眠れ緋の華

(おしよせるかなしみにながされてしまわぬように)

押し寄せる哀しみに流されてしまわぬように

(ふたりきりこぎだしてどこまでもいきたかった)

二人きり漕ぎ出して何処までも生きたかった

(ひそやかなねがいなどそのまえではむりょくで)

密やかな願いなどその前では無力で

(ささやかなつぶやきもかきけされてしまうなら)

ささやかな呟きも掻き消されてしまうなら

(なかないこころでおわらせましょう)

泣かない心で終わらせましょう

(ふくらよつめたいいのりにかわれ)

ふくらよ冷たい祈りに変われ

(ひいろのはなびらそめあげましょう)

緋色の花弁染め上げましょう

(ほらきょむがひらいするしずかにまいおりる)

ほら虚無が飛来する静かに舞い降りる

(まえのよできめられたちのさだめしっていたけど)

前の世で決められた血の運命知っていたけど

(あのひとのやくそくをいつまでもまもりたかった)

あの人の約束をいつまでも守りたかった

(やわはだにくいこんだひるまきのいたみさえ)

柔肌に喰い込んだ蛭巻の痛みさえ

(またはながさくたびにわすれさせてくれるから)

また花が咲く度に忘れさせてくれるから

(なかないこころでおわらせましょう)

泣かない心で終わらせましょう

(こんなにきれいなせつなになって)

こんなに綺麗な刹那になって

(ひいろのはなびらそめあげましょう)

緋色の花弁染め上げましょう

(ほらかんびなてのひらがてまねくそのほうへ)

ほら甘美なてのひらが手招くそのほうへ

(あけはなたれよそこのくにつらなりきたれそこのやみ)

開け放たれよ底の国連なり来たれ底の闇

(さっきまでふるえてたまつげもくろかみもふしぎねもうなにもかんじないほどに)

さっきまで震えてた睫毛も黒髪も不思議ねもう何も感じない程に

(なかないこころでおわらせましょう)

泣かない心で終わらせましょう

(つらぬくこうまのあらしのなかで)

貫く降魔の嵐の中で

(ひいろのはなびらねむらせましょう)

緋色の花弁眠らせましょう

(ほらきょむがひらいする)

ほら虚無が飛来する

(しずかにめをとじる)

静かに眼を閉じる

(ねむれねむれひのはなよ)

眠れ眠れ緋の華よ