしたんだ