居酒屋

(ねえきいたかい)

ねえ聞いたかい？

(ヴぉるふがんぐがかえってきたとさ)

ヴォルフガングが帰ってきたとさ

(もーつぁるとのむすこは)

モーツァルトの息子は

(きせきのむすこ)

キセキの息子

(いまじゃただのひと)

今じゃただの人

(あわれなおやじ)

哀れな親父

(だれもみむきもしない)

だれも見向きもしない

(ぱりからかえってきた)

パリから帰ってきた

(いちもんなしでまるでこじき)

一文無しでまるで乞食

(おやじはふくしょくを)

親父は復職を

(ねがいでた)

願い出た

(だいしきょうさまおねがいでございます)

大司教様お願いでございます

(むすこをもういちどやとってください)

息子をもう一度雇ってください

(でないとわがやは うえじにしてしまいます)

でないと我が家は 飢え死にしてしまいます

(むすこはぱりでわたしのたくわえを つかいはたしました)

息子はパリで私のたくわえを 使い果たしました

(これがしにかりたかねまでも)

これがしに借りた金までも

(むすこがわたしにひざまずけばぶれいをわすれて またつかってやらぬでもない)

息子が私に跪けば無礼を忘れて また使ってやらぬでもない

(くいあらためさせます)

悔い改めさせます

(むすこはてんさい)

息子は天才

(ばくちにまけて)

博打に負けて

(おんなをあさる)

女をあさる

(ほらふきのてんさい)

ホラ吹きの天才

(ぱりでははおやを)

パリで母親を

(しなせてしまった)

死なせてしまった

(むだづかいのてんさい)

無駄使いの天才

(ついにだいしきょうに)

ついに大司教に

(こびうる)

媚びうる

(さあヴぉるふがんぐあやまるのだ)

さあヴォルフガング　謝るのだ

(わたしはてんさいはきぞくよりえらいとおもっていました)

私は天才は貴族より偉いと思っていました

(でもいまのわたしはなみいかのにんげんです)

でも今の私は並み以下の人間です

(ひざまずけもっとひくく)

跪け　もっと低く

(わたしのくつにくちづけせよ)

私の靴に口付けせよ

(あるこはくしゃく なみいかのにんげんにしごとがあるか)

アルコ伯爵 並み以下の人間に仕事があるか

(きょうかいのおるがんひきなどいかがでしょう)

教会のオルガン弾きなどいかがでしょう

(ひけるのか)

弾けるのか？

(へたくそが)

へたくそが！

(ひけるとも)

弾けるとも！

(ヴぉるふがんぐ)

ヴォルフガング

(ぶらぼー)

ブラボー！

(もりあがってるね)

盛り上がってるね！

(ここざるつぶるくの ぜんりょうでおんわなしょみんのみなさん)

ここザルツブルクの 善良で温和な庶民のみなさん

(しばいがすきなひといる)

芝居が好きな人いる？

(はい)

はい！

(これはこれはもーつぁるとくんひとりか)

これはこれはモーツァルトくん一人か

(わたしがこのまちで さいこうのえんたーていめんとをごらんいれよう)

私がこの街で 最高のエンターテイメントをご覧入れよう