ファントム（Phantom）

(けんらんなるげきじょうにぬいついた)

絢爛なる劇場に縫い付いた

(しあわせをめざすことはかいなの)

幸せを目指すことは怪なの？

(そうれいなるきげきのくわいあ)

壮麗なる喜劇のクワイア

(ねぇひげきのひとつもうたってくれないの)

ねぇ悲劇の一つも歌ってくれないの？

(まってていまたすけにいくよ)

待ってて　今助けに行くよ

(しゃんでりあがおちるぼうこくのように)

シャンデリアが落ちる　亡国のように

(さあけがはないかい)

さあ　怪我はないかい？

(じゃまものはいないかい)

邪魔者はいないかい？

(もうずっとずっとはなれないで)

もう　ずっとずっと離れないで

(たんじゅんでふじゅんであいされてみたいだけ)

単純で　不純で　愛されてみたいだけ

(あまねくほしがすべるかせにあいただけ)

遍く星が統べる枷に飽いただけ

(かんしゅうへぶたいへどうでもいいそんなの)

観衆へ　舞台へ　どうでもいいそんなの

(ただこのうでのなかでねむりにつくまで)

ただこの腕の中で眠りにつくまで

(だれにもさわらせない)

誰にも触らせない

(じゅんぜんたるそれはやきついた)

純然たるそれは焼きついた

(まるでせいしょにでてくるてんしよ)

まるで聖書に出てくる天使よ

(こんとくなるむくのほほえみ)

懇篤なる無垢の微笑み

(あぁてにいれたいならうばえばいいんだった)

あぁ手に入れたいなら奪えばいいんだった

(きみのいえのじゅうしょかぞくしょくじかぐのはいち)

君の家の住所　家族　食事　家具の配置

(であったひとのようしかんしけんしそうじはいき)

出会った人の容姿　監視　検死　掃除　廃棄

(てつおりにいれてうみにしずめ)

鉄檻に入れて海に沈め

(ばらばらはげすいへほうった)

バラバラは下水へ放った

(どいてどいてどけよ)

どいて　どいて　どけよ

(てんしさまであらせられるぞ)

天使様で在らせられるぞ

(ああだいじょうぶだった)

...ああ大丈夫だった？

(きみのうたにみんなすたんでぃんぐおべーしょんして)

君の歌に皆スタンディングオベーションして

(たたえることすらもゆるせなくなった)

称えることすらも許せなくなった

(さあおびえないでひみつのばしょにいこう)

さあ　怯えないで　秘密の場所に行こう

(もうずっとずっとはなさないよ)

もう　ずっとずっと離さないよ

(たんじゅんでふじゅんであいされてみたいだけ)

単純で　不純で　愛されてみたいだけ

(ひかりがとどかなくてもきみがいればいい)

光が届かなくても君がいればいい

(ねぇなんでわかってあいつはもういないよ)

ねぇなんで　分かって　アイツはもういないよ

(ただこのうでのなかでねむればいいだけ)

ただこの腕の中で眠ればいいだけ

(だれにもけがさせない)

誰にも穢させない

(こんなにうばってもじょうじゅしないそれが)

こんなに奪っても　成就しないそれが

(こいごころなのかとわからないまま)

恋心なのかと　分からないまま

(きみのじひにくさったこころがしみていたいよ)

君の慈悲に腐った心が染みて痛いよ

(でもそれいじょうにただうれしかった)

でもそれ以上にただ嬉しかった

(もうおわらせようおそすぎたふぃなーれ)

もう終わらせよう　遅すぎたフィナーレ

(れんびんでもすくわれている)

憐憫でも救われている

(さよなら)

さよなら

(たんじゅんなむじゅんでうまれてはじめての)

単純な　矛盾で　生まれて初めての

(かふくにさいなまれひとりえみなくだけ)

禍福に苛まれ一人　笑み　泣くだけ

(かんしゅうもぶたいもすべてはなくなったよ)

観衆も　舞台も　全ては無くなったよ

(こくとうとうたるよるにきえてゆくだけ)

黒滔々たる夜に消えてゆくだけ

(それからのゆくえは)

それからの行方は

(だれにもしられていない)

誰にも知られていない

(ばいばい)

バイバイ

(ばいばい)

バイバイ

(ばいばい)

バイバイ