ハーテッド・ドール

(きりとったおりのかたすみでひざかかえめをつむっている)

切り取った檻の片隅で膝抱え目を瞑っている

(ひえたとかいのたいかんおんどちいさめのといきひとつくうきよごした)

冷えた都会の体感温度　小さめの吐息一つ空気汚した

(あいそわらいときたいはずれをせめたて)

愛想笑いと期待はずれを責めたて

(こもりがちのこえがはずかしくて)

こもりがちの声が恥ずかしくて

(はにかむこどものふりでごまかした)

はにかむ子供の振りでごまかした

(あくびのふりくびをかしげておるごーるをだいたにんぎょうが)

欠伸のふり首を傾げてオルゴールを抱いた人形が

(わたしをみてほほえんでくるからうとましくてせんりつをふさいだ)

私を見て嘲笑んでくるから疎ましくて旋律を塞いだ

(えりごのみしたかみさまのかってこわれかけのおもちゃはなおらない)

選り好みした神様の勝手　壊れかけのオモチャは直らない

(きまぐれやてちがいをただしてひとつくらいもつことをゆるして)

気まぐれや手違いを糾してひとつくらい持つことを赦して

(こころというおりどうしたってぬきとることそれすらかなわない)

心という澱どうしたって抜き取ることそれすら叶わない

(うめこんだそのいみをねえ、どうかおしえて)

埋め込んだその意味を　ねえ、どうか教えて

(まどごうしのむこうがわおきざりのまっしろいへや)

窓格子の向こう側　置き去りの真っ白い部屋

(だいじょうぶだよっていいきかすんだ)

だいじょうぶだよって言い聞かすんだ

(れっとうのたねのめがげんそうにめぶいた)

劣等の種の芽が幻想に芽吹いた

(そだったひにくをきどったえがおでこさえたかめんなきわらいぴえろ)

育った皮肉を気取った笑顔で拵えた仮面泣き笑いピエロ

(そんなふじつのさいのうをもってふりまくのをだれがとがめるの？)

そんな不実の才能をもって振りまくのを誰が咎めるの？

(あたえるでもないのにもとめたってさしだすべきものがみあたらない)

与えるでもないのに求めたって差し出すべきモノが見当たらない

(みすかされることをこわがってにぶいふりすることをゆるせよ)

見透かされることを怖がって鈍い振りすることを赦せよ

(ねぶみのないすうこうなげんどうしらないのやりかたもわからない)

値踏みのない崇高な言動　知らないのやり方もわからない

(あいをこうことばなどはくしかくなんてない)

愛を請う言葉など吐く資格なんて無い

(となりあううつくしさをそのなでよぶんだ)

隣り合う美しさをその名で呼ぶんだ

(そんなきれいなむくさをこのからだにもください)

そんな奇麗な無垢さをこの身体にもください

(えりごのみしたかみさまのかってこわれかけのおもちゃはなおらない)

選り好みした神さまの勝手　壊れかけのオモチャは直らない

(きまぐれやてちがいをただしてひとつくらいもつことをゆるして)

気まぐれや手違いを糾してひとつくらい持つことを赦して

(かりもののしんぞうがずっとかなしみのしんごうをおくるから)

借りものの心臓がずっと愛しみの信号を送るから

(ねえどうかそのめにはいろめくきせつを)

ねえどうかその芽には色めく季節を

(すこしだけいきをとめてたしかめて)

少しだけ息を止めて確かめて