カートニアゴ

(よどんだろじうらいしけとばせば)

澱んだ路地裏　石蹴飛ばせば

(ぎらっとくろねこふりむくめとめ)

ぎらっと黒猫　振り向く目と目

(だいだいのゆうぐれだまってひきずる)

橙の夕暮れ　黙って引きずる

(おもいあしもとにやにのびたかげ)

重い足元に　嫌に伸びた影

(かぜつかまえて)

風つかまえて

(ゆうぞらひゅるりとものしりがおした)

夕空ひゅるりと物知り顔した

(からすがみおろすひとのざま)

カラスが見下ろす人のざま

(のんべんだらりらっとだらりらっと)

のんべんだらりらっと　だらりらっと

(いきたあたしにかなしいしらせつげるように)

生きたあたしに悲しい報せ告げるように

(いまてんからつかいまいおりた)

いま天から使い　舞い降りた

(まっくろいからだどうしつうじあって)

真っ黒いからだ同士　通じ合って

(ひみつのいけないうちあわせをするように)

秘密のいけない打ち合わせをするように

(ゆうやみにひびく)

夕闇に響く

(かあとかあとにゃあとかあとにゃあご)

カアとカアとニャアとカアとニャアゴ

(ふおんなろじうらまよってどんづき)

不穏な路地裏　迷ってドン突き

(いくももどれぬじごくいっちょうめ)

行くも戻れぬ　地獄一丁目

(こらのらくがきろぼうのたんぽぽ)

子らの落書き　路傍のタンポポ

(いたずらにふくしらわたのはね)

悪戯に吹く　白綿の羽根

(かぜながされて)

風ながされて

(ゆうぞらふらふらなにくわぬかおで)

夕空ふらふら何食わぬ顔で

(みしらぬまちまでとんでけほれ)

見知らぬ街まで飛んでけ　ほれ

(まんべんなくわらってなんとなく)

まんべんなく笑って　なんとなく

(いきたあたしをあわれんであざわらうように)

生きたあたしを憐れんで嘲笑うように

(くろねことからすがにやにや)

黒猫とカラスがニヤニヤ

(まっくろいめでにらんでさよならって)

真っ黒い目で睨んで　さよならって

(さいごにいいのこすことばをせがむように)

最後に言い残す言葉をせがむように

(ぶきみにひびく)

不気味に響く

(かあとかあとにゃあとかあとにゃあご)

カアとカアとニャアとカアとニャアゴ

(くろねこみあげたひとのざま)

黒猫見上げた人のざま

(なんべんでもまよっていきどまって)

何遍でも迷って　行き止まって

(いきるあたしをあきれながらさとすように)

生きるあたしを呆れながら諭すように

(くろねことからすがにやにや)

黒猫とカラスがニヤニヤ

(まっくろいめでにらんでばかだねって)

真っ黒い目で睨んで　馬鹿だねって

(さいごにやりのこしたことはなんだね？って)

最後にやり残したことは何だね？って

(といただしてる)

問い質してる

(かあとかあとにゃあとかあとにゃあご)

カアとカアとニャアとカアとニャアゴ