ミュージシャン 中島みゆき

(いまからにじゅうねんごにもういちどあったなら)

今から20年後に　もう一度会ったなら

(ぼくはなにをしてるだろう)

僕は何をしてるだろう

(どうやってくらしてるだろう)

どうやって暮らしてるだろう

(ほかにできることもなしこのとしになってるから)

他にできることもなし　この齢になってるから

(じっとべんちでくらしてる)

じっとベンチで暮らしてる

(それよりほかないだろうか)

それより他ないだろうか

(じんせいはながすぎてぼくのてにおえない)

人生は長過ぎて僕の手に負えない

(なまいきなわかいひのつけがまわってくるのか)

生意気な若い日のツケが回ってくるのか

(みゅーじしゃんさみしいことをいわないで)

「ミュージシャン　さみしいことを言わないで」

(みゅーじしゃんながいきはつらいことじゃないはずよ)

「ミュージシャン　長生きは辛いことじゃないはずよ」

(はたちのころとはちがうあのころはひとりだった)

20才の頃とは違う　あの頃はひとりだった

(きずぐちをなめるようにおとにひたっていたけれど)

傷口を舐めるように　音に浸っていたけれど

(あいするものにあたえてやれるものがほしいんだ)

愛する者に与えてやれるものが欲しいんだ

(みがってすぎるあこがれを)

身勝手過ぎる憧れを

(おさえこむのがたたかいさ)

押さえ込むのが闘いさ

(ひざをかかえなくのはもうたくさんだけれど)

膝を抱え泣くのはもうたくさんだけれど

(ふたりでないてるのはなおさらつらいじゃないか)

ふたりで泣いてるのはなおさら辛いじゃないか

(みゅーじしゃんかなしいことをいわないで)

「ミュージシャン　かなしいことを言わないで」

(みゅーじしゃんどこでもついてゆけるものよおんなは)

「ミュージシャン　何処でもついてゆけるものよ女は」

(じゅうにさいのころやきゅうせんしゅになりたかった)

12才の頃　野球選手になりたかった

(いまでもゆめにみるさまうんどにあがってる)

今でも夢にみるさ　マウンドにあがってる

(ゆめのなかではいつもひーろーさ)

夢の中ではいつもヒーローさ

(やせっぽちのくせにふしぎとひーろーさ)

やせっぽちのくせに不思議とヒーローさ

(だけどはちかいのうら)

だけど　8回の裏

(なげかたをわすれてまうんどをおろされる)

投げ方を忘れてマウンドを降ろされる

(やりきれぬわらいばなしさ)

やりきれぬ笑いばなしさ

(かなしいゆめさ)

かなしい夢さ

(かうんとがながれだすとおろかなちがさわぎだす)

カウントが流れだすと　愚かな血が騒ぎだす

(すましかえったまちのかどをはしゃぎながらかけてゆく)

すまし返った街の角を　はしゃぎながら翔けてゆく

(みゅーじしゃんさみしいことをいわないで)

「ミュージシャン　さみしいことを言わないで」

(みゅーじしゃんながいきはつらいことじゃないはずよ)

「ミュージシャン　長生きは辛いことじゃないはずよ」

(みゅーじしゃんかなしいことをいわないで)

「ミュージシャン　かなしいことを言わないで」

(みゅーじしゃんどこでもついてゆけるものよおんなは)

「ミュージシャン　何処でもついてゆけるものよ女は」