陽炎

(あなたはきっとしらないでしょう)

貴方はきっと知らないでしょう

(よあけにめざめたわたしがどんなふうにどんなおもいで)

夜明けに目覚めた私がどんな風にどんな想いで

(もういちどめをとじたのか)

もう一度目を閉じたのか

(わたしはきっとしらないでしょう)

私はきっと知らないでしょう

(あなたがすぼめていたかたにどんなものがのしかかっていて)

貴方がすぼめていた肩にどんな物がのしかかっていて

(なぜためいきついたのか)

なぜため息ついたのか

(どあをしめるちいさなおとがいまでもひびいてる)

ドアを閉める小さな音が今でも響いてる

(ああさよならだねわたしたちずっといっしょにいられる)

ああ、さよならだね　私たちずっと一緒に居られる

(そうおもってあるいてたあのひああさよならだね)

そう思って歩いてたあの日　ああ、さよならだね

(しろくてちいさいはながさいた)

白くて小さい花が咲いた

(あなたがわたしのなまえをよんだとき)

貴方が私の名前を呼んだとき

(このむねのなかではずかしそうにゆれていた)

この胸の中で恥ずかしそうに揺れていた

(たいせつなものはおたがいあのひとかわったよね)

大切なものはお互い、あの日と変わったよね

(あああきらめようわたしたちそうおもうことだけが)

ああ、諦めよう　私たちそう思うことだけが

(あいとよべるかもしれない)

愛と呼べるかもしれない

(ああさよならはきっとかわっていくあなたじゃなくて)

ああ、さよならはきっと変わっていく貴方じゃなくて

(かわらないあなたをだきしめられないことね)

変わらない貴方を抱きしめられないことね

(ああさよならだとわかっていたのに)

ああ、さよならだと分かっていたのに

(いまになってどうしてくるしくなるの)

今になってどうして苦しくなるの

(ああいまさらおもいだしてるのは)

ああ、今更思い出してるのは

(あああのひのよるかげろうのさだめのようにであって)

ああ、あの日の夜　陽炎の定めのように出会って

(きえそうないのちごとあなたがだいてくれたこと)

消えそうな命ごと貴方が抱いてくれたこと

(でもさよならだね)

でも、さよならだね