黄泉桜

(ふかくやみよりいでしはおぼろづき)

深く闇より出でしは朧月

(あわきこんじきのひかり　ちへととどけたもう)

淡き金色の光 地へと届けたもう

(うすべににそまるわたしはよみざくら)

薄紅に染まる私は黄泉桜

(こよいさきみだれさまようみたまおくりましょう)

今宵咲き乱れ彷徨う御霊送りましょう

(ちにしばりしばられるそのこころをときわかれをおしむことなきよう)

地に縛り縛られるその心を解き別れを惜しむ事なきよう

(うつくしきはなさかせつぎなるたびじへむかうかれらのはなむけに)

美しき華咲かせ次なる旅路へ向かう彼等の餞に

(のこされることなげきそのさきをのろいかなしみのそこしずまぬよう)

残されること嘆きその未来を呪い悲しみの底沈まぬよう

(うつくしきはなさかせうすべにいろをこよいもかれらにとどけましょう)

美しき華咲かせ薄紅色を今宵も彼等に届けましょう

(ながきえにしついえたきさらぎのころ)

永き縁潰えた如月の頃

(はるあかつきにたびだつわがいとしきみよ)

春暁に旅立つ我が愛し君よ

(ちにしばりしばられるそのこころをときわかれをおしむことなきよう)

地に縛り縛られるその心を解き別れを惜しむ事なきよう

(うつくしきはなさかせつぎなるたびじへむかうきみへのはなむけに)

美しき華咲かせ次なる旅路へ向かう君への餞はなむけに

(のこされることなげくこともゆるされないわたしにひとつできること)

残されること嘆くことも許されない私にひとつできる事

(うつくしきはなさかせうすべにいろをなみだにかえてちらせてなこう)

美しき華咲かせ薄紅色を涙に代えて散らせて泣こう

(ひらりまいちるはなびらよはるかよもつくにまで)

ひらり舞い散る花弁よ遥か黄泉国まで

(あまたのこころとともにかれらのみたまをおくりましょう)

数多の心と共に彼等の御霊を送りましょう

(のこされしひとのおもいよどうかしずむことなく)

残されし人の想いよどうか沈むことなく

(ちりゆくうすべにいろとともにうつくしくさきほこれ)

散りゆく薄紅色と共に美しく咲き誇れ

(ながきえにしがついえたとおききさらぎのころ)

永き縁が潰えた遠き如月の頃

(はるあかつきにわかれたいとしきみへおくるはなびらを)

春暁に別れた愛し君へ送る花弁を

(うすべにいろにそまりゆくわたしはよみざくら)

薄紅色に染まりゆく私は黄泉桜

(うつくしきはなちらせてたびだつきみへのはなむけとなれ)

美しき華散らせて旅立つ君への餞となれ