空を満たして

(かきあつめたかけらでかおをつくって ひとみはいったひかりでゆめをにごした)

搔き集めた欠片で顔を作って　 瞳入った光で夢を濁した

(ふさぎたおしてとじたひふはうらがえって)

塞ぎ倒して閉じた皮膚は裏返って

(なぞるわだちくしゃみをしたらふみはずして)

なぞる轍　くしゃみをしたら踏み外して

(だれかのしおりきのうにはさんで はきだすこたえはめいろのようで)

誰かの栞昨日に挟んで 吐き出す答えは迷路のようで

(ふつうをもとめのどはからまって おもたいあたまとけてく)

普通を求め喉は絡まって 重たい頭　融けてく

(ひえたくうきではいほうをみたして)

冷えた空気で肺胞を満たして

(ないだいのちでないぞうをみたして)

凪いだ命で内臓を満たして

(すんだゆえきでさいぼうをみたして)

澄んだ輸液で細胞を満たして

(みちのこえでこのくうをみたして)

未知の声でこの空を満たして

(ひえたくうきではいほうをみたして)

冷えた空気で肺胞を満たして

(ないだいのちでないぞうをみたして)

凪いだ命で内臓を満たして

(すんだゆえきでさいぼうをみたして)

澄んだ輸液で細胞を満たして

(みちのこえでこのくうをみたして)

未知の声でこの空を満たして

(ひびわれてくからだにみずがはいって つぎなおしたえだはかれてほねになった)

罅割れてく体に水が入って 継ぎ直した枝は枯れて骨になった

(ちぎれたしたはすでにあたまにねをはっていて)

千切れた舌は既に頭に根を張っていて

(にじむかたちめがねをしてもつかめなくて)

滲む形 眼鏡をしても掴めなくて

(だえきをまじえてじぶんをしって しせんのかいりはふたえになって)

唾液を交えて自分を知って 視線の乖離は二重になって

(つぎはぎだらけのことばでないて ねむたいあたまとけてく)

継ぎ接ぎだらけの言葉で泣いて 眠たい頭　融けてく

(ひえたくうきではいほうをみたして)

冷えた空気で肺胞を満たして

(ないだいのちでないぞうをみたして)

凪いだ命で内臓を満たして

(すんだゆえきでさいぼうをみたして)

澄んだ輸液で細胞を満たして

(みちのこえでこのくうをみたして)

未知の声でこの空を満たして

(はねたでんきでのうりをみたして)

跳ねた電気で脳裏を満たして

(さえたていぎでろんりをみたして)

冴えた定義で論理を満たして

(なれたひっちでれんじをみたして)

慣れた筆致で連辞を満たして

(すべたえいちでれきしをみたして)

統べた叡智で歴史を満たして

(ふったけいじでぺーじをみたして)

降った啓示で頁を満たして

(うえたすうじでだいちをみたして)

殖えた数字で大地を満たして

(ずれたえんきでみらいをみたして)

ズレた塩基で未来を満たして

(みちのことでこのくうをみたして)

未知の異でこの空を満たして