人狼狂詩曲

(ひとつひりつくしょうどうが)

一つ、ひりつく衝動が

(ひらめきりせいにいちげきを)

閃き理性に一撃を

(ふたつふらちなよびこえが)

二つ、不埒（ふらち）な喚（よ）び声が

(ふるえるやせいをおびきだす)

震える野性を誘（おび）き出す

(みっつみそぎのちしぶきは)

三つ、禊（みそぎ）の血飛沫は

(みおひきれんごくへとそそぎ)

水脈（みお）引き煉獄へと注ぎ

(よっつよるべなきわれら)

四つ、寄る辺なき我ら

(よごとあしゅらにくちづけを)

夜ごと阿修羅に接吻（くちづけ）を

(よるのとばりのうらがわで)

夜の帳の裏側で

(うたわれたでぃばいんこめでぃ)

歌われたディバインコメディ

(ざんこくなれでぃふぉるとぅーな)

残酷なレディフォルトゥーナ

(こよいもまたちにおどる)

今宵もまた血に踊る

(ねむりをゆめみるときにさえ)

眠りを夢見るときにさえ

(かためはしかとみひらいて)

片目はしかと見開いて

(しずかにどくをのむように)

静かに毒を呑むように

(しびれたしたをつきだして)

痺れた舌を突き出して

(ねはんにまどろむときにさえ)

涅槃（ねはん）に微睡（まどろ）むときにさえ

(やいばはしかとにぎりしめ)

刃（やいば）はしかと握り締め

(きょうふにすめるせいじゃくに)

恐怖に澄める静寂に

(こだますわれらのこもりうた)

谺（こだま）す我らの子守唄

(わたしのこえがきこえるか)

私の声が聞こえるか?

(わたしのさけびがきこえるか)

私の叫びが聞こえるか?

(いつついばらのしんだいで)

五つ、茨の寝台で

(いけずくらせつとそいねれば)

いけずく羅刹と添い寝れば

(むっつむざんにやぶれたる)

六つ、無残に破れたる

(むくなるほおずきはなざくろ)

無垢なる鬼灯（ほおずき）、華柘榴（はなざくろ）

(ななつなぶれやしろあげは)

七つ、嬲（なぶ）れや白揚羽（しろあげは）

(なめずりはいずりみもだえて)

舐めずり這いずり身悶（みもだ）えて

(やっつやがてはいきたえて)

八つ、やがては息絶えて

(やけてあみだへきえばやな)

焼けて阿弥陀へ滅（き）えばやな

(よみのとばりのうらがわで)

黄泉の帳の裏側で

(つづられたでぃばいんこめでぃ)

綴られたディバインコメディ

(むじひなるでうすえくすまきな)

無慈悲なるデウスエクスマキナ

(こよいついにあばかれる)

今宵ついに暴かれる

(しすたすをかぐわうときにさえ)

シスタスを香（かぐわ）うときにさえ

(そのめをしかとはなすなよ)

その眼（め）をしかと離すなよ

(ごくしゃにみみをすますように)

獄舎に耳を澄ますように

(わたしのうたにこたえろよ)

私の歌に応えろよ

(すべてがこわれるときにさえ)

すべてが壊れるときにさえ

(わたしをしかとだきしめろ)

私をしかと抱きしめろ

(ばんかにくるえるよあけまえ)

挽香（ばんか）に狂える夜明け前

(こだますわれらのそうそうか)

谺（こだま）す我らの葬送歌

(わたしのこえがきこえるか)

私の声が聞こえるか?

(わたしのさけびがきこえるか)

私の叫びが聞こえるか?