外郎売り・参
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問題文
(あのなげしのながなぎなたは、たがながなぎなたぞ。)
あの長押の長薙刀は、誰が長薙刀ぞ。
(むこうのごまがらは、えのごまがらか、まごまがらか、)
向こうの胡麻がらは、荏のごまがらか、真ごまがらか、
(あれこそほんのまごまから。)
あれこそほんの真胡麻殻。
(がらぴい、がらぴいかざぐるま、)
がらぴい、がらぴい風車、
(おきゃがれこぼし、おきゃがれこぼし、ゆんべもこぼしてまたこぼした。)
おきゃがれこぼし、おきゃがれ小法師、ゆんべもこぼして又こぼした。
(たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、)
たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、
(ちりから、ちりから、つったっぽ、たっぽたっぽいっちょうだこ、)
ちりから、ちりから、つったっぽ、たっぽたっぽ一丁だこ、
(おちたらにてくお、にてもやいてもくわれぬものは、)
落ちたら煮て食お、煮ても焼いても食われぬものは、
(ごとく、てっきゅう、かなくまどうしに、)
五徳、鉄球、かな熊童子に、
(いしくま、いしもち、とらくま、とらきす、)
石熊、石持、虎熊、虎きす、
(なかにも、とうじのらしょうもんには、いばらぎどうじがうでぐりごごうつかんでおむしゃる、)
中にも、東寺の羅生門には、茨木童子がうで栗五合つかんでおむしゃる、
(かのらいこうのひざもとさらず。)
かの頼光のひざもと去らず。
(ふな、きんかん、しいたけ、さだめてごだんな、)
鮒、きんかん、椎茸、定めて後段な、
(そばきり、そうめん、うどんか、ぐどんなこしんぼち。)
そば切り、そうめん、うどんか、愚鈍な小新発地。
(こだなの、こしたの、こおけに、こみそが、こあるぞ、)
小棚の、小下の、小桶に、こ味噌が、こ有るぞ、
(こしゃくし、こもって、こすくって、こよこせ、)
小杓子、こ持って、こすくって、こよこせ、
(おっとがてんだ、こころえたんぼのかわさき、かながわ、ほどがや、とつかは、)
おっと合点だ、心得たんぼの川崎、神奈川、程ヶ谷、戸塚は、
(はしっていけば、やいとをすりむく、さんりばかりか、)
走って行けば、やいとを摺りむく、三里ばかりか、
(ふじさわ、ひらつか、おおいそがしや、)
藤沢、平塚、大磯がしや、
(こいそのしゅくをななつおきして、そうてんそうそう、)
小磯の宿を七つ起きして、早天早々、
(そうしゅうおだわらとうちん~う、かくれござらぬきせんぐんしゅうのはなのおえどのはなういろう、)
相州小田原とうちん香、隠れござらぬ貴賤群衆の花のお江戸の花ういろう、
(あれあのはなをみておこころをおやわらぎやという。)
あれあの花を見てお心をおやわらぎやという。
(うぶご、はうこにいたるまで、このういろうのごひょうばん、)
産子、這子に至るまで、この外郎の御評判、
(ごぞんじないとはもうされまいまいつぶり、)
ご存知ないとは申されまいまいつぶり、
(つのだせ、ぼうだせ、ぼうぼうまゆに、)
角出せ、棒出せ、ぼうぼうまゆに、
(うす、きね、すりばち、ばちばちぐゎらぐゎらぐゎらと、)
臼、杵、すりばち、ばちばちぐゎらぐゎらぐゎらと、
(はめをはずしてこんにちおいでのいずれもさまに、)
羽目を弛して今日お出でのいずれも様に、
(あげねばならぬ、うらねばならぬと、)
上げねばならぬ、売らねばならぬと、
(いきせいひっぱり、とうほうせかいのくすりのもとじめ、)
息せい引っぱり、東方世界の薬の元〆、
(やくしにょらいもしょうらんあれと、ほほうやまって、)
薬師如来も照覧あれと、ホホ敬って、
(ういろうは、いらっしゃりませぬか。)
ういろうは、いらっしゃりませぬか。